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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
第1章 月夜(ルナティックナイト)に吠えるは紅き瞳(ルビーアイ)
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俺達は戦車猟兵(パンツァーイェーガー)

生き残った俺へ、意外な命令が下されたんだ。

転勤・・・そして。


俺の前に彼女が居るんだ・・・

俺とロゼの二人に告げられたのは、戦車猟兵として特別扱いされるという話だった。


たった一度の会戦で生き残れたことが、司令部には特別な事と映ったのか?

いや、そうじゃないんだ。

元々ロゼは特殊な扱いを受けるべく戦車兵に抜擢されたのだから。


その訳は後方に退き下がった部隊の中で解ったんだ・・・


俺とロゼはあの悲惨極まる戦場から生きて戻れた。

報告を受けた金ベタ佐官は、俺を直ちに配置換えしやがった。

それはそうだろう、部隊は俺を残して壊滅したんだから。


師団の中で機動連隊が消え、俺は師団に属していた戦車猟兵部隊に編入させられた。

同じ戦車猟兵でも、連隊の中と師団直属では話が違ったのを教えられたのは、

俺が新しい部隊に来た時に解ったんだ。


「ルビ、こっちに来て!」


ロゼが俺に紹介したのは。


「これがアタシに与えられた車両だって!」


目の前にキャタピラを備えた車両があった。

だけど、どう見ても強そうには見えない。

大きさも僅か3メートルあるか無しかの軽戦車並み。

いや、それ以下か。


キャタピラが付いているから戦車なのだろうが・・・


「ロゼ?こいつはまともに闘えるのかよ?」


思わず聞き返したんだが、ロゼは俺に言い切りやがった。


「当たり前よ!相手が重戦車じゃなかったら撃破出来るし!」


短い砲身が突き出ている、全周囲を軽装甲で固めたオープントップの防盾。

車体は軽戦車から応用したのか、短く幅が狭い。


「元は偵察用に開発されてい車体らしいけど。

 アタシ達戦車猟兵には、元々機動戦なんてものには縁が無いからね」


軽く言ってくれる。

じゃあどうやって敵戦車と闘うんだ?


「あ、ルビ。これでどう闘えば良いか考えたでしょ?

 アタシ達は猟兵でしょ?猟はどうやってやるのか知ってるの?」


「そんなの決まってる。待ち構えるだけだろ?」


大概のハンティングは、物陰に潜んで獲物が来るのを待つ。

当たり前の事をロゼは訊いてきた。


「そう!待ち伏せよ待ち伏せ!

 この砲はね、75ミリあるんだよ。大概の戦車になら効き目があるんだから!」


それは分かるけど。

戦車で待ち構えるのか?


「ルビは戦車兵じゃないから知らないと思うけど。

 戦車にだって種別があるのよ、得意分野ってものがね」


ルビは車体に登って俺を招く。


砲盾後部には、観音開きになるハッチがあった。

両側にロゼが開いて中に入ると。


「小さい車体に強力な砲を持たせる。

 相手が気付かない内に側面を狙って撃つの。

 それで大概の敵は撃破出来ると考えられてるわ!」


操縦教本にそう書かれてあるのか?

俺は割り切れない思いを抱きながらロゼと車内に入る。


一言で言えば。


「狭いな。まるで家畜小屋みたいだ」


「・・・入った事があるの?ルビは」


悪態を告げる俺に、ロゼは言い返して。


「この狭さが逆に強さの秘訣なのよ。

 小さいって事は敵弾を受けにくい事の裏返しなのよ。

 防御力が皆無に等しいんだから、小さいってことが武器にもなるの!」


「へぇ・・・そんなもんですかね?」


俺には良く解らない事をロゼは教えて来る。


筒抜けになった操縦席が左前方に備えられている。

俺と二人だけの気安さか、ロゼがニヤリと笑って。


「そうそう。ルビはトラクターとかを運転した事はない?

 田舎出身とか聞いたけど、農村生まれじゃなかったっけ?」


ロゼがとんでもない誤解を俺に言った。


「あんなぁ、俺は農村生まれでも農家出身者でもないから。

 トラクターなんて動かした事なんかないぜ?」


「あ、あらそう?おっかしいなぁー、特殊車両の運転が出来るって考課表に書いてあったのに?」


ロゼが言い難そうに答えたのを俺は聞き逃さなかった。


「おいっロゼ!俺の考課表を士官でもないお前がどうして観れるんだよ?!」


考課表とは、軍隊の経歴表みたいなもんだ。

どこ出身か、どんな特技を持っているのかとか・・・


「あははっ、どうしてって言われても。

 アタシ達はペアになるんだから・・・部隊長に内緒で・・・」


・・・どれだけルーズな部隊なんだここは?


苦笑いを浮かべるロゼに、応えてやった。


「トラクターは運転した事が無いけど。貨物運搬の軌道車なら転がしてたぜ?」


そうさ、俺の親爺は運送屋だったんだから。

雪のフェアリアじゃぁ、冬ともなればタイヤなんて意味がなくなるからな。


「積雪期間だけだけど。軌道車で木材なんかの重量物を運んでたんだぜ?」


これは親爺が・・・だけどな。


「ホント?!じゃあ、これも運転出来るよね?!」


とびっきりの笑顔になったロゼが指し示しやがった。

運転席を、戦車の運転を俺にしろと言いやがったんだぜ?


