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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
第5章 鋼鉄の魔砲少女(パンツァー・マギカメタル)
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現れた闇の魔鋼騎

魔砲使いの少女に教えられた魔鋼機械の使用方法。

ルビとロゼは確かめるべく作動させたのだが・・・


あら・・・ま。

不思議な黒髪の少女との出会いは、俺達にヒントを与えてくれたんだ。

二人の力を併せられるって・・・ロゼと俺の異能ちからを併せられるって。


「もし巧くいったら。並みの敵魔鋼騎とだって遜色はなくなるかもね!」


上機嫌で、冷や汗を掻いたロゼ様が仰られる・・・


「ねぇそうは思わない、ルビ?」


びしりと指されてもなぁ・・・


「で?直りそう?」


今、修理中です。



砲尾の壊れた部分の修理に、俺は取り掛かっている。

ミハル一等兵から訊いた情報を元に、二人で魔力を出し合った・・・結果。


「どうやら、あの3号J型改に取り付けてある機械は余程強固なのか。

 それとも試験車体だからだったのか・・・この3突とは違うみたいだな」


機械を作動させて試しに二人で操作したら・・・壊れてしまった。


「あの子が騙した訳はないものねぇ・・・しょうがないわねぇ(棒)」


冷や汗を掻くロゼが、手を出しかねて話して来る。


「そうだよ、ミハル君は嘘を言う子じゃないよ・・・たぶん」


何とか元通りに修理を終えれた俺が、一安心して言ったら。


「あらぁ?エラクご執心のようね?」


嫌味を言いやがる。


「・・・そんなことはいいとして・・だよロゼ。

 この機械じゃ俺達の魔力を制御しきれないんだろうか?

 もっと強力な機械を載せた車両でないと無理なんだろうか?」


量産型の魔鋼機械が容易く壊れるのも問題があるけど。


「そう言えば、ちょっと前にもあったよな。

 アリエッタ少尉の魔鋼機械が壊れた事が・・・」


「そうそう!あの時は危なかったよね?」


ひょいっとキューポラから金髪の少尉が覗き込んで来た。


「あ、姉様。いらっしゃい」


惚けた声でロゼが白を切る。


「聞いたわよぉ、ロゼ。

 あなた達二人で密かに秘密兵器を開発してるんだってね?」


「誰から訊いたんですかそんなこと」


俺が訊いてみると、ニヤッと笑ったアリエッタ少尉が車内に潜り込んで。


「誰でも良いじゃない。

 それより魔鋼機械の限界を超える魔力をどうやって出すの?」


砲手のロゼに聞いて来る。

俺達が魔力を出し合った事を知らないのだから、直に聞きに来たのか。


「それは俺と・・・・」


 ぎろりっ


ロゼが鬼の形相と化した。


「ひっ?!いいえ、なにもありません」


「?!ルビナス?」


言い繕った俺は、いたたまれなくなって脱出を図る。


「お、俺っ、燃料の補給に出てますからっ!」


ここは逃げの一手だろう。

姉妹を車内に残したままで良いのか・・・だって?


