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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
第5章 鋼鉄の魔砲少女(パンツァー・マギカメタル)
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因縁

姉の前に現れたのは妹。

魔女オーリエは妹ロゼと対面する・・・

闇へと魂を貶めた魔女へ。

悪魔に魂を差し出してでも復讐を誓った者へと。


自らを闇に染め蘇りし魔女に、時の指輪を突き付けた。


「これから話すのは俺じゃない。

 アンタの子孫であるルビナス・ルナナイトではなく。

 ファサウェー・ルナナイトの言葉なんだって分って貰いたいんだ」


宿る騎士が現れる前、俺は魔女に語り掛ける。

指輪を指し出し、なぜ俺の指に填められているのかを名を以って教える為に。


「お前が・・・私達の子孫だと?

 指輪の異能ちからを使える者だというのか?」


差し出された手を取り、レオンに宿るオーリエが蒼き指輪へと訪ねた。

その瞬間、俺の意識が薄れだす。

魔女の声が指輪に届いたのだ、宿る騎士にも。


「「オーリエ、なぜロゼを信じ切れなかった?

  私が最期に言った言葉を信じなかったのだ?

  どうして妹を恨んだりしているのだ?」」


「あなた・・・あなたなのですねファサウェー」


レオンの声が指輪に宿った騎士へと返される。


「「此処に居るルビナスを観ても、そなたが宿ったルビナスの妹にも。

  我等の血が流れておるのに気が付いていた筈だ。

  なぜ未だに解ろうとしない?なぜ復讐から抜け出ようとしないのだ?」」


騎士の魂は妻たる魔女へ詰問する。

悲し気に、辛そうに・・・問いかけるのだった。


「「兄妹が我等の血を引き継いでいるのは、ロゼが我が子を殺さなかった証拠ではないか。

  この指輪を填めているのがまたとない証拠ではないか。

  なぜ未だに闇から抜け出ぬ?なぜロゼを赦さぬのだ?」」


「でも、フェアリア王に私達を売ったのですよ妹ロゼは。

 あの時観たマリキアの服は本物。ロゼがマリキアを指し出したに違いないわ!

 その後マリキアが生き残れたかもしれないけど、ロゼが約束を破ったのは間違いない!」


ファサウェーの諫めも聴かず、オーリエは自分の思い込みに支配されている。


「「頑なに真実を受け入れようとせぬのは、心が闇に堕ちている証だとなぜ気付かぬ。

  私の言葉を聞き遂げないのは、悪魔に捕らえられている証。

  信じられぬのなら、当人からの釈明を聞けば良かろう・・・」」


拒み続けるオーリエに、騎士の言葉が突き立った。


「当人?!ロゼが此処に居るのですか?

 私達を裏切った者が居るのなら・・・この手で恨みを晴らしてやるだけ」


悪意に満ちた言葉を吐く、邪なる魂。

復讐を果した目に蘇った魂が、仇を求めて指輪を観た。


「「それ程までに恨みを募らせたか。

  ならば、そなたには聞こえなくて当然だ。

  ずっと呼びかけておる妹の声が聞こえないのは、

  そなたが闇の化身となっているからだと、心しておくが良い」」


騎士は月夜の魔女へ突き放つ。


「「闇の魔女よ、そなたには聖なる光が残されてはおらぬのか?

  少しでも良心が残されておるのなら、妹の声が聞ける筈だ。

  妹の声が届かぬというのなら、最早そなたは私の妻でもマリキアの母でもない。

  悪魔と堕ちた者として、聖なる光に討ち滅ばされるが良い」」


「ファサウェー・・・そうまで言い切れるの?私を悪魔に貶めたいの?

