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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
<ロッソア>編 第6章 紅き旗
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ロッソアの赤き風 第2話

廃村に立ち寄ったルビ達。


廃墟と化した一軒の家に入ろうとした矢先だった・・・

あばら家と化した民家の窓ガラスが、一瞬だけ何かの光を反射した。


機関短銃を持つ手が強張る。


ー 誰かが見張っているのか?!


緊張した俺の心にノエルが知らせて来る。


「「ルビ兄・・・誰かが覗いてるよ?」」


指輪に宿るノエルの声が頭の中に直接話しかけて来た。


「ノエル、どこから観られているかが判るか?」


先に民家に入った二人に、聞こえない位の小さな声で訊ねた。

もし間違いだったら、要らない心配をかけるから。


だけど、ノエルの魔法力は相手を見つけてしまった。


「「にぃ・・・後ろの岩陰だよ。

  あそこから光が見えるの。多分眼鏡か何かの反射光だと思う」」


もう一度窓ガラスを観たが、もう光は見えなくなっている。


「確かか?俺には観えなくなっちまったんだが。

 今も見張っているのか?何人位居るかが分らないか?」


続けざまに俺が訊くと、暫くノエルは黙り込み・・・


「「ごめん、何人居るかは見えないよ。

  だけどちらちら光は瞬いて観えているの。多分まだあそこに居るよ」」


十分に確認してから答えてくれた。


挿絵(By みてみん)


「そうか。でも見張っているからと言って危害を加えて来るかは分からない。

 もう少し様子を見なきゃならないのは、こっちだって同じだろうさ」


俺達がフェアリア人であると見切った訳でもないだろう。

女連れの旅行者かもしれないと思っているのかもしれないし・・・


「ノエル。すまないがそいつが、俺達に危害を加えようとするか見張っていてくれないか?」


状況を二人の娘に話そうと考えた俺が、指輪に宿る魔砲少女の力に頼った。


「「しょうがないなぁー。ルビ兄に頼まれたら嫌とは言えないもん」」


指輪の中で、ノエルが笑っているみたいに思えた。

本当は端からそうしようと想ってくれていたに違いない。


ー 俺と別れる前と違って、随分素直になってくれたんだなぁ・・・


ポツリと生き別れてしまう前を思い出して溢してしまった・・・ら。


「「・・・それって、嫌味?」」


聞き咎められたよ。


「いいや。誉め言葉だよノエル」


誤魔化しておこう・・・


「「ふぅ~ん、そうなんだ。

  アタシはねぇ、ルビ兄の役に立ちたいから・・・ロゼッタさんよりは!」」


・・・なんだよ、それ?!

もしかして、新手のツンデレなのか?!


「「・・・ルビ兄。ホントーに鈍いんだね?」」


隠し事は無理みたい・・・これってプライベート侵害じゃね?





魔法による外の見張りをノエルに頼み、俺は室内に入った。

平屋建ての民家は、意外なほど広く感じた。


ここら辺りも、冬ともなれば大雪に見舞われるだろうからか、

平屋と云っても屋根は見上げる程高く感じられる雪国仕様だった。


外から観たのより内部は思いのほか広く感じ、仕切られた部屋が何個かあるみたいだった。

その内のどこかに二人は入っているのか、玄関辺りに見当たらなかった。


「おい、ロゼ。どこに行ったレオン?」


あまり大きな声だと、外に居る奴等に聞かれてしまうかもしれないから。

俺は極力抑えた声で呼んでみた。


「ルビ・・・ちょっと?!」


一部屋のドアが開き、ロゼが手招きして来た。


「うん?!何かあったのかロゼ?」


様子が少しばかり変に思えた。

手招きしているロゼの表情かおが、いつになく紅い・・・って?!


「ちょっとちょっと!この部屋の奥にあるの・・・来なさいよ」


手招きしながら部屋に戻るロゼに釣られて、中へ入ったら。


「この部屋の奥に・・・あるんだよ。

 アタシ・・・堪らなくなって・・・」


部屋の中はこれと言って問題はなさそうだったが?


奥に繋がる小部屋があるみたいなのだが・・・


「ルビ・・・いらっしゃいよ。良いモノ・・・見せてあげる」


いつになく妖美な顔になってロゼが手を掴んで来た。

ほのかに温かいロゼの手に、俺は何か言い知れぬ感覚を覚えさせられてしまう。


ー もしかして・・・ベットルームか?


・・・いや、しかし・・・だな。

今はホカホカの布団を期待している訳にはいかないんだぜ?


「「・・・ルビ兄・・・残念過ぎる」」


どこかからノエルのツッコミが聞こえた気がしたが?


掴まれたまま、ロゼと奥まった部屋に入ると。


「遅い―っ、何してたんだよぅワラヒは先に飲んじゃってりゅーのよぉ!」


そこには顔を真っ赤にしたレオンが。


・・・・ワイン樽を背に、酔っぱらっている・・・みたいだ。


「奇跡だよぉールビぃー。

 ワイン樽が手付かずで残されてたなんてぇー」


・・・はいはい。そうですか・・・って。レオンさん?!


「私も一杯だけ飲んだんだけどぉ・・・美味しいって思うんだ」


・・・ロゼもかいっ?!


二人は入るなり樽を開けたようだ。


「初めは水か何かかなって思ったんだけど。

 こんなラッキーな事があるんだねぇ!しかもこんなにあるんだよ?!」


ロゼが部屋中に残されてある樽を指して喜んだ。


「勝手に飲んじゃー駄目だろ?

