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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
<ロッソア>編 第6章 紅き旗
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ロッソアの赤き風 第5話

始った戦い。

ロッソアの小隊は、群がる蜂起した民衆に無慈悲な攻撃を始めるのだったが?!

ロッソア軍軽戦車は砲門を開いた。

自国民に対し、遠慮も無く。


短砲身37ミリ砲から火が吐かれる度に、何名かの命が奪い去られても。


喚声を上げて突っ込むだけの人に対し、恐怖とは程遠い感情で弾は放たれた。


円陣を組むロッソア小隊に群がる人々は、近寄る事も出来ずに屍を造るだけだった。




「組織だった攻撃が出来ないのなら、辞めておけば良いのに」


傍観するだけの自分達に、何が出来ようか。

呟くロゼの声が虚しく聞こえる。


「さぁ、今の内にここから立ち去ろう・・・」


ロッソア人同士で闘っている隙に、逃げ出そうというレオンに。


「あのままほって置いたら、全滅しちゃうんじゃないの?」


干渉を仄めかすロゼ。

確かに・・・闇雲に闘うだけじゃ戦力比があり過ぎる。


「かと言って、俺達に何が出来ると言うんだ?」


嘯いたつもりはない。

闘いに踏み込む謂れが無いからもある。

それに、俺達だって戦車3両を相手取って戦える装備を持ってはいなかったから。


だけど。

俺は指輪の中で震えているノエルを感じていた。


無残に死に逝く人達を目の当たりにして、怯えるように震えているノエルを感じていたんだ。


「ノエルは何を思い出したのだろう・・・」


目の前で繰り広げられる戦闘に、どんな繋がりがあるというのか?

何を妹は観て来たというのだろう?


「ノエル、大丈夫か?

 辛いのなら塞いでいても良いんだぞ、思い出さなくったって良いんだぜ?」


指輪にそっと声を掛ける。


「「ルビにぃ・・・少しだけ思い出せた。

  アタシが観てしまったモノ。アタシに掛けられた恨みや嫉みの声を」


悲しげな声が聞こえた、頭の中に直接。


「「友達だったが最期に言った声を・・・睨んで来た瞳を。

  思い出しちゃったんだ・・・死に逝く人を観て・・・」」


俺達の前で行われる戦闘という名の、虐殺を目の当たりにしたからか。


「「あの日、アタシは逃げ惑ったの。

  お母さん達とはぐれ、先祖の墓地に辿り着いた時には・・・

  みんな固まって死んでいたわ・・・みんな・・・」」


ノエルの声は震えている。

そこには観てしまいたくない現実が隠されていると感じた。

俺にとっても、聞きたくない現実が秘められていると思ったんだ。


「ノエル。もう言わなくて良い。

 観ちまった・・・汚されちまった心が記憶を仕舞い込んでいたんだ。

 だから、もう思い出さなくて良いんだよ」


現実はいつもそうだ。

観たくも無い、知りたくも無い事を突き付けて来やがる。


そして心を闇へと貶めようとしやがる。


ノエルがオーリエさんと一緒に堕ちかけたのは、辛い現実に負けそうになったからだろう。


「「だけど・・・思い出さなきゃいけないんだよ?

  どんなに辛い過去だって、アタシにとっては真実なんだから」」


「ノエル・・・強くなったんだなお前って」


辛い過去に向き合おうとするノエルに、なんと励ましてやれば良いのか。

つくづく俺のボキャブラリーの無さに、嫌気が差す。


「「強くなんてないよ。

  ルビ兄が居てくれるから・・・思い出す決心が出来ただけ。

  一緒に居てくれなかったら、閉じ籠っていただろうからね」」


いいや、そんな事はない・・・そう言ってやることが良いことなのかどうか。


「ああ。いつまでもノエルと一緒に居てやるから。

 寂しいなんて思わせないから・・・辛いなんて感じさせなくしてやりたいから」


いつか。

躰を取り戻してやれたのなら。

その時こそ、ノエルの心まで解放出来る気がしたんだ。


「「ルビにぃ・・・アタシね。

  このままでも良いなって思えるよ?身体なんて取り戻さなくたって」」


妹が好意を抱いてくれるのは嬉しいけど。

魂のまま、肉体を持たずに居たら・・・


「駄目だ。ノエルには取り戻してやるから身体を。

 戻れたら、俺に見せてくれよ?笑う顔を、明るく笑うノエルの顔を・・・さ」


「「ルビ兄・・・約束するから」」


少しは気が晴れたのか、妹らしい声が返って来た。


「それで?ノエルはどうしたいんだい?

 このまま死に逝く人達を見過ごすのか、助けてあげたいと思うのか?

