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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
第5章 鋼鉄の魔砲少女(パンツァー・マギカメタル)
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<フェアリア>編最終話 誓いと願い

<フェアリア>編 最終話


希望はどこに?!

砂煙が舞い上がる。


恐らく2両の車両が重戦車隊へ突進して来ると思われた。


「話ではフェアリアの突撃砲を分捕った筈じゃないのか?」


無線で仲間に問い合わせる重戦車隊の指揮官へ。


「確かにそう言っていたが・・・2両だとは聞いていないぞ?」


中戦車隊の指揮官も、舞い上がる2つの砂煙を不審に思った。

「レオン少尉とかいう魔鋼騎乗りが分捕ったのなら、1両の筈だ。

 もしかしたら追いかけられているのかもしれんぞ?!」


重戦車隊指揮官は、直ちに観測を強化する。

まだ丘陵地帯から抜け出して来ない砂煙の下に、砲塔を向け終わった。


「中戦車隊は現れる車両の観測。我々はもう一両の車両に砲撃を行う!」


向かって来る砂煙。


その下から現れ出たのは・・・


「フェアリアの突撃砲と思われるモノ、我が方に向けて突進してきます。

 本隊の左側面に進路をとっています!」


観測報告を受けた指揮官は、突撃砲のキューポラに視線を注いだ。

そこには連絡通り、ロッソア戦車兵ジャケットがぶら下がっていた。


「間違いない!レオン少尉が分捕った敵突撃砲だ。ジャケットが吊られているぞ!」


「了解!こちらからも確認した」


重戦車隊は仲間が分捕った車両に向けられた砲を、もう一つの砂煙に向け直した。


「どうやら、フェアリア軍が追いかけている模様。

 後方に観えるのは中戦車らしい。砲撃準備、直ちに援護しろ!」


観測していたT-34中戦車隊の報告を受けて、重戦車は砲門を開いた。

KV-1の75ミリ砲が火を吐き、追いかける4号F型の行く手を阻んだ。


前方に弾幕を張られたフェアリア中戦車は、追撃を諦めて反転して行った。


「撃破は出来なかったが、レオン少尉は無事に帰還出来た。

 しかも敵突撃砲を分捕って・・・見事なものだ、流石魔鋼騎乗りといったところか」


側面を走り抜けていく3号突撃砲を目で見送り、ロッソア戦車隊も退きあげに掛かる。


「突撃砲のレオン少尉と連絡は取れんのか?」


指揮官が無線手に応答出来ないのかと問うと、


「先程最期の一報が入りましたが。

 なんでも敵の砲撃を受けて無線機が壊れて応答不能とのことです」


「なるほど、こちらからの声は届くのか?

