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コメディーシリアスコメディー

家に帰ると深紗はすぐ自分の部屋に引っ込んでしまった。多分お昼ご飯は食べると思うけどこの調子だと食欲はあまり無さそうだから軽めの作るか。


炊飯器で米を1.5合炊く。その間とある人と連絡をとって時間を潰した。


「...ええ、ですから少しばかり休みをください。私は合武()よりも妹や学業優先と入った時より兼ねてから伝えているはずです...はい、1ヶ月後に伺います。では」


小一時間ほど話して通話を切る。あの人と話すと何故か緊張で顔が強ばってしまう。

1ヶ月後は忙しくなりそうだな...


ほどなくして炊飯器から炊けたことが知らされる音楽が流れる。ソファーから立ち上がりキッチンへ向かうと炊けた米を少し混ぜてから握る。ちなみに深紗は具無しの塩むすびごま油塗りが大好物だ。


ごま油はいい。あの味わいと汎用性の高さ、弁当などにおにぎりを入れる際ごま油を塗っておくと防腐になるのだ、しかもおいしい。

オリーブオイルもいいがうちは代々ごま油派だ。


「深紗ー!お昼できたぞー!ごま(油)むすびだぞー!おいしかったぞー!」


愛しい妹に呼びかけつつ試食の感想も伝える。すると階段をバタバタと降りてくる音が聞こえた。よかった、ちゃんと食べに来てくれた。これでこなかったらどうしようかと。


「ごま油ー!」


「おむすびがメインだから落ち着け」


いつもの調子もすっかり戻ったらしい。立ち直りが早いのも深紗の長所だ。


手を洗い食卓に向かい合って座る。

そして互いに手を合わせて


「いただきます」「いただきまーあむ」


...後者は待ちきれなくて齧り付いたらしい。

可愛いから気にしないが、可愛いから!


「んぐっ、いやーやっぱりごま油は至高ですなー!」


「どこでそんな言葉覚えたんだ」


「前お兄ちゃんがネギは至高ですなーって言ってたから真似したの!意味は知りません!」


...恥ずかし過ぎないか?


「そ、そうか。なあ深紗?その事は心に封印してくれないか?恥ずかしいんだけど」


「可愛かったから多分無理!」


...実の妹に可愛いと言われる高校1年生の兄、人としての尊厳が消え去りそうだ。


「頼むから他言はしないでくれよ?じゃないとお兄ちゃん死んじゃうよ?」


「他言って何?」


ああ...妹が小三なのが憎い!でも可愛いから許せちゃうな!


「他の人に言わないでってこと、おけー?」


「おーけーけー!」


はあ、穴があったら入りたいとはこの事だな。しばらく自分の部屋に籠ろう。


「ねえお兄ちゃん」


「ん?どうした?」


皿の上にあるごまあぶ、ゲフンゲフンおむすびをたいらげた深紗は突然真剣な表情で俺を呼んだ。


「私、明るくない方がいいのかな?」


「.....どういうことだ?」


「思ったの、私が性格を明るくしてみんなと話しても結局お兄ちゃんに迷惑かけちゃう。私はお兄ちゃんが笑顔でいてくれたらそれでいいから、だから...うぅ....」


感情を吐露した深紗は泣き出してしまった。


俺は深紗には笑顔でいて欲しい、でもそれは深紗も同じで、深紗はそのために自分の築いてきたものを壊そうとしている。

深紗はどんな時でも笑いかけてくれた。父さんの暴力にも深紗がいれば耐えれた。深紗が笑顔だったから、俺は少なからず人の心を取り戻せた。深紗が笑いかけてくれたから深紗を守る力も手に入れた。


俺は深紗に笑っていて欲しい。だがそれは傲慢だ、もし深紗が無理して笑顔を作っているというなら俺はそれを否定したりはしない。


「深紗、お兄ちゃんの意思じゃなくて自分の意思を第一に考えるんだ。お兄ちゃんは深紗がいなきゃ生きていけないダメ人間だけど、そんなところまで束縛したくない。深紗はどうしたいんだ?」


俺の言葉にちらりとこちらを上目遣いで見る妹、その目には自分の意思があった。


「私は...笑顔でいたい、笑っていたい、お兄ちゃんと笑い合いたい、クラスのみんなと仲良くおしゃべりしたい、私はっ...!」


決意とともに顔を上げて慟哭のように声を詰まらせながら叫ぶ深紗、そんな姿を見て俺は一緒になって泣いていた。思わず立ち上がって抱きしめに行くぐらいに感情を昂らせながら。


「深紗、ありがとう。妹でいてくれて」


この言葉を言うのは何回目だろうか?


「どういたしましてっ!」


顔を上げると妹はいつもの花が咲くような笑顔に戻っていた。そんな様子を見て耐えきれず俺は10分ほど頭を撫で続けていた。


**********


夢を見た。


光は強く輝いて、俺を照らしてくれる。それはだんだん想い人へと姿を変えていく。

しかしシルエットが浮かんできた頃、それは暗闇に成り代わる。それは今まで見てきた中で最も暗く、黒く、闇色で、恐怖を通り越し絶望、自ら死に急ぎたい感情にも駆られる。息は荒くなり、目眩もする。ただ意識を失うのは目の前の闇が許さない。

闇はまた何かに姿を変えていく、それは輝き、彼を照らす。そんな輝きの中で、鮮明に見えたもの。


日川ひかりの無残な遺体が....




「ああああああああぁぁぁ!」


そこで俺は目が覚めた。

部屋には朝の日差しが入りこんで空間を照らしている。普通の人はそう見えるらしい。俺には影が空中で伸びてるようにしか見えないが。


最悪の目覚めだ、恐らく人生で1番だろう。

背中は冷や汗でぐっしょり、動悸も激しい。


....頭冷やすか。


汗ばんだ体を流すため風呂場で冷水を浴びることにした。それにしても酷い夢だ、悪意しか感じられない。

夢のことは心の奥底に封印することにした。



昨日と同じように深紗と通学していると突然同じ制服のやつに声をかけられた。


「あの、新月深影くんですか?」


「いえ、人違いです」


学校のやつとは正直関わりたくない。てか深紗の前で話しかけないでくれるか?昔の俺を思い出されたらたまったもんしゃない。


「いや、同じクラスの隣の席の人を見間違えるわけないでしょ?」


あーそうくるかーまじかー、え?隣の席なのこいつ?ひかりがいたら充分なんだが。


「はあー、そうだよ俺が新月深影だ」


「言われなくても知ってたけど、まあいいや。単刀直入に言うよ?私と友達になって?」


「なんで?」


その場に沈黙が流れる。


「え?あれ?も、もっかい言うよ?友達になって?」


「なぜ?」


「え、えーっと」


「お姉ちゃん、とちるのが早いよ。あ、ごめんね自己紹介もなしに。僕は魁世悠斗、こっちは姉の悠希」


「さっきはいきなりごめんね」


いや、自己紹介云々の前にこいつら


「見てもらえれば分かると思うけど僕達、双子なんだ。」


どっちがどっちかわかんねえ

こういうこと言うのは初めてなんですが評価など付けてくれるととても嬉しいです。モチベーションアップにも繋がるのでお暇な方は是非

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