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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
<ロッソア>編 第6章 紅き旗
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悪夢の研究所<デーモンラボ> 第8話

シリアスなエル達に比べて・・・


ここはとある温泉場ですが、なにか?

気が付くと脱衣場に運び込まれていたんだ。


確か風呂の中で・・・ロゼが何かを話しかけていたんだけど。



目が覚めた俺の周りには、人影もない。

仲間達の姿も、ロゼやレオンの影すら見当たらない。


「おかしいな?

 のぼせてぶっ倒れたのに、俺一人だけかよ?」


普通なら、気が付く迄介抱してくれたっておかしくないだろう?


「それとも、何か重要な事が発生して置いてけ堀を喰らったんだろうか?」


気絶した人間を放置して居なくなるのなら、余程の事が起きたに違いない。


「こうしちゃ居られないぞ!

 早く服を着て・・・・・・・え?!」


その時やっと、自分がタオル一枚を腰に載せているだけなのに気が付いた。


「うわっ?!裸んぼぅじゃないか?」


起き上がった時、タオルが落ちて気が付いたのだが。

俺は産まれたままの姿で寝かされていたみたいだ。


流石に気が付いた。

誰も居なくて良かったなぁってね。


脱衣所の中は温泉の熱で温かいからか、ここまで連れて来てくれた人はタオルを腰に載せて立ち去った様だ。


・・・って?まさか・・・だよな?


俺の記憶では、風呂場に居たのはロゼ一人だった気が。


「・・・これはもしや・・・最悪の展開なのでは?」


俺はこの後に待ち受ける、絶望にさいなまれた。


「ううっ・・・どんな顔で会えば良いんだよ?」


風呂の中で話してる途中に気絶して助けられ、おまけに素っ裸を観られた?!


「最悪だ・・・悪夢だ」


もう一回気絶しそうになるのを堪え、俺は肌着に腕を通した。


上着に右腕を通した時、指輪を外していた事を思い出す。


「そうそう。ノエルの奴を着けなきゃ」


時の指輪に宿っているノエルを思い出し、急いで填めると・・・


「ルビにぃ!お風呂どうだった?」


キラキラした声が頭の芯に響いた。



指輪を外して風呂に入った経緯から、興味津々の妹が訊くのはしょうがないか。


「広かった?気持ち良かった?・・・って、アレ?

 どうしてこんなに落ち込んじゃってるの?」


ー ヤバイ・・・覚られた?!


心の内を覗き込まれた。


「なんだか・・・恥ずかしいとか失敗したとか。

 ぐちゃぐちゃな心境になっちゃってるけど・・・なにこれ?」


ー もろに・・・そうです。そうなんだよ?!


「アタシだって入りたいなぁって思ってたんだよ?

 でもぉ、ルビ兄の裸なんて見られないしぃ・・・って、断ったんだけど?

 ・・・どうして誰かに見られたって、恥ずかしがってるの?」


ー ギクリ?!どうしてバレたんだ?!


「ねぇ・・・おにいちゃん?!なにがあったのか・・・説明して?」


ー いやあのっ。どう説明して良いのやら・・・


「・・・ルビナスっ、説明しろっての!」


ー ・・・とほほ



それから、俺は泣く泣く妹へ順々に説明する事、約十分。

初めは疑いの返事だったノエルが、漸く状況を把握してくれたみたいで。



「まぁ・・・不可抗力だったみたいだから。赦してあげよう」


「はぁ・・・信じてくれてありがとうございます」


指輪に謝る男の図なんて、傍で観たら変人だよ。


「・・・と。こうしちゃ居られないんじゃないの?お兄ちゃん?!」


ー そ、そうだった!早くロゼ達を見つけないと!


「ああ!急ごう!」


ノエルに急き立てられた俺が、先ず初めに向かったのは。


「二人の部屋!先ずはそこから探すぞ!」


指輪にチェックポイントを造らせながら、俺は駆けた。






月の光が身体を照らす。

上気した顔・・・いいや、真っ赤な顔を俯かせて。


「ど、ど、どんな顔をして逢えばいいんだろう?」


ラウンジの椅子に座り込んで。

ロゼはレオンが待つ部屋へ戻れなくなっていた。


挿絵(By みてみん)


未だに心臓が大きく脈を打っている。


「み、観たくて視た訳じゃないのよ?

 あれは・・・偶然の産物だったんだから・・・不可抗力よ」


自分を正当化する・・・だって・・・


「助けたんだから・・・そう!助けたのっ!

