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12話 修羅

 そろそろ次の街を目指すべきか……

 森の中で新しく手に入ったスキル『恐怖の象徴』の試運転として猿型のモンスター達を相手に戦闘をしている。

 戦闘しながらも今後どうするかを悩む余裕があるのはレベルも上がりここの敵では相手にならなくなったからだ。


 毛の色が白色のマーシャルマンキーは細長い手足を生かして左左右とコンビネーションでパンチを繰り出し、こちらがそれを全て避けてもハイキックからの尻尾を地面に立ててバランスをとって逆立ち気味になりながら、足と手を同時に出してくる。

 中々にトリッキーなモンスターだった。


 毛の色が茶色のマーシャルマンキーは白色よりも鋭く強力な攻撃を繰り出してくる。

 違うのはトリッキーだった白色に比べてこちらは王道のようだ。

 どっしりと構え、地面を踏みしめて正拳突き、上段蹴り、さらに尻尾での突きも一撃が重そうだ。


 まぁ、ここらへんは個体差があるようなので一概に色で戦闘方法が変わるというわけではないかもしれないが、どちらにせよ俺には届かない。


 前回来た時は白色しかいなかったが今日は三色もいる。

 白、茶、そして黒色。

 黒色のマーシャルマンキーは茶色よりも強く、最初は威張り倒していたが、今では顔は恐怖で歪みその瞳からは諦めが見て取れる。

 道具のように白色と茶色を使い捨てたこいつを許す気にはなれないが甚振る趣味はない。

 その命を散らせ、粒子となって消えていくのを見届ける。


 恐怖というのは精神状態異常の一種で、リオンに与えた毒などは身体状態異常に分類される。


 恐怖の象徴は思った以上に有用で、恐怖を付与している間にダメージを与えれば、与えた回数だけ恐怖状態が深くなっていくようで最後は恐怖に怯え、相手はほとんど動くことができなくなる。

 何よりもダガーナイフにも付与できるのが強い。

 ダメージを与えなければ恐怖を与えれないので最も攻撃力の高いダガーナイフに付与できるのはありがたい。


 こうなっては欲が出てくるというもの。

 毒付与とかも出来れば強いんだけどなと考えてしまう。

 強力な武器が欲しければ次の街に行くしかないな。

 決めた、次の街に行こう。

 暗器使いの職業レベルも12まで上がっている。


 森を抜ければ整備された道が見えてくる。

 それに沿って進んでいけば次の街に行くことができるのだが、気になるのはほとんどプレイヤーを見ないことだ。


 まさか、ここまで過疎化してるなんてことあるのか?

