11話 リオンとルティ
見事に自身の敵討ちを果たした俺はセバスさんの元へ向かい報告とお礼を伝えた。
それにしてもギリギリの戦いだった。
ただ、それ以上の見返りがあったのも事実。
レベルは5も一気に上がり、称号やスキルまでも手に入った。
他にも色々ありすぎて混乱しそうだ。
落ち着いて整理していかないとな。
まず復讐達成について、こんなワードはまとめサイトに載っていなかったがセバスさんが教えてくれた。
自分が相手に与えた一定以上のカルマ値悪性を持っている場合に復讐システムが発動する。
そのカルマ値悪性の7割以上を仕返しすれば復讐達成となるらしい。
キルされてキルを仕返せばもちろん復讐達成になるし、キルされてキルをしなくても相手に対して攻撃や嫌がらせを積み重ねても復讐達成になるらしい。
そして復讐達成の報酬として経験値、エリル、魔法やスキルを獲得できる。
魔法とスキルに関してはめちゃくちゃレアらしく俺は2個も手に入れたが本当に運が良かったようだ。
復讐された側の経験値とエリルは戻らないが、スキルに関してはプレイしていれば元どおりになるみたい。
この時の報酬は自分と相手のカルマ値悪性によって変動するらしい。
迷惑行為抑止のためのシステムかは分からないがやられてもやり返せるのはいいと思う。
広まってないので迷惑行為をするプレイヤーが減ってないんだろうけど。
自分が広めるかどうかは後から考えよう。
奪った経験値でレベルが5上がり、7000エリルちょっとを手に入れた。
スキルに関しては俺の職業でも扱えるように最適化されたらしい。
なんて神対応なんだろうか。
結局、奪っても職業によって使えなかったら全く意味がない。
-スキル獲得-
『盗賊の心得』が最適化されて『復讐の代価』を獲得しました。
復讐達成時、自分と相手のカルマ値悪性を参照して、アイテムを相手から奪取できます。
-スキル獲得-
『ナイトメア』が最適化されて『恐怖の象徴』を獲得しました。
一定時間、自身の攻撃に恐怖を付与します。
『復讐の代価』を発動するには復讐しなければいけない。つまりよっぽどな目に遭わないといけないが、そんなのはごめんだ。
アイテムを奪えるのは魅力的だが、あまり使う機会が訪れて欲しくないものだ。
一方で『恐怖の象徴』は使い勝手がいい。
恐怖状態になった場合、動きに制限がかかったりする。
『ナイトメア』をルティが使ってるようには思えなかったが黒の魔法なのでルティから奪ったんだよな、きっと。
魔法を奪っても俺に最適化してくれてスキルに変わったのはありがたい。
俺はMPが雀の涙程度しかないので、魔法を獲得しても使えない。
そしてそして、称号を三つも獲得した。
基本的に称号はステータスにプラス補正をかけてくれる。
-復讐者-
復讐を果たした者に与えられる。
復讐対象との戦闘時、カルマ値悪性に応じてステータス上昇します。
-大物喰い-
自分よりも倍以上強い相手を倒した者に与えられる。
自分よりもレベルの高い相手との戦闘時、レベル差に応じてステータス上昇します。
-孤高-
一人で自分よりも強い複数の敵を倒した者に与えられる。
ソロ戦闘時、相手の数に応じてステータス上昇します。
称号はどれか一つしか設定できないので、復讐するときは復讐者、ボスなどのレベルの高い敵と戦闘するときは大物喰い、相手の数が多ければ孤高といった具合に使い分けることになる。
とりあえずは大物喰いを設定しておく。
名前:クロツキ
種族:人間
称号:大物喰い
職業:暗器使い(Lv5)
Lv:15
HP:250
MP:25
STR:16
VIT:16
INT:16
DEX:31
AGI:41
SP:5
武器:ダガーナイフ
防具:隠者のローブ、隠者のブーツ、隠者の手袋
装飾:なし
スキル
影の小窓、敏捷向上、惑わしの歩法、怠の眼、夜目、復讐の代価、恐怖の象徴
所持称号
復讐者、大物喰い、孤高
経験職業
暗器使い(仮)(Lv10max)
§
「はぁぁぁぁぁだぁぁぁぁぁぁぁ」
「理央ちゃん、うるさいよー」
「こらーーー、ルティ、本名で呼んじゃダメっていったでしょ」
「だってゲーム内じゃないよ」
「あっ、確かにそれもそうだった」
リオンこと本庄理央とルティこと本庄綾奈は同じ部屋で作戦会議をしていた。
「どうしたの?」
机の上で書き物をしている綾奈の前でパソコンを凝視している理央は穏やかではなかった。
それはパソコンでルキファナス・オンラインの自分の状況を確認していたからだ。
デスペナを受けたのでログインしてプレイすることはできないがルキファナス・オンラインのサイトにログインして自分のステータスなどは確認ができる。
「姉ちゃん見てよこれ」
パソコンの画面を綾奈の前に突き出す。
-デスペナルティ-
獲得経験値が減少します。
3時間の強制ログアウトをします。
強制ログアウト後、3時間獲得経験値量とステータスが減少します。
-復讐されました-
獲得経験値が奪われました。
エリルが奪われました。
スキル『盗賊の心得』が奪われました。
「復讐? キル仕返されたってことかな。スキル奪われるのはきついね」
「なんでそんな冷静なのさ、姉ちゃんも確認してよ、私の盗賊の心得が……コソ泥の心得に……」
「私もナイトメアも奪われて、違うスキルになってるね」
「えーーー、ナイトメアめちゃくちゃ便利だったのに」
「そうだね。まとめサイトを確認して、ログインして新しいスキルの検証しないと」
「くそーーー、クロツキに復讐してやる」
理央はメラメラと闘志を滾らせる。
「それは無理じゃないかな。カルマ値が関係してると思うし、PKなんてもう辞めようね。スキルが弱くなるのはリスクが高すぎるよ」
「えーー、じゃあクロツキに復讐できないってこと?」
「絶対にダメだよ!! クロツキさん強かったし、それに……」
姉の圧力にメラメラと燃えていた闘志は沈下し、理央はシュンとする。
「ナイトメアが使えたら勝ててたのに」
「仕方ないよ。隠者系統に恐怖は刺さりづらいし」
「暗器使いに負けるなんて……」
「βテストの時とは仕様も変わってるみたいだし、色々試すことが多いよ」
「楽しそうだね」
「そりゃあ楽しいよ。研究のしがいがあるもん」
「よく分かんないなぁ。気持ちよく敵を倒してた方が楽しいのに」
「それなら、もっと戦闘に適した職業にすればいいのに」
「えー、だってロマンじゃん」
「はぁ、意味のわからない病気が発症してるよ」
「クロツキの服装カッコよかったな」
「えっ!?」
「はっ、違うからふ・く・そ・うがカッコよかったなっていったの。姉ちゃんとは違うから」
「なんのことよ」
綾奈は顔を真っ赤にして否定する。
「初めて会った時に一目惚れしたのか知らないけど、口数めちゃくちゃ減ってたじゃん」
「違うから!! そんなわけないじゃん」
「姉ちゃんは分かりやすすぎなんだよ」
「何言ってんのよ理央ちゃんだって、クロツキさんに顔褒められて照れてたじゃん」
「なんだとぉぉぉ」
こうしてクロツキに復讐された二人の夜は過ぎていく。