 あのまま放ってなんていられなかったんだからっ!」


ロゼはそれを観たくて助けた訳じゃないと正当化している。


「魔女のロゼさん?あの後どうなったのか話してくれない?」


自分だって気絶しそうになった。

ルビと二人で倒れてしまいそうになった。

その時、身体に宿った魔女の魂が入れ替わってくれた。


「だからっ、なにがどうなったのか・・・教えてよ?」


気が付いた時には服を着ていて、傍に横たわっているルビが居た。

当然、タオルで下半身を隠した状態で。


「「・・・聞かぬが華ってこともあるわ」」


教えてくれない魔女の魂に、余計に気になってしまう。


「「ロゼッタは知らなくてもいいのよ・・・うふふっ」」


意味有り気に笑う魔女に、ロゼは顔を紅くするだけだった。


と。そこに走って来る足音が。


「あっ?!こんなとこに居たのか?」



 びっくぅっ!



飛び上がる程驚いた。

心臓が飛び出しそうになった、口から。


「ひゃぁっいぃっ?!」


ルビの声で驚いたロゼの声は裏返り、走り寄ってくる方の反対に身体を逸らす。


「部屋にも戻っていないからどうしたのかと思ったぜ?

 助けてくれたんだろ、気絶した俺を風呂場で?」


益々心臓が脈打ち、気絶しそうになる。


ー そ、そうなんだけど・・・覚えて無いのよ!


口にまで出かかった返事を、敢えて飲み込むロゼ。


ー そうなんだけど・・・それを言ってしまえば。

  いくら鈍感男のルビだって、判っちゃうわよね?

  アタシがルビの・・・見ちゃったことぐらい・・・


振り返るのも恥ずかしい。まともに顔なんて見られない・・・


湯の中でもないのにロゼはのぼせ上がる。

頬が熱い、耳が鳴る・・・のぼせているのに貧血状態になったみたい。


ー あ・・・眩暈がする・・・このままもしルビが触れでもしたら・・・気絶するかも


ふらふらするロゼが感じてしまったのは。


「なぁロゼ?そうなんだろ?」


肩にルビの手が載った。


ー はぁあぅっ?!も・・・駄目


目の前が暗くなる・・・まるで身体を誰かに乗っ取られたみたいに・・・

この感じ、確か大浴場でも感じたな・・・と、ロゼが想った時には。


「そうよ、わたしがルビナスを脱衣場まで運んだんだから」


耳に届いたのは、意図しない自分の声。


ー 二重人格者だったとしたら、こんな風なのかな・・・


気を喪う瞬間、ロゼは魔女に身体を乗っ取られているのが判った。

肩に載せられた手を掴んだ魔女は、動悸を抑え込んで振り向く。


ー あ、やっぱり。魔女ロゼさんがルビを脱衣場まで運んだんだ?!


乗り変わられた当人であるロゼッタは、魔女ロゼの答えを固唾を呑んで聴く。


「急に気絶しちゃったんだから、助けない訳にいかないでしょう?」


ー そ、そうよ!あの場合なら誰だってそうするでしょうが!


「助ける途中まではロゼだったんだけど。

 何だか良く解らないけど、共倒れになりかけたのよね」


ー そ、そうよ・・・って。待って待って待って!それ以上言っちゃ駄目ぇ!


案の定ルビが顔を引き攣らせて見ている。

それでも魔女ロゼは平気で続けた・・・(哀れロゼたん)


「どうして気絶なんてしそうになったのかは知らないけど。

 確か、ルビナスの腰に巻いていたタオルがはらりと・・・」


ー ぎゃあああぁっ?!喋るなぁっ!


魂が爆発した・・・恥ずかしさのあまり。



「お、おい?ロゼ・・・ロゼさん?急に固まってどうしたんだ?!」


ルビが揺すってるのが判る。

眼を開いたまま動かなくなり、話さなくなったロゼッタを揺り動かしている。


「魔女のロゼさんが俺を脱衣場に運んでくれたんだよな?

 話はよく分かったから、起きてくれよ?」


ー あ・・・そうなんだ・・・って。つまり?!


「助けてくれたんだから、見られたって仕方がないと諦めるよ。

 ノエルも状況が判ったって納得してくれたしさ」


ー はははっ、妹ちゃんも?!知ってたのね・・・はうぅっ?!


眼を開けかけたロゼの意識が、今度は本当に途切れた。





「で?!ロゼをここまで運んで来たって言うんだな?」


レオンの声が聞こえる。


「あ、ああ。エントランスで気を失っていたんだよ。

 湯あたりでもしたんじゃないのかなぁ(棒)」


棒読みだ・・・答えるルビの言い訳じみた答えに突っ込みたくなる。

今直ぐ眼を開くのは辞めておこうとロゼは思った。


ー どうやら部屋に運ばれたみたい・・・ってことは。


「ルビに発見されたのが良かったのか、悪かったのか。

 起きたら噛みつくんじゃないのか、ロゼの事だしさ?」


「そ、それを言われると。悪気なんてこれっぽっちもないぜ?」


ー 白々しい・・・気絶させたのは何処の誰ヨ?!


