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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
第5章 鋼鉄の魔砲少女(パンツァー・マギカメタル)
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指輪に宿る娘

ルビナスの妹ノエル。


指輪に宿る妹の声は兄には届かないのか?

騎士ファサウェーの魂が天に召されたからなのか。

宿りし魂が身体から消えたからなのかは分からないが。


なぜだか分からないが、ノエルの声が聞こえた気がしたんだ。

呼びかけて来る妹の声が、俺には聞こえる気がするんだ。


それも近くで。俺に寄り添う位、近くに感じてしまう。


相棒のロゼに宿った魔女は二人を送ってもまだ宿ったままなんだろうか?

彼女なら俺の感じている妹の声が聞こえているかもしれない。


「なぁ、ロゼ?ついさっきから、ノエルの声が聞こえて来るみたいなんだけど。

 妹はどこに居るのか分からないか?」


宿られたままのロゼに訊ねてみると。


「え?!ルビには観えないんだ?聞こえるだけなの?」


「はぁ?!何が?ノエルの声がどこかから聞こえた気がしたのは確かだけど?」


魔女ロゼは俺と指輪を交互に見てから。


「そういえば。ルビはファサウェー様の姿も観ていなかった・・・のよね?」


「そうだけど?それがどうかしたのか?」


宿られていたけど、顔や姿は記憶を見せられた時にしか観た事が無かった。

いいや、見せて来なかったと思ってたんだが。


「念の為に訊くけど、ルビは私の姿も観えていないんだよね?」


「観える訳がないじゃないか、魂の姿なんて」


幽霊を観れるのは霊媒師くらいなもんだろ?

俺には霊感なんて備わっちゃいないんだぜ?


「だって。残念だったわね妹ちゃん?」


指輪を観て、魔女のロゼが苦笑いを向けて来る。


「えっ?!ノエルが?指輪に宿ったのか?まさか・・・」


咄嗟に察した俺が、指輪に叫ぶ。


「ノエル?この中にノエルが入った?騎士の代わりに?」


もし、ノエルが指輪に宿ったのなら・・・


「ノエルは死んじまってるのか?魂だけになってしまったのか?」


最悪だと思ったんだ。

生きてくれているものとばかり、思い込んでいただけに。


「そうよねぇ、妹ちゃんが指輪に宿れるのは魂だけになっちゃってるから。

 そこのロッソア兵レオン少尉さんに訳を訊いてみればどうかしら?」


魔女が訳ありに、勧めて来る。


「どうやら、妹ちゃんにも良くは分っていないみたいだから」


魔女は微笑んで勧めて来る。

その顔には悲壮感も無く、ノエルの代弁をしているだけに観えた。


「魔女のロゼさんにはノエルが観えるのか?話せるんだな?

 だったら訊いてくれよ、死んではいないのかと。

 死んでいないのならどこに身体は有るのかと!」


レオン少尉に訊くより、直接聞いた方が良いと思ったんだ。


「ルビナスって言ったよな君。

 私に宿った魔女と少女は、ロッソアの研究所で知り合ったんだ。

 死にかけていた私の身体を魔法で治し、復讐の為に同化したのさ。

 もし、今も身体が置かれているのなら、あの研究所の中だと思う」


話してくれたのはロゼの言った通り、レオン少尉だった。


「ほら、ルビ。彼女の方が詳しいのよ。

 妹ちゃんはオーリエ姉様に宿られて、人事不詳状態だったみたいよ?」


肩を竦めて魔女のロゼが、指輪に居る妹にも知らせる。


「騎士ファサウェー様のお力もあって、今はノエルちゃんが宿れたみたい。

 魔法の指輪に宿って、ルビの傍に居続けられるようになったのよね?」


魔女のロゼが、姿の見えない妹に話している。


「あら?私は誰だって?

 あなたの遠い縁故の者よ?この娘もそうだけど、ノエルちゃんの遠縁にあたる者。

 まぁ、そんな訳だからそんな目で観ないでよ?」


魔女が指輪に宿ったノエルを宥めているようだが。


「ちょっとルビ。

 なんだか知らないけどノエルちゃんって・・・超ブラコンなの?!

 やたらと突っかかって来るんだけど?」


「は?!良く解らないんですが、仰る意味が?」


魔女のロゼがジト目で指輪を観る。

意味が分からないが、どうやらノエルは魔女にツンツンしているようだが?


「あーっ、うるさいわね!私はルビの恋人でも何でもないの!

 どうしたらそんな考えに辿り着くのよ!

 私は宿っているだけで、この娘がどうルビを想っているか何て承知してないわ!」


どうやら・・・痴話喧嘩しているな・・・うん。


「しつこいわね!なんなら指輪から摘まみだしてあげましょうか?!

 こう見えても魔女なんだから!魔法力は魂になっても使えるんだからね!」


辞めてくれよ・・・妹なんだから大目に見てくれよロゼ?


頭の中で魔女ロゼと妹ノエルが口喧嘩している図を想像しちまう。


挿絵(By みてみん)


「ええいっ!その減らず口をルビにも聞かせてあげるわ!

 この小娘がぁ!まさにオーリエ姉様の子孫ね!思い込んだらキリがないんだから!」


魔女ロゼが・・・といいますか。

相棒ロゼの姿のまま、俺の指輪をちょんと抓むと。


「さぁ!兄にも聴いて貰えば良いでしょ!

 ノエルの想いを、兄に何を捧げると言い切ったかを!」


蒼く輝く光の粒を指輪から摘まみだした。


「「わぁんっ!このおばさん狂暴だよぉ!」」


・・・・え?!ノエル?


