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109話 黒幕

「餓者蓮華だよ」

 骨が蓮状に形を作り、骨の先は鋭く尖っていているかの腹部を貫いた。

 恐ろしい花があちらこちらに咲いていた。

「ガハっ……くそっ……が」

 いるかは腹部に刺さった骨を抜こうとするが返しがついていて抜けない。


「逃がさない、紅蓮髑髏」

 骨から炎が吹き出して、燃やし尽くす。

 いくら耐性があるといっても内部から高火力で焼かれてはひとたまりもない。

 いるかは光の粒子に変わる。


 オウカにとって珍しい鎧を使用しない攻撃方法だった。

 普段はコントロールが難しく使用はしないが、怨念渦巻く王都のおかげで比較的簡単に扱うことができた。

 オウカは満足そうに光の粒子を見つめた後、鎧を顕現させて助けに向かう。

 向かう先はルティのところだ。

 ジャックもリオンも戦闘を終えてルティの助けに入ろうとしている。


 黒い雷同士がぶつかるが、ルティが一方的に吹き飛ばされる。

 同じ属性でも火力が一つも二つも違う。

 イーブルは余裕そうに雷を放つ。

 戦闘に全く集中しておらず、なにかの詠唱をしている。

 片手間でルティはあしらわれていた。

 そこにリオン、オウカ、ジャックが駆けつけてくれる。

 頼りになるギルドメンバーたちだがイーブルから底知れぬ力を感じて、全身が強張る。


 リオンはイーブルにの攻撃に対してスキルを発動させる。

 雷耐性を盗み、自分含め4人に付与する。

 イーブルの目がリオンを捉えて手が向けられると、巨大な黒雷は耐性など関係なく身体を焼く。

 微かに残ったHPでは動くこともできずには膝から崩れ落ちる。


 オウカは炎鎧巨人で拳を振り下ろそうとするが、天から落ちる黒雷に打たれる。

 鉄壁を誇るはずのオウカの鎧がわずか一撃でボロボロに砕けていく。

 しかも、顕現した鎧にダメージを与えるだけではなく、雷は伝って中にいたオウカに多大なダメージを与えた。


 糸を展開しながら高速で移動して、的を絞らせないようにするジャック。

 一筋の雷の先が無数に枝分かれしてその内の一本がジャックに触れる。

 その瞬間全ての雷がジャックに向かっていき、ジャックの身体を焼いた。

 さしものジャックも網のように広がる雷の全てを避けることは叶わなかった。


 全員が虫の息でも立ち上がろうとする。

「無駄なのが分からないのか。もう準備も終わった、王都の落ちる瞬間を見ているがいい」

 王都を黒い雲が覆う。

 圧倒的な魔力で作られた雲はとても一プレイヤーが作り出せる代物ではなかった。


「クソが、どうしてテメェがこんな力を持ってんだ」

 リオンはイーブルを睨みつける。

 誰もが予想はついている。

 明らかにイーブルを覆う禍々しい黒い靄が原因だ。

 クロツキのようなスキルによる強化の可能性もあるがそれにしても強すぎる。

 監獄にいたイーブルが持っていていい力の許容を遥かに超えている。


「お前たちは俺の正体がわかんねぇようだから教えてやるよ」

 王都にいる人間に向けて声を発する。

「東の青竜、西の白虎、南の朱雀、北の玄武と4つの脅威が王国に迫っていた。お前たちは見事にそれらの脅威を跳ね除けた。素晴らしいことだ」

 その喋り口調は完全にイーブルのものではない第三者のものだった。

「ただし、愚かなのは脅威が4つしかないと思い込んでいるところだな。刮目せよ我が第五の脅威、中央の麒麟なり」

 いつまで経ってもレイド戦が続いている答えがイーブルの口から語られた。

 黒雲は王都の空を覆っている。

 いや、果てしなくどこまでも続く黒雲は王国を覆っているといっても過言ではない。

 黒雲から雷が降り注ぐ。


 青竜の降らせた豪雨のように雷が降り注ぐ。

 白虎の狩りのように、雷が意志をもって人や建物を襲う。

 建物に当たった雷は朱雀が操っていたような猛々しい黒炎を生み出す。

 人に当たれば玄武の弱化の重力のような力でその場にひれ伏せさせる。


 何百人単位でようやく討伐できるレイドボスを相手に王都にいる面子ではあまりにも戦力が少なすぎた。

 勝てるわけがない。

 誰もが絶望する。



§



 王都の戦闘が映し出される画面は魔法によって作られたもの。

 王宮では王と官僚たちがその様子を見ていて、第五の脅威という事実も知っていた。

「王よ脱出の準備をしてください」

 宰相が王都から逃げるように王に促すも首を横に振られる。

「ここで逃げては国民に示しがつかん」

「示しどうこうではないのですよ。このままでは国が落ちます。しかし、あなたが生きていれば王国再建の希望が残るんです」

「それならば王族の血を引くものがいるじゃろ。現国王として国が落ちるのならば共に沈まねば……」

 現国王の人気は歴代の王と比べると相当に高い。

 官僚、騎士も今の国王だから命をかけれるというものも少なくない。

 そんな中で攻撃の対象になるのは騎士の裏切りだ。


 隊長クラスの裏切りはそこらの雑兵が裏切ったのとはわけが違う。

 国の秘密や弱点を知る権限を持っているし、裏で手を回すにしてもかなり大掛かりに動ける。

 それが今回の一件に繋がる監獄脱獄なのだ。

 宰相も国王に脱出を提案したが難しいだろうと思っている。

 逃走経路が敵に知られている。


「ワシが出るとしよう」

 一番隊隊長が動くということで王宮にざわめきが起きる。

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