表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/117

101話 玄武

「ヒジリ、状態異常回復を頼む」

「まずは症状を見ないとダメなんだけど……普通の毒みたいだね、これなら簡単だよ」

 ヒジリは毒を回復して毒耐性を付与する『無毒の証明』を発動する。


「おぉ、トーヤ様とヒジリ様が前線に赴かれたぞ」

「何を喜んでいる。手を煩わせているんだぞ!!」

「くっ、それもそうか……」

 聖騎士たちは苦悶の表情を漏らす。

 自らたちが守ると誓った存在に守られてしまっていては何の意味があるのか。


「トーヤさんすみません。重力のせいもあってかなり押されています」

「気にするな、ここにきて確信できたよ。一気に押し返すぞ」

「はい!!」


 2種類の重力の正体と重力を受けない蛇たち、さらに自ら重力を受けてトーヤは確信する。

 この討伐隊を苦しめている重力は重力ではない。

 その証拠に無機物はこの範囲を簡単に素通りできる。

 ただし玄武に一定以上近づいたところで本物の重力によって軌道を落とす。

 蛇が重力を受けないのも納得だ。

 これは重力ではなく弱化のスキルだ。

 STRが弱ければ弱いほど体が重く感じるデバフスキル。

 デバフスキルなら玄武の味方である蛇にも効果がないのも納得できる。


 スキルランクが高すぎて弱化状態にかかったことすら気づかないようだな。

「ヒジリ、弱化状態にされている。旗を全力で2本立てろ」

「弱化状態? 二本も旗も立てろと……兄ちゃんは妹使いが荒いよ」

 文句を言いながらも言われた通りに発動の準備に取り掛かる。

 これまでもトーヤの言ったことに間違いはないし信頼もしている。

 優しすぎるところはたまに傷だが、こういう時は頼りになる。

 全力で二本も旗を立てたらこの戦闘ではもう使い物にならなくなるが、躊躇などする必要がない。

 それで勝利できるのだから。


 ヒジリはまず、聖なる御旗のもとにライズ・ザ・ディバイン・フラッグを発動させて魔力を費やしてより高く掲げる。

 魔力でできた聖なる御旗が地面に刺さり旗をなびかせる。

 これによりより効果範囲を広げることができる。

 さらに重ねて聖なる御旗のもとにライズ・ザ・ディバイン・フラッグを発動、二本目の旗が現れ、高く掲げる。

 一本目は見るだけで勇気を与えられ勇猛に戦うことができるように精神状態異常回復と耐性の付与。

 二本目で心が肉体に影響を与えて、身体状態異常回復と耐性を付与した。

 さらにステータスも重ねてアップしている。


 もう魔力もスキルも尽きて何もできない。

 後はもう見守ることしかできない。

 横で兄であるトーヤが戦闘の準備としてあるスキルを発動させている。

 勝利のための試練ビクトリー・トライアルの力がトーヤを襲う。

 身体中に痣や切り傷が急に現れて、吐血をして意識も朦朧としていた。


 討伐部隊は二本の旗の力のおかげで蛇たちを一気に押し返していた。

 弱化状態は回復して蛇の毒も効かない。

 押されるはずもなく玄武へと向かっていく。

 聖騎士たちよりも前に進むプレイヤーたちが軒並み地面に伏せた。


「これが本物の重力か……」

 意を決して前へと進む。

 とてつもない圧力が体を遅い、全身が軋む。

 それでも一歩ずつ前へ進んでいくと、急に体が軽くなってバランスを崩す。

 目の前には玄武がいた。

 ドーナツ状になった重力場を抜けたのだ。


 後ろから重力場を抜けた討伐隊が歓喜の声を漏らす。

 一つの達成感を得るが、やっとスタートラインに立てたにすぎない。

 玄武は討伐隊を見下ろして重低音の鳴き声を漏らす。

 それだけで大気が大きく震えた。


 下からの魔力反応を感知してその場から回避する。

 凄い勢いで尖った土が何本も隆起して討伐隊を襲っていた。

 多少の油断はあったかもしれないが、それ以上に重力場を抜けるのに力を使いすぎていたのが原因だった。

 聖騎士の仲間も腹部を貫かれ粒子に変わる。

「気合を入れろ!! トーヤさんの邪魔をさせるな」

 

 何十人もいた討伐隊が壊滅状態になっていた。

 生き残っていても瀕死でボロボロ、どれだけ攻撃を繰り出そうと玄武の防御を突破できない。

 重力場を何人かが抜け出た段階で玄武は四肢を甲羅にしまった。

 移動はしないが突破できずに一方的に攻撃される。

 主な攻撃は下からの土の槍と上からの落石。

 集中していれば避けれないことはないが、先の見えない攻撃を避け続けるのは至難である。

 さらに聖なる御旗のもとにライズ・ザ・ディバイン・フラッグの効力も切れている。


 また一人、土の槍で貫かれて、落石で押し潰された。

 玄武が四肢を甲羅から出して移動を始める。

 討伐部隊が脅威にならなくなったのだろう。

 討伐部隊に諦めの空気が漂う。

 それでも聖騎士は一人玄武の前に立って剣を構える。


 ゆっくりと歩く玄武は眼下に見下ろす人間を足で踏み潰した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング



同シリーズを毎日投稿しているので、ぜひよろしくお願いします!!

もふもふ従魔が厨二病に目覚めた件
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