 まとめサイトや動画配信、ブログなどは賑わいを見せているように思えたが……


 ちなみにそんな俺もブログを始めました。

 動画配信は流石にレベルが高いがブログくらいならと始めてみました。

 そして想定外の反響がありました。

 最初はコメント通知オンにしてコメントが来れば携帯が鳴るように設定していたのだが鳴り止まなくて寝れなかった。


 反響の原因は復讐システムのせいだ。

 他に復讐の情報を載せてる人はいなかった。

 思った通りβテスト時にはなかったシステムのようで多くの人が検証している。

 が、上手くいっていない。


 カルマ値悪性を溜めるには悪意を持って行動しなければいけない。

 検証のためにわざと悪いことを他のプレイヤーにしても意味がない。


 では本当に迷惑を被っている人が復讐すればいいんではないかと考えられるが、それは非常に難しい。

 まずカルマ値は目に見えない。

 そのため検証は非常に難航している。


 分かりやすいのはPKされることだが、そもそもが勝てなかった相手に簡単に勝てるようになることはない。

 しかも、この情報を流してからPK達は相手を選ぶようになったし、イヴィルターズのようなPK集団は複数人で動いている。

 そう簡単に復讐はできない。

 このシステムについてはもう少し時間がかかるだろう。


 道を歩いているとやっとプレイヤーらしき人達が見えてきた。

 ふむふむ、ゴツい鎧を纏った大楯のタンク役が攻撃を受け、和装に刀を持った男がバランサー、後衛に魔法使いのバランスが取れたチーム構成。

 あの3人が動画投稿してるのを見た覚えがあるな。

 イキリPKを潰しますみたいなタイトルでそこそこ視聴者数があったはず。

 確か『ステイラ』とかいうパーティだ。


 3人とも三次職で実力は上の方だろう。

 これまでもPKを潰す動画が多く投稿されている。

 侍の『虎徹』、重騎士の『ベルドール』、爆炎魔術師『サフラン』。


 相対するは見るからに柄の悪い奴らが10人ほど。

 悪名名高いイヴィルターズと対をなすPK集団『修羅』だとすぐに分かった。

 掲示板でも晒されているのでそう難しくない。

 それに副団長がその中にいては一瞬で分かる。


 フルフェイスで顔は見えないが目立つ特徴的な重厚感のある赤を基調とした鎧には炎の模様があしらわれていた。

 修羅の副団長『オウカ』、職業やスキルについては不明だが、その実力は広く知られている。


 オウカを除く修羅の9人がステイラに襲いかかる。

 オウカだけは見定めるように戦闘を傍観していたが、決着はすぐについた。


 9人が一斉にベルドールへ攻撃を繰り出した。

 炎や雷、風の魔法での攻撃、大剣や片手剣、ナイフによる攻撃を受けてもベルドールは無傷。

 全ての攻撃が透明な鉛色の壁によって阻まれる。


『ヘビィガード』は戦士系統三次職の重騎士が覚えるスキル。

 ベルドールのVITを参照にした壁の硬さはかなりのものだ。

 しかし、効かないと分かっていてもひたすらに攻撃を続ける9人。


 後衛のサフランを狙うと思ったが全員がベルドールを狙うのは予想外だった。

 大型魔法を警戒して後衛を狙うのが一般的なのだが。

 後衛を狙わずに痛い思いをしたことがあるからよく分かる。


 思っていた通り、サフランの大型魔法発動の詠唱が終わりを告げた時、上空から巨大な炎の球が落ちて爆発した。

 味方のベルドールごと巻き込んだはずだがベルドールは無傷だった。


 修羅側は一人は耐えて、二人が回避していた。

 それ以外は全員が焼け焦げ、光の粒子に変わっていく。

 なんとか残った三人も虎徹の刀で簡単に切り捨てられてしまった。


 傍観していた修羅の副団長オウカは仲間の全滅を見ても動こうとしない。

 フルフェイスの兜のため表情は見えないが焦る様子は皆無だ。

 その証拠に三人に向かって指でかかってこいと挑発をしている。

 そして、挑発した後、再び腕組みをしてその場で待っている。



§



「どうする、動く様子は見られないが」

 ベルドールが2人に問いかける。

「二人ともあいつの戦闘は見たことあるね」

「大丈夫よ、PKになんて負けてられないわ」

「俺もばっちり予習済みだぜ」

「腕には十分気を付けてな、射程がどの程度かは分からないから油断はしないように」


 有名人の動画はすぐに上げられる。

 そこにはスキルを使うオウカの戦闘シーンも載っていて3人は研究してきていた。

 そうやってこれまでもPKを潰してきた。

 修羅の副団長、オウカは純粋な戦闘能力だけなら王国PKの中でも1、2を争うと言われている。

 つまりオウカを倒せればイヴィルターズも修羅も倒すことが可能ということになる。


「じゃあいくぞ!!」

 リーダーの虎徹はメンバーを鼓舞する。

 ベルドールを先頭にその後ろを2人がついていく。


鎧巨人(よろいきょじん)豪腕(ごうわん):忌火の守人(いみびのもりびと)ライトアーム」

 腕組みをしたままオウカがそう呟くと炎を纏った巨大な腕が一本空中に現れ、ベルドール目掛けて拳を振り下ろす。

 オウカの身につけている鎧の籠手をそのまま大きくしたような見た目だ。


 9人からの総攻撃でもびくともしなかったディバインシールドが一撃でひび割れる。

 鎧巨人の豪腕は腕を引いて勢いつけてもう一度拳を振り下ろした。

 ひび割れたディバインシールドにその拳を受けることは出来ず粉々に散り、ベルドールを殴り潰した。

「後は頼んだ」

 ベルドールは光の粒子となっていくが、仲間を守りきった。そして想いを託す。

 

「エクスプロージョン」

 9人を壊滅に追いやったサフランの大型魔法。

 鎧巨人の豪腕はベルドールを殴り潰してオウカと距離ができていた。


 巨大な炎の玉が守りのないオウカ目掛けて落とされる……はずだったが、炎の球は落ちる前に炎を纏った巨大な腕で握り潰され空中で大爆発を起こした。

 ベルドールを潰したのがライトアームなら炎の玉を握りつぶしたのはレフトアーム。

 サフランはそのままライトアームに握りつぶされた。


 残るは一人虎徹のみ、いつの間にか姿を消したと思いきや、オウカの背後に移動し居合の構えを見せる。

 侍のスキルである『居合術』は居合の一撃を速くし、かつ斬れ味を上げる。

 いくらオウカの重厚な鎧でも大ダメージは必至のはず。


 高速の居合術で抜刀された刀は甲高い音と共に真っ二つに折れる。

 オウカは振り向くこともなく腕組みをしたまま小さく呟いていた。

「鎧巨人の偉胴(いどう):忌火の守人」

 炎を纏った巨大な胴体部分の鎧が突如オウカを包むように現れ、それが刀とぶつかり合って、結果は見ての通りだ。

 虎徹はなす術もなく二本の巨大な腕で潰された。


 クロツキは戦闘の隙を縫って気配を消してオウカの元へと近寄っていた。

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もふもふ従魔が厨二病に目覚めた件
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