魂に直接声が聞こえた。

騎士ファサウェーの時と同じように・・・


「ノエル?聞こえるか、ノエル?俺だよ・・・ルビナスだ」


「「えっ?!お兄ちゃん?声が届いてるの?マジで?」」


・・・間違いない。俺のノエルだ、これは。


「ノエル?!指輪に居るんだな?」


「「指輪かどうかは知らないけど。光の中に居るんだよ?

  ルビにいの傍に居るのは判るの・・・だって温かいモン」」


暫くぶりに訊いた妹の声に、俺は指輪を抱きこんだ。


「死んだんじゃないんだな?身体はどこかで生きているんだな?」


「「それがぁ、どうなのか。アタシにも分らないんだよぉ?!」」


困った事に、妹は自分がどうなったのかが分らないという。

でも、レオン少尉が教えてくれた事が間違いないのなら・・・


「いいかノエル。

 まだ諦めちゃ駄目なんだぞ、俺が必ず元に戻してやるから!」


「「うん・・・ルビ兄がそういうのなら。諦めない」」


思いっきり抱きしめてやりたかった。

たった独りで苦しんだであろうノエルを。


「大丈夫・・・大丈夫だからな」


巧く言葉が見つからない。

つくづく俺は、ボキャブラリーの無さに嫌気が差した。


「「ルビ兄と一緒なら・・・我慢するし、悲しくないし、温かいから」」


妹の声に涙が湧いてしまう。


「ああ、一緒だ。身体を取り戻してやるまで・・・一緒だよ」


「「うん・・・」」


ノエルもきっと俺に包まれているだろう・・・と、思っている。


「「でも、ルビ兄。この魔女も一緒なの?

  なんだか知らないけど、ルビ兄の事を好いているんだけど?」」


・・・言い切りやがった。


「「だってぇ、魔女の入れ物の彼女。かなりのツンデレじゃない?

  普段はルビ兄のことを足蹴にしときながら。

  心の底では・・・恥ずかしい事を期待してるんだよ?」」


・・・待て。それ以上言っては駄目だ。


「「もしかして?!ルビ兄も・・・Mマゾだったの??」」


違うわ!!


「ノエル・・・お前ってこうだったっけ?」


ズバズバ人に向けて雑言を放つタイプだったか?


「「あはは・・・魂は隠し事が出来ないみたい・・・ポ」」


恥ずかしがるだけ、まだどこかの誰かよりはマシか。


「「でしょー?そこの魔女よりアタシの方が良いよね?」」


「どういう意味合いでだ?

 まぁ、元気そうで良かったよノエルが」


ため息が出ちまうくらい、妹は喜んでいる様だった。


「済まないねロゼさん、ワザと話せるように魔法を掛けてくれたんだろ?」


「ふっふふっ、やはりお兄さんね。話が早いわ、その通り。

 だって、あのままじゃ何時まで経ってもノエルちゃんはルビに話す事も出来なかったから」


微笑む魔女のロゼに感謝し、指輪ノエルにも教えたのだが。


「私も随分辛かったのよ、ロゼに宿るようになっても、誰とも喋れなかったから」


「え?ロゼには話しかけていなかったのですか?」


魔女のロゼの言葉で思い出した。

相棒のロゼが宿られているのに気が付いたのは、ついこの前の話だったから。

俺が騎士と話していた時、魔女がやっと現れたのを思い出した。


「そういえば。ロゼも宿られているのを知らなかったみたいだった。

 どうして突然話せるようになったのですか?」


訊いてみた俺を指して、魔女のロゼが笑うと。


「君の指輪をこの子が借りたでしょ?

 あれは私が借りたのよ?この子には黙っていたけど、そうなるように仕向けたの。

 あれ以来、魂をこの世界に現わせられるようになった・・・だから。

 全ては君の力の所為なの・・・責任・・・取ってよね?」


魔女のロゼが意味有り気に流し目を送って来た。


「「ルビ兄!こんな魔女の言う事を訊いちゃ駄目だよ!ルビ兄にはノエルが居るんだから!」」


はぁ・・・・

二人の魂に悩まされ続けるのか・・・俺。

女難の相って奴が、表れていたのかなぁ・・・




「ま、この位で良いでしょう?

 ここから離れましょう、皆が待ってるし。

 それにここは戦場のど真ん中でしょ?」


魔女のロゼがそう言いつつも、傍らのレオン少尉を観る。


捕虜を摂るつもりは毛頭ない。

ロッソアの少女士官を連れて行くなんて思っちゃいない。


「レオン少尉、ここでお別れしましょう。

 復讐を辞めにされたのなら、俺も止めます。

 お互いに不幸な事件を心に秘めて、生きていきましょう」


俺と彼女は同じ様なものだと思うから。

レオン少尉は兄を、俺は両親を<戦争>に奪われたのだ。

仇なんかじゃ無く、戦争という惨禍に奪われたのだと言いたかった。


「ああ、そう願いたいな。

 でも、君に話したい事がまだあるんだよ。

 ルビナス・ルナナイト・・・月夜の狼。

 君は妹さんを救い出したいんだろ?」


レオン少尉の言葉に振り返った。

紅い瞳ではなくなった、元ロッソアの戦車兵に。

 

挿絵(By みてみん)


ノエル・・・そして魔女ロゼ。

彼女たちと歩むのが時の指輪を持つ者の務めなのか?


ロッソアの少女が告げるのは、彼の国に起きている悲劇。

そしてノエルの身体がソコにある事も・・・


次回 提案

君は決めていた。どれ程苦難が待ち受けていようと救いに行くのだと!

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