「待てよ?そもそも俺がどうして戦車に乗らなきゃいけないんだ?

 俺は一般兵科出身だぜ?特殊訓練は受けたけど、歩兵に戦車に乗れと?」


「うん!そーだよルビ。アタシだって本来戦車乗りなのに砲戦車に乗るんだから。

 お互い本意じゃないモノに乗らされるんだよ・・・命令で!」


伝家の宝刀を斬られちまった。

鶴の一声を掛けられちまった。


「ほらほら、諦めちゃいなよルビ。

 砲戦車乗りと言っても、戦車猟兵には変わんないんだからさ!」


まぁ、言われてみればその通りかもしれない。

敵戦車を狩るのには変わりがないのだから。


「しょうがねぇなぁ。運転すりゃいいんだな?」


納得はいきかねるが、こうまで言われたら乗るしかないと思った。

ロゼ曰く、<命令>なのだそうだから。


操縦席に腰を下ろすのも大変だった。

狭い砲手席を潜り、座席に座ると。


「狭い・・・身体が動かせねぇ・・・」


言っておくが、俺の身体はでかい方じゃない。

やせぎすって程じゃないが、太ってはいない。

身長だって180センチないし、大柄ではない筈だ。


その俺が身体を縮めるように座りイグニッションを確認する。


どうやら、こいつは雪上車よりも運転が単純らしい。

アクセルとブレーキ。それとクラッチペダルが配列されている。

狭い座席の両側に伸びているのが、走行装置。右と左に一本あるハンドルを前後に動かす事で向きを変える。


軽車両だから操縦装置も簡略されているのか。


操縦席の前には覗き穴が横広に開けられ、そこを通して視界を確保するようだ。


「どう?ルビ。何とかなりそう?」


馬鹿にするなよロゼ。

こんな簡単な操縦装置だったら、3日もあれば習得できるぜ?


俺は運転する事の難しさも判らず簡単に思っていた。


「そっか、良かったわ。ルビに運転を任せるから、しっかり習得してね?」


運転だけなら任されてやるけど・・・


「じゃあ、砲はロゼ一人で装填も射撃もするのか?」


「あったりまえじゃなーい、ルビが装填手にもなるのよ!」


訊き間違えたのかな?


「あのさ、運転しながら弾込めるって・・・無理過ぎ!」


「あったりまえよぉ!停止して待ち伏せするしか勝ち目はないの!」


はぁ、そうですかい・・・

ため息しか出ない車体だな、こいつは。


「待ち伏せ専用か。だったら移動式の野砲みたいなもんだよな?」


俺は戦車には疎いから、ロゼに教えて貰わなきゃならなかった。


「だからぁ、初めから言ってるの。

 これは猟兵が使うべき車体だって。機動戦なんて想定して造られてないもの。

 名前も駆逐戦車・・・いいえ、砲戦車って呼ぶべき車体なんだから!」


種別は良いにしておき、やっぱり普通の車体じゃないということだな。


「こんなんで大丈夫なのかよ?」


俺の心配を余所に、ロゼは至って軽く言ったんだ。


「大丈夫!イザとなればルビが護ってくれるんでしょ?」


・・・いや、それは?俺はバケモンか?


「アタシの守護者ガーデアンルビが、なんとかしてくれるよね?」


・・・無茶言うな?!


呆れ果てた俺が返す言葉を呑んでいたら、ロゼがこんな事を言い始めやがったんだ。


「きっと魔法使いがやって来て、敵を叩いてくれる。

 アタシ達は魔法使いが来るまで、時間稼ぎをすれば良いのよ・・・」


ロゼの言葉に、俺は操縦席から抜け出して訊き返した。


「魔法使いだって?」


ロゼは俺が言わんとしていた事を誤解したのか。


「そうよ、魔法使い。

 我々の技術で造られた魔法の機械で闘う魔女。

 彼女達が敵を撃ち破ってくれる・・・多分ね」


ロゼは口を濁すように答えた。

だけど俺が訊きたかったのは別の意味だ。


「ロゼ。味方にある兵器が、敵にはないとでも思っていないか?

 俺は・・・俺の仇は魔法使いなんだ。

 家族を殺した奴は紋章を浮かべていたそうなんだ・・・紫に光る魔女の証をな」


俺の声に怒気が含まれていたのをロゼは分っていただろう。

そして・・・魔女を仇と言った俺へ、目を伏せたんだ。


自分ロゼと俺の間に壁があると判り。

自分に秘められた<とある力>が、立ちはだかると知って・・・


ロゼッタと同じ部隊。

戦車猟兵パンツァーイェーガー部隊に配属された2人の乗る車体は?


俺と相棒ロゼの闘いが始る。

魔砲の戦車、魔鋼騎との闘いが・・・


次回 訓練

君は少女の心に燈った火に気付かない・・・

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