 私はあなたと娘を奪い去った者が憎いだけ、呪っているだけなのに」


騎士の魂に突き離された魔女は、動転し心を乱した。


「「悪魔に堕ちていないのなら、妹の声が届く筈だ。心して聞くが良い」」


騎士はルビナスの身体を使って、ロゼを手招きした。


「ルビ?・・・・そうね、宿った魔女を呼んでるんだね?」


ルビじゃない人になっている気がする。

ルビに宿る者がロッソア兵と交わす言葉は、ロゼッタには聞こえていなかったが。


「どうやら・・・アタシも。

 宿った魔女が現れたがってる・・・から・・・」


ロゼッタは魔女に身体を明け渡した。

宿る魔女がルビとロッソア兵へと近寄り、胸に下げていた家宝のネックレスを指し出した。


蒼き光る魔法石はルビの指輪と重なり、レオンの手に触れた。


魔法に因ってルビナスとロゼッタ、そしてレオンの姿が蒼き光に包まれる。

そう、彼等の魂はあるべき空間で集うのだった。









白い空間。

死者の居るべき場所・・・魂だけが存在を許される場所。


そこには当時の姿のまま、3つの魂が佇んでいる。


「オーリエ姉様・・・」


「ロゼ・・・」


金髪のロゼが深く頭を下げるのとは対照的に、赤毛のオーリエは睨みつけていた。


「どうして?私達を裏切り、マリキアを売った?

 なぜルナナイトを滅びに導いた?我等をフェアリアに売ったのだ?」


恨みで瞳を紅く染めた姉の言葉に、妹は唇を噛み締めて耐えている。


「ロゼよ、お前に因って我等は屈辱の内に死んだのだ。

 裏切られ、下衆な者達の手に掛かって死を迎えたのだぞ?!

 それがどれほど悔しい事か、お前には判るまい?」


「姉様の仰られる通りです。私はとんでもない思い上がりをしておりました」


姉に対し、自分の行いを詫びるロゼだったが。


「ですが姉様。私はマリキア様をお救いせねばならなかった。

 どんな手を使っても、約束を果さねばならなかったのです。それだけは信じて」


釈明を始める前に、謝罪の言葉を口にするロゼ。

だが、闇に心を奪われた姉は、聞く耳を持たなかった。


「信じろですって?!

 マリキアをフェアリアに売っておいて、よくもまぁそんな戯言を言えるわねロゼ?!」


姉の理不尽な一言に、ロゼはまた唇を噛み締める。


「マリキアは王に差し出さなかったの。

 替え玉を使って・・・見ず知らずの子の遺体を使ったのよ。

 私は約束を遂げる為には見境も無く罪を犯したわ。

 そのことで咎められるのなら、罰だって受けるし謝罪もするわ。

 だけど、これだけは信じて。

 私には姉様やファサウェー様を裏切る気持ちなんて、これっぽっちも無かった事だけは」


「替え玉・・・ですって?!

 では、フェアリア王に差し出したのはマリキアでは無かったと?」


魔女の眼が見開かれる。

信じることはまだ出来ないが、妹の声は嘘を告げてはなさそうに思えていた。


「そう。

 あのを王に突き出すなんて出来ないから。

 マリキアを殺したことにして・・・罪深い私は王を騙す事にしたの。

 見ず知らずの子には申し訳なかった・・・けど。

 ああするよりマリキア様をお匿い出来なかったから・・・」


「あの子を匿う為に?!ロゼは死者を冒涜したというの?」


姉の言葉に、ロゼは頷くよりなかった。

あの時、自分がどんな気持ちで王に対したのかは口に出さずに。


「では、なぜマリキアを匿った事を知らせなかった?

 フェアリア王により私達が亡き者になった後でさえ、報告に現れてくれなかった?

 せめて墓前にマリキアの無事を報じてはくれなかったの?」


そうしてくれれば、呪いも解けたかもしれないというのに・・・

姉は妹が死後にさえも現れなかったのを問い質す。


「出来なかったのです。

 マリキア様をルナナイトの地にお連れする事は、叶わなかったのです。

 フェアリア王に私まで狙われてしまい、国外に逃亡していたから。

 マリキア様を養う事だけで精一杯だったのです・・・申し訳ございませんでした」


心からの謝罪を告げるロゼだったが、オーリエは再び怒りを募らせる。


「言い逃れよロゼ!

