第3話 初めての教室って緊張感あるよな。恋愛方面で
「お兄ちゃん、お待たせ!」
「ああ、行こうか」
玄関に制服姿の兄妹、俺と深紗だ。
新学期初登校は一緒に行くという話だったので支度が出来るまで待っていたという訳だ。
「お兄ちゃん学校楽しみ?」
「いや、普通」
「むーなにそれー」
他愛ない会話をしながら駅に向かって歩く。
深紗は陽乃栄小学校に通っている。
八重洲校とは一駅分離れていて八重洲の方がうちからは遠い。
「今年こそ運命の人見つけたいよね!」
「え?ああ、そうだな...」
心臓が跳ねる。頭の片隅にはいつもあの白い髪が映っている。運命の人と聞くとひかわひかりについて考えてしまう。ダメだ、勘づかれたいようにしないと。
「むむ?お兄ちゃんの反応がおかしいぞ?いつもなら深紗は渡さん!とか言うのに。もしかして...お兄ちゃん」
ギクッ
「な、なんだよ」
「私のこと嫌いになっちゃった?」
....はあ?
「何言ってんだ、俺が深紗を嫌いになるのはありえないよ」
「いやあそこまで強く否定しなくてもー冗談だってー。で?どんな人なの?運命の人」
「ブフッ!ばっ!違うって!」
「何が違うの?ぐたいてきな説明をよーきゅーします」
やばい地雷踏んだ。そっそうだ!
「おい深紗、次の駅だろ?降りる用意しろよ」
「じゃあ聞いてから降りるね。用意は常に出来ております」
「話すと長くなるから家帰ってからな」
今のところ逃げ道がそれしかない。
「ぶー、お兄ちゃんの人生に光が差すと思ったのにぃ」
この子はほんとに...なんていい子なんだ。お兄さん涙が出そうだよ。
「家帰ったら話すから、安心しろって」
「言質取りました」
「え?」
懐から出てきたのはスマホだ。録音するためにスマホを隠していた模様だ、クソッタレ。あの言葉もわざとなのか?お兄さん泣いちゃうよ?いやしてやったりみたいな表情しないで。
「あ、駅着いちゃった。じゃあまた迎えに来てね!」
「当たり前だ。いってらっしゃい」
「いってきまーす!」
ホームに勢いよく走っていった深紗を眺める。そのまま階段に向かって姿は見えなくなった。
急に静かになる車内。実は騒いでいたおかげで周りの人に見られていたのだが深影がそれに気づくことは無く、逆に周りは深影の豹変ぶりに驚いていた。まず無表情、そして光を失くした目、先程まで妹らしき幼女とワイワイやっていたのが嘘のような人の変わり様。恐怖すら感じるレベル。当の本人は学校面倒臭いなどと呑気なことを考える訳でもなく、
ひかわひかり同じクラスだといいなー。
恋心に正直な深影だった。
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八重洲校はマンモス校である。約1000人の生徒、A~Fまでの棟、初めて来た人の中で必ず1人は迷うと言われているほど広い敷地。
まあ何回か来たことあるから迷うことは無いんだけど4月の終わり辺りまでは行方不明者出そうだな。
高一は全12クラスあり、1クラス30人だ。
ちなみに俺は10組。1~9までの教室は三階建てのA棟にあり、10~12の教室はB棟の1階にある、楽だ。教室に入ると半分程の生徒がいた。これからこいつらがクラスメイトだ。絡むのも面倒臭いしボッチでいいや。
座席表を確認する。えーっと俺の席は....右側から3列目、前から4列目か。よきポジションじゃないか、目立たない...ん?
席順
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****** 月 俺
****** ハート 日川ひかり
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......運命ってことでよろしいですか?
これひかわひかりだよね?にちかわひかりとかだったら怒るよ?ブチギレ案件だよ?詐欺罪で訴えるよ?とりあえず着席して突っ伏しとこう。心臓バクバクなんですけど。