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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
<ロッソア>編 第6章 紅き旗
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悪夢の研究所<デーモンラボ> 第11話

お風呂から上がると。

・・・・外は雪国だった・・・


てナ訳で。

ルビ達は雪の中、研究所へと迫る。

盆地の中ほどに建つ研究所が、遠く霞んで観えていた。


朝からの雪が降り積もり、視界に飛び込んで来るのは一面の白い世界。

その中で目立つ建物群は、塀に囲まれ静けさに包まれている。


噂の巨大戦車も、配備されている筈の防衛部隊の影も見当たらない。


白い雪の中で、研究所は墓場の様に静まり返っていたのだ。




3人の双眼鏡が日の光を反射させていた。

今朝からの雪も治まり、銀世界に潜んで偵察を強行しているのだが。


「研究所にはこれと言った動きは見られないな?」


ぼそぼそとレンズを覗きながら呟いた。


「どうやら巨大戦車って奴も居ないみたいだしな」


情報に因れば、研究所に配備されたという巨大戦車<ギガンテス>がある筈だったが、

何処を探してもそれらしいモノは見当たらない。


「うん、居ないよね?どこかの建物の中にでも納められているのかしら?」


相槌を打って来たロゼが、寒さに耐えながら見張りを続けている。


「それは無いと思うぞ。建物の中に納められる代物じゃないって事だけは確かだぜ?」


割って入ったレオンが、情報を元に考えて俺達に忠告して来る。


「襲撃を加えた者に対して、遠方から砲撃する気なのかもしれない。

 なにせ巨大戦車は、接近戦には滅法弱い筈だからな」


そうなのかもしれないが、倍率をどれだけ上げても付近には存在していないと観れるが。


「まともな軍との遭遇戦に備えているのか、それともルビの言ったように居なくなったか?」


盆地の境界線、つまり山々の稜線迄捜索範囲を拡げたのだが。

雪に埋もれている筈もない巨大戦車の影すら掴めなかった。


「ねぇ二人共。

 これだけ探しても見当たらないんじゃ、その戦車はこの辺りには居ないんじゃないの?」


カチカチ奥歯を鳴らしながら、寒がりのロゼが訊いた。


「そうだよなぁ、敵状からも判断して、眉唾物だったかもしれないぜ。

 もう、捜索を辞めて本題に掛かろうぜ?」


ロゼの言う通りだと思った。


これだけ辺りを探して見当たらないんじゃ、

巨大な戦車とかいうモノは存在していないと観るのが妥当だろう。


「そうだな・・・よしっ、ルビナスとロゼッタは予定の行動にかかってくれ」


慎重派のレオンが重い腰を上げた。

研究所の偵察と、辺りの警戒網の探索。

レオンは主だった進入路を、俺とロゼは裏側を。


「ルビ良いか?!裏側はロッソア本土に近い主要道路があるんだ。

 間違っても近寄り過ぎないようにな・・・背後にも注意してくれよ?」


真っ直ぐ下るレオンに対し、俺とロゼは搦手を受け持つ。


「そっちこそ。独りなんだから十分注意してよねレオン」


雪だるまか白熊みたいに着ぶくれたロゼが、逆に喚起すると。


「ロゼ・・・そのままの格好で行く気じゃないだろうな?」


眉を顰めるレオンに停められる。


「ばっ?!馬鹿ねぇ、動くんだから脱ぐに決まってるじゃない!」


本当に脱ぐ気があったのかは知らないが、慌てて防寒コートの1枚を脱ぎ捨てるロゼ。


「これで良いでしょ?!」


脱いだ瞬間に、ロゼがぶるっと震えやがった。


「・・・もう一枚着てたのかよ?!」


コートの下にはコートが羽織られていた。

どんだけ寒がりなんだ・・・呆れたレオンが、もう良いとばかりに手を振る。


「アタシは寒がり屋さんなのよぉ・・・」


いいや・・・と、俺は茶々を入れたくなる。

熱さにも弱かったじゃないのか?・・・ってね。


レオンは肩を竦めて俺を観ると。


「じゃあルビ、時間厳守で。

 きっかり2時間後にはここまで帰って来る事。いいわね?!」


「了解した。そっちも気を付けてくれよな?」


グローブの隙間から覗く腕時計を確認して、2時間後を頭に叩き入れる。


「今、午前7時。集合は9時だぜ?!」


「ああ、間違いなく・・・な」


時間を整合し合い、二手に分かれる。

一面の銀世界だから、普段の格好では目立ってしょうがないが。


「ルビぃ・・・足元が寒いよぉ・・・」


白と鼠色で迷彩されたコートを羽織り、雪上での視認性を軽減させていた。

・・・のに。


挿絵(By みてみん)


「あのなぁロゼ?

 寒いっていうのなら、もちっと早く歩けないのかよ?」


着ぶくれ状態のロゼは、よたよたと雪を掻き分けてついて来る。


ぶつぶつ文句を垂れるロゼは、雪に前進を阻まれているようだ。

だってさぁ・・・雪だるまが歩いているのに等しいんだぜ?


「ぶぅ・・・だって、寒がりなんだもん」


・・・だからって・・・ああ、もういいわい!


「置いてくからな・・・」


雪を掻き分けているのは俺なんだぜ?

道を作っても、達磨さんは通れやしないから。

ずるーずるーって、足元のわだち以上に着ぶくれているのが問題なんだ。


「待ってよぉ・・・下り坂になったから追いつける・・・・って?!」


そうだよ、確かに盆地へ向かう下り坂だよ・・・って、それがどうしたってんだ?