知らないよ・・・そんなの。





一時的に両軍が陣地へ戻り、次の行動を見計らっていた。

敵が攻めて来るのなら応じようと、敵が退くのならこのまま様子を窺おうと。


戦車師団は約3分の1の車両を失った。

敵の方はどうなのかと、偵察に赴いたのは俺達戦車猟兵の一部。

戦車随伴を主に任務とした歩兵達だった。


丘陵地帯を越え、敵部隊に悟られず近寄った仲間により齎された情報は。



「どうやら敵もかなりの被害を受けたようじゃのぅ。

 特に痛かったのは、重戦車を4両も喪った事に因る打撃不足のようじゃ」


左舷側で闘った重戦車中隊が4両もの被害を出した事に因り、敵は後退したといっても良い。


「あの味方魔鋼騎の手柄じゃのぅ、あっぱれじゃった!」


3号J型改に因ってKV-1が撃破された。

あの闘いにより、敵は進撃を中断せざるを得なくなったらしい。


「じゃが、こちらの魔鋼騎は後退してしもうた。

 重戦車に歯向かえるのは残された4号F型にかかっておるんじゃ」


重戦車の側面装甲を抜けるのは、4号F型の75ミリ砲しかなかった。

先の戦闘で、新型の4号は敵の優先攻撃によりあらかた擱座されてしまい、

残されたのは僅かにラポム中隊の9両が纏まって行動できる中隊と言った処だった。


「F型でしか防衛力にならない。

 B型の短砲身やC型の50ミリでは側面でも怪しい。

 敵の重戦車を擱座できるのは重砲くらいかのぅ・・・」


砲弾が上から降って来る重砲弾では、命中なんて望めない。

マグレ当たりしか望めないのなら、撃つだけ無駄ともいえる。


「しかし、擱座させるだけならば。

 儂等にも闘う余地は残されておる・・・」


車長のハスボック准尉が、示したのは。


「パンツァーファウスト。

 この特殊弾で、穿甲榴弾でなら、キャタピラやエンジンを破壊出来る。

 もっともそこまで近寄れればの話じゃがのぅ」


そりゃそうだ。

弾が当たらなきゃ意味がない。

当時のガス噴射式穿甲榴弾の飛翔距離と有効射程は、おおよそ30メートルと言った程度だった。

飛ばすだけなら100メートルは飛ぶのだが、如何せん飛翔速度が遅くて命中させにくい。


「窪地に隠れて待ち構えても、敵の歩兵が随伴して来ればお終いじゃからのぅ」


撃つ事さえ出来ずに駆逐されてしまうだろうと想われる。


「まぁ、重戦車だけじゃなく、機甲部隊全部に言える事じゃがのぅ」


故に、敵歩兵が随伴して来るのなら陣地に籠って戦うのが良いというのか。


「この後、敵が攻勢に出て来れば。

 儂等に撃てる手は一つ。陣地に籠りつつ、敵を牽きこんで包囲殲滅するだけじゃ!」


敵が攻勢に出れば・・・そう付け足したハスボック准尉。


永年の勘がそう告げたのは、間違っていなかった。






海運学校を出たムックの耳に、それが入ったのは俺達が万全の態勢を執り得た時。

整備を終えた各車が配置に就いて僅かに数分の後だった。


「なにやら無電で知らせて来ました。敵の部隊でしょうかねコレ?」


電信欄に走り書きしたムックが、俺を介して車長へ渡してくれと頼んで来た。

目を通した俺は息を呑んだ。

ムックが書いて寄越したのには敵戦力の中に書かれてあった一言。


<<紅き魔女が左から廻り込む。道を開けるべし・・・>>


・・・紅き魔女・・・だと?!


俺は車長に廻す前にロゼへ目配せしてから手渡した。

読んだロゼの顔も一瞬で緊迫した。


「ルビ・・・これって。来たのかな?」


そうだよロゼ。

お前に宿った魔女にも訊いてみてくれ。


目で合図すると、ロゼは即座に目を瞑った。

そして・・・


「感じるって・・・本当に来たみたいよ?!」


そうか!妹が感じるのなら・・・姉だって。


「こちらに気付いているかもしれないわ!」


・・・そうだよな。だからこっちに、左側に来るんだよな?


だとすれば・・・いよいよ・・・闘わなくっちゃならないんだよな?


「ルビ、ルビ!どうしよう・・・どうしよう。

 アタシ、物凄く怖くなっちゃってる・・・身体の震えが止まんないよ」


宿った魔女も・・・なのか?

いいや、魔女が怯えているんだろう。

姉の堕ちた姿を観るのが怖くて堪らないのだろう。


敢えて俺は言わずにおいた。

ロゼが怯えているように、俺も実は怖くなっていたんだ。


ノエルがどんな顔で俺を観るのかと。

妹はどんな姿で俺の前にやって来るのだろうと・・・


そして、どんな車両で。どんな力を以って俺達に対峙するのだろうと。




重砲の撃ち合いが始りの鐘と代わる。

両軍が再び相まみえんとしていた、その時。



「「アタシの前に現れる魔鋼騎は、全部平らげてやるわ!」」


少女の声が戦いを告げる。


「「善き哉。我が子孫よ、行くのだ。フェアリアの魔法使いを悉く撃ち滅ぼすが良い!」」


魔女の嘲る声が車内に呪いを掛ける。


「いくぞ!邪魔する者は味方だとて容赦しない!」


魔女に呪われた魔砲使いレオン少尉の唸り声が車内に轟いた。


真っ黒に塗装された重戦車。

砲塔側面に描かれた、紅い槍に巻き付く大蛇の紋章。


走り始めた黒い重戦車に紅き紋章が浮き出て観える。

それは魔鋼騎の証。その車体に宿る魔砲力の発揮。


ロッソア軍の中でもひときわ目につく重戦車ISイシュフスターリン

強力な装甲はKV-1をも凌ぎ、砲身は更に太かった。


「観るが良い将軍よ!我の呪いの力を!我がルナナイトの恨みを知るが良い!」


月夜の魔女が舞う。

昼間だというのに薄暗い車内で。

機械の中だというのに目を細めて。


仇なす者達を嘲笑うかのように・・・・




いよいよ。

宿命の戦いへ。

現れるのは闇の魔女。現れたのは新型重戦車。


どう闘う?どう取り戻す?

ルビと仲間達の決戦が始まります。


次回 瓦解する作戦

君達の運命は愚かな指導者に握られてしまったのか?

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