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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
第5章 鋼鉄の魔砲少女(パンツァー・マギカメタル)
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提案

ノエルの魂だけは取り戻せた。

だけど、ルビは妹を完全に取り戻そうと考えた。


そこにレオン少尉がとある提案を指し伸ばしてくる・・・

一旦森に姿を隠したアリエッタ少尉の4号だったが、偵察を兼ねて戻って来ていた。


「何を話しているのよ?!さっさと戻ってきたらどうなの?」


双眼鏡のレンズに映るのはルビとロゼ。

それに重戦車の搭乗員らしき女性士官、当然敵であるロッソア兵だ。


「間も無く私達も退きあげなくちゃならないのに・・・じれったいわね」


キューポラから監視を続けるアリエッタの眼には、敵戦車部隊の動向も入っていた。

主力であるKV-1隊はISが動きを停めてしまったので、その場から動けず。

また、重戦車を支援しているT-34中戦車隊も、それ以上の進撃を躊躇しているようだったが。


「少尉、ラポム中尉より引き返せとの命令が・・・」


ヘッドフォンからは何度目かの催促が届いていたが。


「判ってるわ!もう少しだけ待って!」


ルビとロゼを放置していく事は出来ず、アリエッタはイライラと見守るより仕方がなかった。


「もうっ、ルビナスもロゼも。こっちの身にもなりなさいよね!」


姉として。同じ魔砲の使い手として。

そして・・・


「あなた達を護るマーキュリアの名誉にかけて。

 私に流れるルナナイトの血に掛けて、指輪を持つルビナスを護るんだから」


妹に宿った、魔女ロゼからの依頼を果そうとした。






「君が?

 俺達に教えてくれるって?」


レオン少尉に訊いた俺に、魔女のロゼが手を添えると。


「ロッソアのどこに、あなたの言った研究所があるの?」


妹の身体が保管された場所を訊ねる。


「一口では言い難い。

 ウラールの山々に囲まれた所・・・とでも言おうか。

 はっきりした場所は示せないし、名称も無い。

 唯、はっきりしているのは軍事工場が隣接された場所。

 戦車を開発製造出来る施設に隣した所だ」


レオン少尉は腕を組んで思い出そうとしてくれている。


「だから君達が、もしもそこまで行くというのなら道案内ぐらいは出来ると思う」


妹の身体を取り戻す事が出来るのか?

もし辿り着けても敵のど真ん中なんだぜ?

どうやってそこまで辿り着けれるんだ?


レオン少尉の提案はありがたいし嬉しいのだが。


「現実には辿り着けても取り戻せる保証がない・・・そう考えるんだろ?

 当たり前の事だが・・・その当たり前を捨ててみたらどうなんだ?

 ロッソア軍の中に紛れ込んだら・・・どうなる?」


レオン少尉の言った意味が、直ぐには理解出来なかった。


「それって?

 ルビをロッソアの捕虜にするってこと?」


魔女のロゼが、眉を顰めて訊いた。


「いやいや。捕虜にすれば唯じゃー済まない。下手をすればその場で銃殺だよ」


戦場で・・・最前線で。捕まえられた兵は後送されるのは及ばず、その場で射殺されることが多かった。

後送するにも兵を割かねばならなかったから、

戦闘中ならそのような無駄な労力を払うのを嫌っても仕方が無いとも言えたが。


「銃殺ね・・・ロッソアらしいわ。

 では、どうやって紛れ込むというの?」


捕虜ではないとすれば?・・・魔女はレオン少尉がどう言うのかを待った。


「意外と簡単な事さ。

 このISイシュフスターリンを修理して乗って戻れば済むだけだよ」


炎上し、キャタピラを切られた状態から?

この最前線で直せというのか・・・無理だろう?


突然の事に、俺は言葉に詰まってレオンを見詰める。


「直すのが無理なら、もう一つ別の方法があるぞ。

 君達の車両を貰えば良いんだ、動かせられれば少々壊れていたって構わない。

 それに私と伴に乗って、ロッソア軍に入れば良いんだよ」


「はぁ?!そんな事が認められるわけが・・・・」


「待って!落ち着きなさいよルビ!」


挿絵(By みてみん)


堪りかねて俺が言い返したが、魔女ロゼが途中で停めたんだ。


「なんだよ、ロゼさん。いくらなんでも無茶過ぎるよ?!」


停められた訳も聴かず、無茶振りを咎めたのだが。


「いいことルビ。このレオン少尉の勧めてくれたのには訳がある。

 ・・・・そうでしょ?レオン少尉」


魔女ロゼの言葉にゆっくりと頷いたレオンが。


「あなたの言う通り。

 紛れ込むだけでは救出に向かう事さえ無理。

 だけど、サハテ中尉と連絡を執れれば。

 研究所へ向かう事も出来る筈だし、研究所自体を破壊する事も可能に思える。

 つまり・・・内部からの攻撃を敢行できるかもしれないの」


驚いた事に、レオン少尉はロッソア軍に反旗を翻そうと試みているのだ。


「そうすれば、君の妹さんも救えるかもしれない確率が増えるでしょ?

 私も魔鋼の使い手を仲間に出来るのなら心強い。

 サハテ中尉なら話せば解ってくれる・・・だって。

 だってノエルを研究所に連れて来たのは、サハテ中尉その人なのだから」


レオン少尉は、反逆を企てるという。

自分の国の軍隊に逆らい、研究所を襲うと言うのだ。


「レオン少尉、あなたが言ってるのは反逆じゃないのですか?