積もった雪は腰まで深い。それを掻き分けて進んでいるんだが?


「うきゃぁっ?!」


素っ頓狂な叫びが、後ろの雪達磨から・・・


「何を騒いでるんだよ、敵に聞こえたらことだぜ?」


雪かきに精を出していた俺が、いい加減にしろと振り向いた。


「にゃぁ~っ?!ルビィ停めてぇ~っ!」


俺は眼を疑った。

雪道を造っていた俺に迫り来る・・・雪の塊に気が付いたからだ。

しかもだ、その中心には。


「むぷぷっ?!たしゅけてぇ~!」


雪達磨が雪の玉と化しているんだから・・・驚くより呆れた。

グルングルンと廻る度に巨大化していく雪達磨。

そこで俺はとんでもない事に気付いたんだ。


「ばっ?!馬鹿止せ!こっちに来んな?!」


雪の道を辿って突っ込んで来る塊。

横に逃げるにしても雪が邪魔で逃げられないし、ほって置いたらロゼが・・・


「くそっ!こうなりゃ意地でも止めてやるぜ!」


もうその時は指輪の事も忘れていた。

時間を戻せばどうにかなるなんて思いも出来なかったんだ。


・・・呆れたノエルの声が届くまでは。


ー ルビ兄ってばぁ!二人共雪合戦でもする気なの?


「はっ?!ノエルっ!チェックポイントを・・・」


― あははっ!雪達磨さんだぁ!


喜んでいるのか・・・妹よ・・・


次の瞬間には、俺は雪達磨さんと一体化していた。


そうだよ!

停めれないどころか、巻き込まれちまったんだよ!

文句あっか?!


「ルゥビィ~~ッ?!」


「何とかしろよっ!この雪達磨魔女ぉっ!」


転げ行く雪の中。

俺達の罵る声だけが玉に響いていたみたいだ。







将軍はギガンテスの機械となった。

いいや、正確に言えば違う。


「ロッソア中将バローニアか・・・余程のモノ好きだな。

 自分から人間であることを捨てるとは・・・」


眼鏡をついっとかけ直し、プロフェッサー島田が呟く。


「人を自ら捨て、何を欲するというのか。

 二度と戻れぬ身体を、ここに置き去りにしてまで」


件の将軍は闇の力を侮っているのか、それとも無知故の行為だったのか。


「自ら望む者・・・これで3人目だな。

 それも戦争という最中に、敵を倒すという名目で人を捨てるとは。

 マリーベル中尉は死んだ。そして今度はバローニアも・・・死ぬだろう」


二人が死を判って魂を宿らせたのかは知らない。

戦場へ赴く者は、覚悟しなければならないのは人だろうが同じと言えるが。


「この男は将軍である前に、独りの欲望に走る愚か者だ。

 周りの者をも巻き込んで、死を振り撒く悪魔となったのだ。

 マリーベル中尉がどうなったのかは知らないが、将軍の未来は判る。

 必ず聖なる者により滅ぼされるだけ、間違いなく言えるのは死んだという事だけだ」


島田は振り向く・・・背後にある管に。

数本ある管の中には、それぞれ人の姿が見て取れる。


人体実験でも行っているのか、それとも何かの病巣の為に?

島田は一本の管を、眼鏡で捉えると。


「なぁミユキ、奴を魔鋼機械に放り込んだのはどんな魔物なんだい?

 そこでなら・・・異界でなら観えたんじゃないのかい?」


管の中に揺蕩う黒髪の女性に向けて、親しみを込めた声が出る。


ミユキと呼ばれた女性は、目を閉じたまま眠っている・・・


肌は生きている証に紫色しいろには堕ちていない。

死せる者とは違い、確かに息をしていた。


彼女は眠り続けているのだ、いつからなのかは知らねど。


「ミユキ・・・間も無く。

 間も無くフェアリアとの干戈も終わる。

 そうすればきっと・・・あの子達が来るんだ」


島田は何を求めるのか?

ミユキと呼んだ女性と、戦争との関係は?


「私は闇に手を染めてしまったよ・・・助けたい一心で。

 でも、罪は贖うことは出来まい。

 この手で闇の手助けをしたのには違いないのだから」


女性に語り掛ける島田は、遠くを観る良ような目で自らの手を透かしてみせた。


「もう一人の子も、リーン王女も。

 いつの日にかは戻してみせると誓ったからな、ミユキと。

 私に出来る事は何だってやってみせる。

 それが喩え悪魔の企みだとしても・・・やってみせるさ」


島田の手にはどす黒い澱みのような痣が憑いていた。


「もし君が残ったのなら、こう言ってやって欲しいんだ。

 ミユキを救う為に私は悪魔となったんだと。

 悪魔なら聖なる者によって滅ぼされねばならないのだと・・・」


眼鏡を外した島田の瞳は、紅く澱んでしまっていた・・・

 

どうなった?!ルビとロゼは?


雪に紛れて・・・いいや、雪達磨になって。

そのまま研究所へ?!まさか?


一方、研究所の中では・・・


次回 悪夢の研究所<デーモンラボ> 第12話

そこに居るのは研究に身を捧げるプロフェッサーなのか、それとも・・・悪魔か?

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― 新着の感想 ―
[一言] 私も寒いのは苦手……。 特に雪!! たまーに降られると、外に出られない、転ぶ!! 雪国の人にしてみればちゃんちゃらおかしいんでしょうが。 なので、つれなくしないでよルビたん。 マコトパ…
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