 聴こえているのならハッチを開けて姿を見せろと言え」


指揮官は最終確認のために、姿を見せるように命じた。

無線手は突撃砲に向けて、命令を復唱する。


走り抜けていく突撃砲のキューポラから女性が現れる。

命令に従い姿を現したレオン少尉に、指揮官は納得した。


「宜しい、レオン少尉はそのまま陣地にまで帰還するように伝えろ。

 それと、よくぞ敵車両を分捕って帰還したと褒めてやれ」


疑いを晴らす重戦車隊指揮官に因って、突撃砲への道が開かれた。

これによりフェアリア突撃砲は、ロッソア軍本体への帰還が許されたのだ。




「どうやら・・・巧くいったみたいね?」


無線手席に座ったロゼが、深く息を吐いて操縦席を観た。


「多分・・・な。アリエッタ少尉は無事だったろうか?」


後ろが観えない操縦席からキューポラのレオンに向けて訊ねる。


「ああ、無事だったよ。彼女達は無事に帰ってくれたよ」


キューポラから喉頭マイクロフォンで応えたレオン少尉が、遠ざかる森へ向けて敬礼を贈った。

自分達をロッソア軍に信用させる為に採られたハスボック小隊長の作戦。

それはアリエッタ車に送り狼になって貰う事。

3突を追いかけ、敵に信用させる・・・レオン少尉が追われているのだと分らせる為に。


「アリエッタ姉様・・・ありがとう」


ロゼが胸のネックレスに詫びた。


「ハスボック小隊長にも。感謝しないとな」


二人を快く送り出してくれた小隊長にも、わざわざこんな芝居をうってくれたアリエッタ少尉にも。

妹を救い出すという私的な行動を認めてくれた二人に感謝していた。


「それだけじゃないわ、ムックもみんなにも。お礼を言わなきゃいけないわよルビ」


確かにだ。

でも、本当にお礼を言えるのは。


「ノエルを救い出せれば。そして無事にフェアリアへ帰れれば。

 その時に纏めてお礼を言うさ。・・・みんなへ」


俺達が帰ると信じてくれた皆に、もう一度逢えれば。


「うん、そうね」


無線手席で頷くロゼが後ろを振り返り、観えない仲間に別れを告げる。


「姉様、皆・・・またね。必ず戻るから、それまでの間、元気でね」


これから何が待っているのか。戦争の中、異国を旅する俺達に。

敵の中で目的を達成できるかは、自分の力でしか切り開けられないと分っているから。


「さよなら・・・アリエッタ姉様。お母さまに宜しく」


ポツリと溢したロゼに、こう言ってやったんだ。


「まるで死に別れるみたいだなロゼ。

 それを言うのなら、また逢える日を楽しみに待ってるよ・・・って。

 俺達は必ず帰るんだ、みんなの処へ。待ってくれている仲間の場所へ!」


湿った話は旅立ちには禁句だぜ・・・そういうつもりで言ってやったんだ。


「そうね!偶には良い事言うじゃないのルビ!」


偶にかよ・・・でも、ロゼが笑った。


「ああ、それまでの間に戦争が終われば言う事なしだけどな!」


「ホント。偶には・・・ううん、その通りだよね!」


ニヤッと笑ってやった俺に、ロゼは指を立ててくる。


「さぁ、これから何が待ち受けているのか分からないけど。

 魔鋼の兵は約束を果しに行くんだ、新たな仲間と共に!」


キューポラに居るレオン少尉へ向けて、俺は言い切った。


「改めて。レオン少尉、これから宜しくお願いします!」


ロゼもロッソアに精通している魔鋼の使い手に頼んだ。


「ああ、私に出来る事ならなんだってする。

 君達の約束を共に果す迄・・・こちらこそ宜しくだ!」


3人の新たな仲間が向かうのは、遠く離れた異国の地。

ロッソアとの国境を、遥か奥地まで越えた場所にあるという目的地。


妹ノエルの身体が置かれるという研究所。

そこに至るまで、一体何が待ち構えているのか。


希望を描く3人には、まだ何も判ってはいなかった。








          魔鋼猟兵 ルビナス <<フェアリア編>>終







エピローグ




「行ったわね・・・ロゼッタ」


キューポラからはもう、砂煙さえも観えなくなった。


「妹を頼んだわよルビナス・・・」


アリエッタ少尉は、森の端に停めた4号で呟いていた。


「奴等なら・・・帰って来るじゃろぅ」


ハスボック小隊長がアリエッタへ答える。


「若いのには不思議な異能ちからが備わっておる。

 二人共そう簡単には死にはせんよ。儂が保証する」


遥か彼方に想いを馳せ、アリエッタへ手向けた。


「ええ、私も。マーキュリアの魔法が護ってくれると信じます・・・」


それに・・・と、アリエッタが続ける。


「ルナナイトを守護する魔女も一緒ですからね」


ロゼッタにまだ宿ったままの魔女の魂が共に行くのだからと。

薄く笑うアリエッタを見上げて、狡猾な准尉がニヤリと笑って。


「逆に儂らの方が気を引き締めねば、ロッソアの弾にやられてしまうぞ?!」


戦争の中で、闘う者の命程脆いモノはないと言い聞かせた。


「勿論。ロゼッタになんて負けられないじゃないですか?」



二人は去って行った若者を想い、それから自分達を思った。


「ルビナス、ロゼッタ。

 あなた達が帰って来るまで、フェアリアは降伏なんてしないわ。

 私達、魔砲使いがある限り。

 この国はロッソアになんて負けはしないから」


アリエッタ少尉とハスボック小隊長は、遠くフェアリアから離れた大地に想いを馳せ続けた。



さぁ、これから始るのは戦いか?ハタマタ冒険か?


魔鋼の少年達は希望を見つけられるのでしょうか?


次編<ロッソア>!乞うご期待あれ!!


挿絵(By みてみん)


お読み下された皆様へ。


ありがとうございます。

未だラストは観えてきませんね・・・当たり前。


というのも、次回からは<ロッソア>へと舞台を移すのですよ。

ここから、本当の未開拓な物語に移るという訳です。


ロッソアがフェアリアと和平を結ぶことになる要因。

帝国が瓦解していく様を、どうやって書いていけるのか?

作者の力量を超えた物語になるかも・・・知れません。


次回<ロッソア>編より、毎日更新が出来なくなります。

誠に申し訳ございません。

連載は継続しますが、不定期更新と相成ります。


引き続いてのお付き合いを、何卒宜しくお願いします。


     2019年9月8日  さば・ノーブ 拝!

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