 もしかして持ち主が帰って来たら、訴えられちまうぜ?」


村を放棄した理由は知らないが、ワイン蔵をそのままにしてどうしたというのだろう?


「おかしいとは思わないか?

 ワインを樽ごと残してどこに行っちまったんだ、ここの住人は?」


俺が言いたいのは、何がこの村で起きたのかって事。


「強制疎開でも命じられたんじゃないのか?

 ロッソアでは時としてそんな理不尽な命令が下されるんだよ」


少しまともに戻ったのか、レオンがあり得ない話じゃないと答える。


「そーなんだぁ、私ロッソアに産まれなくて良かったわ」


ワイン樽からグラスに注ぎ、ロゼが一息に飲み干すと。


「でも、そのおかげで飲めるんだもんねぇ・・・ひっく」


初めて酒を呑んだのか、ロゼは忽ちにして酩酊したようだ。


「何やってんだよ二人共!

 今は酔っぱらってる暇はないんだぜ?!」


外では何者かが見張っているんだぞ・・・って、怒ろうとしたんだが。


「はい・・・ルビも一杯聞し召せ」


ロゼに酌されグラスを手に掴まされる。


「ほれほれ。男だったら酒にも強い処を見せてみんしゃい」


酔っぱらったロゼが、こちらの心配も余所に勧めて来る。


「う・・・一杯だけだからな」


真っ赤なロゼとレオンに見つめられて、俺はワイン如きと口にしてしまった。


ー う・・・旨い。これってかなり上等なワインじゃねぇか?!


芳醇な味。それでいて軽やかな舌触り・・・軽い飲み味。

ワイン独特の渋みも無く、匂いはブドウらしいフルーティさを醸し出している。


「旨・・・旨いなぁ。

 ・・・喉が渇いてたんだよ・・・きっと」


もう少しだけ飲みたくなっちまった。

グラス一杯じゃー、収まり切れなくなりそうだ。


「ほほぉーいける口ですな、旦那も!」


よせば良かったのに・・・つい手が。


「善い良い!それでこそ男子というモノじゃ!」


ロゼは俺の飲みっぷりに悦に入ったようで。


「もう一杯飲むが善かろうなのダァッ!」


・・・で。


呑んじゃったよ、俺。


ワインって・・・飲み過ぎると良くないよな・・・うん。


まともに飲んだ事のない酒を、空腹時に呑んだらどうなるか。

俺達は未経験の領域に足を踏み入れちゃったんだよ。


「あれ?!俺は何を言わなきゃいけなかったんだ?」


気が付いた時には二人はその場で眠り込んでいた。

酒が廻った俺が、ふらつく頭で思い出そうと試みて。


「しまった!こんな事をしている場合じゃない!」


今頃事の重大さに気が付いたんだ。


「おいっ!起きてくれ二人共!

 この家は見張られているんだ、何者かに監視されているんだよ!」


焦った俺は、酔いつぶれた娘を乱暴にお越しに掛ったんだ。


「しまった!ノエルっ、奴の動きは?」


魔法で監視を続けている妹へ、報告を求めた。


「「・・・ルビ兄ちゃん達って・・・置かれた立場を把握してないでしょ?」」


・・・いや、そうだけどさ・・・


「「はいはい。まだなぁ~んにも。奴等の動きは感じられないよ?」」


・・・助かった。


「「でも。なんだかどす黒い気が増幅して来たみたい。

  監視している人からなのかは分からないけど・・・」」


むぅ・・・やはり。敵意を持ち始めたか。


「こんな事をやってる暇はないな。

 二人を起こしてとっとと、逃げ出さねぇといけない。

 アイツに仲間が居るのなら、呼び寄せているのかもしれないしな!」


今は手を出して来ないのが、そんな理由だとしたら。

このままこの場に居る方が余程危険度が増すだろう。


「「ルビ兄。もしかしてまた戦闘になりそうなの?」」


「かもな。出来れば避けたいんだが・・・ノエル用心の為に!」


俺がノエルに求めたのは。


「「うん!念の為だよね。

  間違いが起きるかもしれないし・・・チェックポイントとしてマークしとく?」」


「ああ。ノエルの記憶に残しておいてくれ。

 ルナナイトの異能ちからに書き記しておいてくれ!」


月夜の魔女として。

ルナナイトの血を受け継ぐ魔女の、異能ちからに目覚めたノエルに頼んだ。


「「りょぉーかぁーいっ!マークオン!」」


時の指輪に対して、魔女の力も受け継いだノエルが魔力を解放する。


魔女たる者が引き継がせた魔法ペンと魔導書が現れ、ノエルはそれに今を記した。

月明かりのような金色の光が文字となり魔導書に印される。


「「書き残したよルビ兄!イザとなったらこの時間まで戻れるからね!」」


時を司る指輪に納め、ノエルが魔力を閉じた時。


「「じゃあ早く二人を起こしてよにぃ

  でないと・・・悪意の塊が襲って来るからね?!」」


・・・それは願い下げだぜ。


促された俺は、もう酔いなど吹っ飛んじまっていた。


「おいっ!起きるんだ二人共!敵が来るぜっ!」


叩き起こさんばかりに、俺はロゼとレオンに叫んだんだ。


新たな魔法が?!

妹により時の指輪の能力が上がったとでも?


そして待ち構えるのは何者かの襲撃か?

ロッソアに来ても戦いからは逃れられないのか?!


次回 ロッソアの赤き風 第3話


敵中の仲間と共に、君は生き残れるのだろうか?

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