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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
<ロッソア>編 第6章 紅き旗
94/133

悪夢の研究所<デーモンラボ> 第6話

「魔鋼騎戦記フェアリア」からの・・・伝統。


それは?!

外は一面の雪・・・いや、凍り付いた世界と言った方が正しいだろう。


湯気に見え隠れする夜景には、氷点下にまで下がった気温を示すスターダスト現象が見られた。

空気に含まれる水分が、凍り付いて舞い落ちて来る。


月明かりに照らされた氷の結晶が舞い落ちて来る・・・神秘的な景色だ。


もし、防寒具を装備していなければ、忽ちの内に凍り付いてしまう。

それが人であろうとも・・・




「いやぁ~っ、珍しいモノを見せて貰った」


「温泉の中から観る景色は格別よねぇ」


二人が空を見上げて感嘆の声を上げている。


そう。防寒具を着けていなくても凍り付かないパターンがあったのを言い忘れていた。

裸であろうと、温泉に浸かっていれば暖をとれるのだ。

熱いお湯に浸かっていれば、凍り付くなんて事にはならずに済むのだから。


「月がこんなに明るく見えるのも、氷の所為なのかしらね?」


「そうだな、多分。光を反射してるんじゃぁないのかな?」


きらきら舞い落ちて来る氷の結晶。

まるでおとぎの世界にも観えてしまう。


「さてと・・・私は十分温まったから。

 ロゼはもう少し長湯するのか?」


レオンが大露天風呂から揚がってバスローブを羽織った。


「え?!う、うん。遅れて入ったから、もう少し・・・」


ちらりとロゼが岩風呂の向こうに目を向けて答える。

大きな岩場がそのまま湯船となっている大露天風呂の、湯気の彼方に目を向けて。


「そうか・・・まぁ、この際だからゆっくり日頃の疲れを癒すと良いよ」


レオンは先に上がるとロゼに言ってから、脱衣場に戻っていった。



満天の星空。

雲一つない月夜。


ウラルの山々の頂がはっきりと観えている。


闘いの前、こんな休息を執れたのも幸運だったのだろう。

仲間達は思い思いに温泉宿を楽しんでいる。


二度と浸れるのか、分からないのだから。


「そうだよね・・・こんなチャンスは2度とないかも」


ロゼは先程から気になっていた、湯気の向こうを観て呟いた。



大露天風呂は、天然の岩場に湧き出た温泉をそのまま利用して誂えられていた。


ごつごつした岩場が辺りを囲い、への字に湾曲した湯船は、へこんだ双方からは死角になる部分があった。

今レオンやロゼが居たのは、長い一片の方。

その逆の短めの部分は、ロゼ達からは見渡せない死角になっていた。






「はぁうあぁ~っ、いい加減・・・目が廻りそうだぜ」


やっちまったと思った。

まさか、二人が入って来るなんて予想外だった。


長湯してやると決め込んだのが悪かったのか。

単に二人が後から来ることを考え及ばなかった自分が悪いのか。


ロゼとレオンの声が聞こえて来た瞬間。

ルビは己の行為を後悔した。


ルビは事もあろうに隠れてしまったのだ。

二人から見つからないように・・・と。


「こんな事なら堂々と浸かっているんだって言えば良かった・・・」


二人が来る前に十分過ぎるくらい浸かっていたルビに、湯船に身を潜めることは苦行の他にならなかった。


「のぼせたって立ち上がったら、二人にバレてしまうし。

 かといって眼を廻してしまえば、沈没してしまうし・・・」


どこまで我慢できるか・・・二人にバレずに済むか否や?


真っ赤にのぼせ上がっているルビが、もう耐えきれなくなった頃。



「ねぇルビ?!そこにいるんでしょ?」


張り詰めていた緊張感が、遂に破れる時が!


「脱衣所にルビの服があったから・・・分かっているんだよ?」


・・・・しまった?!なんてこった!

のぼせているのに、血の気が退いた。


「別に覗きに入った訳じゃないんでしょ?

 覗く為に隠れているんじゃないのは判るよ」


ー そうです!俺は潔白ですからっ!


心の中で身の潔白を主張するが。


「アタシ達の方が後から入ったんだし、ルビが隠れる必要なんてなかったのに」


ー そ・・・そうなのか?


「ここって混浴なんだよね?だったら隠れなくても良かったんじゃないの?」


・・・・・


ー え・・・そうなの?


俺はゆるゆると振り返る。


星明りと月明かりに照らされて。

まるで女神のような、妖精の様にも観えるロゼが・・・


挿絵(By みてみん)


バスタオルを身体に巻き付け、髪を結い上げたロゼが仁王立ちで見下ろしていた。


ー な・・・なんだよ?正直がっくりだぜ?


月明かりに照らされたロゼ。

温泉に浸かって上気した身体は、薄っすらとピンクに染まって観えている。

そこだけが少女らしいと思えるんだが。


「ん?!なによ?アタシの何が不満なのよ?」


表情にでも現れていたんだろうか?