 どうしてそんなことまでして?」


妹を救うだけじゃないとは思うのだが、訳を知りたいと思うのは当然だろう?

なぜ反逆を企てるのか・・・それが知りたいと思うのは俺だけじゃなかった。


「あなたは御国を裏切るというのですね?

 その訳は・・・あなたが衛星国出身だからじゃないのですか?」


魔女ロゼは喝破していたようだ。

レオン少尉がロッソア人ではないと観ていたようで。


「祖国を呑まれたから?いやいや戦争に担ぎ出されたから?

 帝国の搾取に抵抗したいから?・・・いいえ。

 あなた達が本当に望むのは、戦争を始めた皇帝を打ち破りたいから?」


魔女のロゼがレオンの栗毛を観て訊く。


「そのどれもだ。あなたの言った全てだよ。

 私達衛星国民は皆が皆、いつの日にかは平和を勝ち取りたいと思っている」


レオン少尉は俺達にそう言ったんだ。


「平和・・・ね。

 それが訪れるには、反旗を掲げて闘わねばならない。

 皇帝を倒すには並々ならぬ覚悟が必要なのに・・・やり遂げられるかしら?」


魔女ロゼは瞳を細めて訊き返す。


「やり遂げないと・・・このままでは皆が飢え、皆が苦しむ。

 今のままではロッソアという帝国に支配され続けるだけだ。

 帝国の中にも、皇帝に従わない勢力が生まれている。

 それはいつの日か実を結ぶだろうが、それまで待ってはいられない。

 私と兄はそう感じ、仲間を募っていたんだ」


真摯に答えたレオンの眼は、魔女のロゼに訴えかけた。


「だから、フェアリアの民だろうと魔鋼の力を持つ人に頼りたい。

 どうか仲間となって、皇帝打倒に力を貸して欲しいのだ」


「なるほど・・・レオン少尉達の仲間になれと。

 帝国軍と戦う代わりにノエルちゃんを救出する手助けをすると・・・そう言う取引って訳ね」


魔女のロゼが考え込んでから俺を観る。

妹を救出するには、此処に居る仲間を見捨てる事になるんだぞって教えているのだ。


「ノエル・・・暫くの辛抱だからな」


だけど、俺には方法が無かったんだ。

レオン少尉の求める方法くらいしか、妹を救える道が分らなかったんだ。


「レオン少尉、妹を救った後だけど。

 そこから先は俺と妹を解放してくれないか?

 いつまでも闘わなきゃならないのなら、ノエルだって戦闘に巻き込む惧れがあるから。

 ノエルだけは人を殺めるような真似だけはさせたくないから」


断りを入れる俺に、レオン少尉は快諾した。


「当然だ。

 そこまで行けたのなら、君は十分に役目を果たせた事になる。

 研究所を破壊、若しくは占拠できたのなら。

 もうロッソアに新兵器は誕生させれなくなるのだからな」


レオン少尉が快諾する中で、気になる一言があった。


「新兵器?!魔鋼の戦車では無いのか?」


「違う。全く別の次元の物らしい・・・良くは知らないが」


即座に応えたレオンに、魔女のロゼの眼が光る。


「そう・・・ロッソアの新兵器が開発されようとしているのなら。

 フェアリアにとっても見過ごせないわね・・・どうかしらルビ。

 あなたならどうしたい?あなたの指輪は何を望むかしら?」


俺にというより、ノエルに質したと言っても良いだろう。

時の指輪に宿るようになったノエルが俺に望むのは?


「「アタシ・・・身体を取り戻さなくても良い・・・

  そう思ってた・・・今迄は。

  でも、レオン少尉さんの話を聞いていて思ったの。

  誰だって平和に生きていたい、

  それなのに無理やり生きる権利を奪うような政府があってはいけないと思うの。

  だから・・・ルビ兄が行くというのなら。

  アタシも手伝いたい・・・指輪の中からだけど」」


決まった。


俺はとうに望んでいた。

ノエルを取り戻すって・・・決めていたから。


「ノエル・・・俺はお前の身体をきっと取り返す。

 だからその時まで。待っていてくれ、必ず約束は守るから」


レオン少尉に振り返った俺は、魔女のロゼにも言い切った。


「魔女のロゼさん、相棒のロゼには教えないでくれ。

 俺とレオン少尉だけでノエルの元に行くから」


独りだけで行くつもりだった。

だって軍隊から姿を消すって事は、脱走したに等しいんだから。

敵前逃亡罪なんだから、戻ってきたら死刑になるだろうから。


「あら・・・残念。

 ルビの頼みでもそれだけは聞けない・・・って、喚いてるわよ?!」


「なっ?!ロゼっ、お前聞いてるのか?!」


ニヤリと俺を観るロゼ・・・は、相棒のツン娘。


「ふっ?!唯でさえややこしい妹が現れたのに。

 ほったらかしに出来る訳がないじゃない!」


「げっ?!起きてたのかよロゼ?」


上から目線でロゼは観下げて来る。


「「ルビにぃ・・・・怖いよこの人」」


ノエルも感じているのだろう、ツン娘の本性を。


「アンタが何処に行こうと、このロゼッタ様からは逃げれないのよ!

 御主人様のアタシから逃げるなんて1000億年早いわ!」


おーっほっほっと、馬鹿笑いするロゼ。

ノエルもレオン少尉も呆れるばかり。


嘆いているのは俺だけか?!


渉りに船か?

はたまた・・・悪魔の誘いか?


損な娘達と集うルビナスは・・・やはり損な子だった!(断言)


次回 困った娘?!

抉らせるのはやめて欲しいのだが?ロゼッタさんよ?

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