 俺はノエルに・・・俺の魔女に問いたいんだ。

 俺の力とノエルの魔法で、虐殺を停めてみたいと思うんだ」


本当なら。

ノエルの身体を取り戻しに、一刻も早く行かなきゃならないけど。


目の前で繰り広げられる闘いを変えて見せたいと思ったんだ。


「「ルビ兄ってさ・・・ホント昔からお人好しさんだったよね?」」


「お人好しは余計だろ?」


ノエルが指輪の中で微笑んだ・・・そう思える。


「「アタシ達で死に逝く人を救えるの?」」


「ああ、タブンな。実績だってあるんだぜ?!」


不意に俺はロゼに振り返った。

自爆して果てた筈のロゼを救った・・・筈だったから。


その当時の記憶は無い。

時間を戻して運命さえも替えてしまったのに・・・だ。

だが、俺に宿った騎士が教えてくれたんだ、ロゼの中に宿った魔女からもだ。


俺には秘められた魔法力があるんだと。

時の指輪を使役出来る・・・最強の魔法があるんだって。


「「ルビにぃ・・・やるんだね?

  もし、アタシの為にだったら・・・やめておいてよ?」」


「ノエルだけの為じゃない。

 本当はロゼだってレオンだって、救いたい筈なんだから!」


「「・・・・わかった・・・・」」


ロゼとレオンの名で誤魔化したと、ノエルは気付いているだろうか?

一番介入したいのは俺だって事に。


戦場の悲劇を知っている俺は、死んだ人よりも生き残っている友や家族を想ってしまうのだと。

・・・ノエルには分るだろう・・・必ず。


「それじゃあ・・・やるぜ?!」


「「うん・・・命じて。ルビ兄の想う時間を!」」


ノエルは魔女としての務めを果たそうとしている。

主人である、時の指輪を填める者に。




「ロゼ、レオン!俺は戦闘に介入するぜ!」


突然の指示に、レオンが押し黙った。


「ふぅ~ん?!少し黙っていたと思ったら・・・あの子に何か頼まれたの?」


ロゼが眉を跳ね上げて訊いた。


「頼んだのは俺さ。無慈悲な奴等を懲らしめてやろうってな!」


「ほほぅ・・・なにか秘策でもある訳?」


レオンが擲弾筒に榴弾を込めて確認して来た。

もう、俺に反対する気じゃないのが、その仕草で分かる。


「勿論だ!時を戻しアイツに言い聞かせてやるんだよ。

 突撃するだけじゃ駄目だって、敵の隙を突くように動かなきゃいけないんだってね!」


俺がアイツって言ったのは。


「あの指揮官に?!どうやって話しをつけるっていうの?」


今度は興味有り気にロゼが訊いて来た。


「ああ、それね。そいつは簡単な事さ。

 俺達の魔砲をみせてやりゃー納得するだろうさ!」


「魔砲ね・・・まぁ、驚くだけじゃ済ませはしないだろ?ルビなら」


レオンがニヤリと笑う。

俺を信用してくれているのか、それとも馬鹿にしたのか?


「話は決まったわね・・・後はルビの出番に任すわ。

 当然時を戻すんだったら、今のアタシ達は居ないんだから。

 そん時は、しっかりやってよね・・・時の魔術師!」


過去へ戻る・・・それが俺の技。

時を戻してやり直す・・・それが時の指輪を持つモノの特権。

しくじって死なない限り、何度もやり直せるが。


「ああ、大丈夫さ。なんったって、今はノエルが宿ったから。

 魔女が指輪に宿ってくれているんだぜ?しくじる筈がないじゃないか!」


それに・・・って思う。

今迄とは違うんだ、闇雲に戻るだけじゃない。


「「ルビ兄ぃ~っ!準備完了ぅ~っ、魔導書にやらなきゃいけない事を書いたよ!」」


そう・・・魔女の魔導書が残されたから。

オーリエさんがノエルに残してくれた物。


「よぉしっ!往くぜみんな!

 ノエルっ、発動っ!時を戻せ!!」


時の指輪が蒼く光った。

指輪が魔法を紡ぎ、更なる光の中で・・・


「「いっくよぉ~っ!リィボォーンフェイト!」」


挿絵(By みてみん)


時を司る魔女が舞う。

少女の姿のまま・・・紅き瞳を見開いて。

長い紅い髪を靡かせ、宿る指輪の中で魔力を放つ。



魔法の開放。

魔女として宿る妹により、時の指輪が時間を取り換える。


金色の光が魔導書を繰り広げ、


金色の光の中、ノエルが魔導書を繰り広げた!

発動した兄妹の魔法。

遂に時の指輪が異能を発揮するのか?!


ルビは勝算があると言った。

それにはバラバラに闘う民衆を纏められるかが鍵なのだが?


次回 ロッソアの赤き風 第6話

君は信じられる友を作れるのか?国が違えど、想いは同じだと言うのか?!

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