落胆した俺という男の、浅はかな期待感があっさり崩れたのが。


「まさか混浴風呂で、真っ裸になってるとでも思ったのかしらね?」


・・・否定できない。


「・・・マジ?」


また。顔に出てたのか?

ロゼがドン引きして訊き直しやがる。


「べっ、別にぃ・・・裸だと思ったから隠れた訳じゃないぜ?!」


「ほほぉう?じゃあどうして隠れていたのよ?」


それを突っ込むか?


「そ、そりゃぁ・・・な。女子が入って来たら驚くし、隠れるよ」


突然の事だったから、ここが混浴だった事も判らずじまいで。

逃げるように隠れたのが、本当の処だよ。

当然観ちゃぁーいない。断言できる!


「それなら、隠れた後に声を掛けたらよかったのに」


「いや、それは。隠れるのに気が行ってしまって。

 声なんか出したらとんでもない目に遭うかと・・・」


・・・そうじゃないか?!俺は怖かったんだ、二人に痴漢呼ばわりされるのが!


「はぁ~ぁっ。露天風呂に入る前に、説明書きを読まなかったのね?

 ここは天然の岩風呂だから、混浴を採用してるって。

 でっかく書かれてあったのに・・・せっかちなんだからルビは!」


・・・否定できない。


「しょっ、しょうがないだろ!

 ロゼ達に足蹴にされて、むしゃくしゃしてたんだから。

 こうなりゃー温泉に浸り切ってやろうと思ったんだよ!」


「だからって。他の湯治客も居るのに・・・良かったわね誰も居なくて」


・・・そうだった!貸し切り状態だったから、肝心なことを忘れてた?!


「すみません・・・・俺が悪ぅござーした」


俺が顔を逸らしている内に、ロゼの奴が。


「・・・えっ?!」


隣に座りやがった?!

ちょっとでも手を伸ばしたら触れれるくらいの距離に。


固まる俺に、ロゼが笑い掛けやがる。


「なに?自意識過剰なんじゃないの?」


蒼く澄んだ瞳。上気した頬。

それに・・・白いうなじ・・・バスタオルの間から見える白い肌。


「ねぇルビ。明日に成ればもう修羅場に向かうんだよね?」


朱色の唇が・・・艶めかしく見える。


「ノエルちゃんを無事に救い出さなきゃ。

 なんとしても、月夜の魔女から抜け出させてあげないといけないよ?」


いつも聞いている声だって言うのに、今聴いていると妖精ニンフの様に色っぽく聞こえる。


「アタシ達が出来る事はなんだって手伝うから。

 どんな危険な事が待ち構えていたって、ルビには目的を遂げて貰いたいの」


なんだか・・・ロゼが女神の様に感じて来た。


「ねぇルビ・・・聴いてる?」


くらくらする・・・眩暈が襲って来る・・・女神に微笑まれているみたいだ。


「ねぇったら・・・・って?!ちょっ、ちょっとルビ?!沈んでるじゃないの?!」


息も出来ない・・・


「馬鹿ぁっ?!のぼせたんなら最初から言いなさいよぉ?!」


ロゼの怒鳴り声が大露天ぶろに木魂した。

のぼせ上がって気絶した、そんな俺に向けて・・・








皇女エルリッヒは眼を見開き続ける。


有り得ない・・・こんな事があってはならない筈だと。


こげ茶色のボサボサの髪をしている小柄な男が、カインに刃物を突き立てたから。

背後からの一撃を受けた侍従武官カインハルトが、事もあろうに凶刃に倒されるのかと。


「カ・・・カイン?!カインッ!」


恐怖にも近い。

驚愕の現実が、エルリッヒを叫ばせた。


「い・・・嫌っ!嘘よっ、こんなのっ!」


両手で顔を覆い、観てはならないモノをみるように。

カインと暴漢がもつれ合っている姿に、姫としてではなく幼馴染へと叫んだのだった。


「金・・・金を渡せ!」


小柄な男から言われたのは、強盗としての言葉だった。


「この男は金を持っていた、その主なんだろうお姉さんは?」


小柄な男の声は、エルリッヒに向けられる。


「こいつみたいになりたくなかったら、大人しく金を出せよ!」


カインに襲い掛かった強盗は、獲物に強請った・・・・


お風呂回っ!

いかにもルビらしい結末でした?

のぼせてダウン・・・これじゃあロゼたんも肩透かし?


この後どうなったかは・・・またの機会に。


さて、一方シリアスな幼馴染は?

カインはどうなる?エルはどうする?


次回 悪夢の研究所<デーモンラボ> 第7話

彼女はやっと攫めた。王女は帝国にナニが足りないかを教えられる・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] 今日から各話ごとに、感想を書けるようになったのですね。 なんとまぁ、混浴でしたか。 そうだよなぁ、痴漢の冤罪は恐ろしい……。 というか湯に浸かっている間はいいけど、服を着たり脱いだりするの…
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