 マリキアを育てる傍ら、使者を用立てることくらいは出来た筈。

 それさえもしなかったのは私達を軽んじ、マリキアを独占したいが為ではないの?

 自分の子としてマリキアを育て、時の指輪を我が物とせんが為ではないのか?」


マリキアに与えた魔法の指輪を、いずれは自分の物としようと画策したのではと疑う。


「どうお考えになられても、私にはお返しする言葉も見つかりません。

 疑われているのなら、どう言い募っても信じては貰えないと思うから・・・」


「当たり前よ。誰が聞き遂げられるモノか。

 本当に私達の事を想うのなら、フェアリアに反旗を上げるのが当然。

 お前は元々フェアリアの魔女として仕えていた。

 フェアリアから訴追されていたなど、信じられるモノか!」


徐々に月夜の魔女は瞳を闇に堕とし始める。

妹の釈明を信じず、己が勝手な思い込みで睨みつけた。


「もはやそなたの言い訳などに耳を貸す必要もない。

 やはりロゼは、私からマリキアを奪ったのだと分った。

 いくら娘を助けるためとはいえ、私に返そうとはしなかったのだから!」


「違うわ姉様!私はマリキアを連れて行きたかった。

 あの子の生まれ故郷へ、ルナナイトの領地に・・両親が居る場所にまで。

 だけど、適わなかったのよ戦争が起きたから。

 ロッソアが攻め寄せた危険な場所へは行けなかったの」


国境の町となったルナナイトの領地には、度々ロッソアが攻め込んだ。

その度に領地は荒れ、その都度悲劇は繰り返された。

今も・・・この時代であっても。


「うるさいっ!もはや聞く耳など持たぬ。

 私の可愛い我が子を奪い去った者に、許しなど与えぬ。

 お前を滅ぼし、我が子を取り戻してやるだけだ!

 それが積年の恨み。それこそが私の存在意義なのだ!」


オーリエの周りに闇が集い始める。

一度闇に堕ちた魂は、悪魔に因って支配されているのか。

黒い霧がオーリエから溢れ、ロゼに矛先を向ける。


「では、姉様はどうすれば闇から解き放てるのです?

 悪魔の力を振り解くには、何が必要だというのですか?」


「知れたこと!

 お前に魂とマリキアの魂。二人の魂を手にした時こそ、我が呪いは解けるのだ!」


オーリエは月夜の魔女となり、妹の魂を欲した。

聖なる者を欲する悪魔の様に、聖なる者を穢さんとする悪魔の如く。


「我が呪い、我が恨みに魂を捧げるが良い。

 そうすれば我が魂も地獄に堕ちよう。

 地獄の中で悪魔と踊り祝杯を掲げ、果たされた復讐に歓喜の時を迎えよう」

 

「・・・駄目。姉様を地獄へなんて送りはしないから。

 姉様をお救いするのは私の粛罪なのですから」


項垂れたロゼが、魔法石を握り締める。


光に満ちていた空間が、闇の霧に支配されようとする時。

マーキュリアの家宝である魔法石を握り締め、妹ロゼの魔法が放たれる。


「姉様はこの子と共に召されるべきです。

 地獄へなんか行かせたりしない・・・ファサウェー様との約束を告げねばならない。

 マリキアとの約束を果してあげねばならないの・・・私がどうなろうと」


握り締めた手を姉に突き出す。


開かれていく手のひらに載っているのは、魔法石に宿った娘。

金色の光の中、魔法石は姿を替える。


「姉様!あなたに逢って頂かねばならないのはこの

 誰よりも逢いたいと願っていた、あなたの娘!

 マリキア・ルナナイトなのっ!」


挿絵(By みてみん)


光の中に娘が居た。

金色の光に包まれた娘の魂が、本当の母に出逢えた・・・

開かれた魔法は、魔女の前に誰を呼ぶのか?

呼び出されし魂は、呪われた魔女に何を教えるのか?


その時、騎士と魔女の魂は?!


次回 希望の絆

君は払拭された疑いと共に消え去る身。恨みを解いた魂はどこへ向かうと言うのか?

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