ひくひくとこめかみが震える。


「本当かぁ?気絶しているのを良いことに、変な行為を働いてたんじゃないのか?」


ー ひくっ・・・ま、まさか?!こいつは一体アタシに何をしたの?


眉が跳ね上がる・・・口元が捩れる。


「そんなことする訳がないじゃないか!

 俺は潔白だ、この指輪に賭けて誓っても良い!」


ルビが思いっきり潔白を主張する。

信じるかどうかはそれぞれだけど。


「背中におんぶして来たんだぜ?何が出来るっていうんだよ?」


主張するルビは、相変わらず抜けていた。


ー 背中におんぶ?!じゃあ・・・どうやって背負った?どんな体制でここまで来た?


ロゼの肩が震える。


「女の子を背負うのが変な行為だって言うんじゃないだろーな?!

 御姫様だっこよりは普通じゃないか!」


・・・どっちも似たようなモンじゃないのか?

いいや、違う。断じて違う!


「一つ訊きたいのだが、ルビよ。

 意識が無い女の子を背におぶると、背中に違和感が無かったか?」


レオンが賢者タイムに入ったような声で聴く。


「ああ、まぁな。

 そりゃぁ・・・感じるのは仕方ないだろ、ロゼって巨乳だから・・・」


ー ほほぅ・・・言い切ったか



 ボグッ!



光速の拳骨がルビの腹を抉った。


「がはっ?!」


めり込んだ拳を引き離し、ロゼが起き上がると。


「ありがとうございましたわねぇルビナス(恐怖声)」


一字づつ区切って、ロゼが睨みつける。


「なにがありがとうだ、助けたのに拳骨を喰らわせるなんて!」



 ぎろり



起き上がったロゼが、ルビナスを冷ややかな目で観る。


「ひぃっ?!いいぇぇっ、独り言です」


怯えかえったルビに、レオンと指輪のノエルが肩を竦めてため息を吐いた。


「「ルビにぃってば、女心がまるっきり解ってないなぁ」」


然り、ごもっともです。妹ちゃん・・・












帝国の宮殿。

そこでは今晩も饗宴が繰り広げられていた。


大帝の側近を自称する者達に因り、宴が催されるのは日常茶飯事と化していた。

国民の多くが食うや食わずにあるというのに・・・だ。



「今宵は珍しく王女殿下もお越しになられておられるようで」


貴族の一人がグラスを片手に話す。


「そのようですな、一段と麗しいお召し物で」


答える貴族は煌びやかに過ぎる衣装を纏っている。

まるで自らの権力を誇示しているように。


数十人の貴族とその伴侶達の前に、プラチナブロンドの王女が立っている。

貴族達とは違い、王女としては地味にも思えるドレス姿で。


どちらが王族で、貴族なのか。服装だけで観れば逆転しても見えた。


純白のドレス、金のティアラ。

王女である横帯を着けていなければ、下級貴族としか思えないだろう。

・・・この宴の中で観れば。


嘲笑する貴族達も意に想わないのか、王女はひたすら大帝を待っている。


「私の声が届くのは、こんな場でしかないのだから・・・」


決意を秘めた瞳が求めるのは。


「エルリッヒ姫・・・エル。

 今日の君は、今までで一番麗しいと思う」


侍従武官として傍らに控えるカインハルト卿が、辺りを見回して呟く。


「この場に居るどんな貴族の伴侶達だって、君には勝てやしないさ」


決意を秘めた目元を観て、カインは幼馴染にエールを贈るのだった。



ルビ達は一夜を楽しんだようです。


王女はこれから待ち受ける<戦いの場>に繰り出したようです。


相反しているようですが・・・気の所為です。

ルビ達はこれから襲撃する研究所の情報を掴むのです。

この温泉場に軍属が沢山来ているって言ったでしょう?

つまり・・・そう言う事です。


次回 悪夢の研究所<デーモンラボ> 第9話

君達が向かう先の研究所は、悪魔が住んでいると告げられるのだった?!

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― 新着の感想 ―
[一言] なんだかんだ、今のところは平和に楽しくやってるじゃないですか。 そりゃな……風呂で倒れたら外に出さないことには。 そう言う意味ではお姫様だっこよりもおんぶの方が役得……なのか?! 女ごころ…
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