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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
第5章 鋼鉄の魔砲少女(パンツァー・マギカメタル)
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ロッソアの魔鋼騎VSフェアリアの魔砲少女

「魔鋼騎戦記フェアリア」最初の激戦地。

ミハルとマリーベルが闘った最初の地・・・・


ルビ達は魔鋼騎同士の戦いを目撃する・・・

ロゼの放った弾は見事、敵を擱座させるのに成功した・・・が。


「観てよルビ、敵は引き下がる気よ!

 アタシ達の存在に気付いたのかしらね?!」


見て観ろって言われたって、操縦席から観える範囲は限られてるんだぞ?

毒づく俺が文句の一つでも言ってやろうかと思った時だ。


「待て!奴等は単に引き下がるんじゃない、役目を終えただけじゃ!」


キューポラに陣取るハスボック准尉が叫び声をあげ、


「後方に居る奴等と交代するようじゃぞ!」


遂にその時が来たと教える。


「そうじゃ、奴等自慢の重戦車、KV-1のお出ましじゃ!」



厚い正面装甲。

傾斜した砲塔装甲板に75ミリ砲を装備した重戦車KV-1が遂に戦場に現れた。


「味方は何をもたついておるんじゃ?勝てる筈もなかろうに?」


車長は暗に後退を促しているのだが、味方は睨まれたカエルの様に動きを停めている。


「その短い50ミリで太刀打ちできるとでも思ってるの?

 ムック!無線で呼びかけて、一刻も早く後退するようにと!」


ロゼに命じられて、ムックが弾かれた様に無線機に取り付いた。


「重戦車隊は9両も居るぞ!このままこっちへ来るようなら儂等も逃げんといかんだろう」


小隊長としての判断。

車長としての決断。


駆逐戦車の闘いとしてはこれ程不利な事はない。

敵は動け、どの位置からでもこちらの装甲を破る事が出来る。

反対に3突の主砲ではKV-1の厚い装甲を破る為には、余程牽きつけてからでしか撃ち抜けない。


「せめて奴等の足を停めさせることぐらいか、俺達に出来るのは・・・」


いくらロゼ一人で頑張ったとしても、精々3両も擱座出来れば上出来だろう。

味方の援護があったとしても・・・だ。


3突の正面装甲は80ミリ。

奴等の75ミリ砲は100ミリを貫通出来る。

つまりどの部分を狙われても防ぎようがないという事だ。


「味方の3号ならもっと惨めだぞ。当たっても弾かれ、受けたら木っ端微塵だ。

 一方的な虐殺になってしまう・・・こちら側のな」


あの紋章付きの3号だって免れはしないだろう。

闘うだけ無駄とも思えるし、逃げるしか生き残る道はないんだ。


だが、味方は逃げなかった。

一両の2号軽戦車が突っ込んだ。

味方に逃げ出す時間を造ろうとしたのか。


軽戦車は素早く動き回り、重戦車隊に混乱を齎す事には成功したが。


「味方2号撃破された!」


無線を傍受していたのかムックが叫んで惨状を教えた。


「まだ味方は退かないか?!馬鹿者共メ!」


流石にキレタハスボック准尉が、怒りを込めて味方を罵る。


「ルビ、こうなったら撃てる間に撃ってやろうか?」


「待てよロゼ。魔鋼弾には限りがあるんだろ?

 目蔵撃ちに近い状況で消費するのは、後に響くぜ?」


敵を迎え撃つ時に、肝心の弾切れになるのを懼れて止める。


「だけど、手を出さなきゃ、味方が全滅しちゃうよ?!」


ロゼの心配は痛い程解る。判るけど、今は我慢しなきゃならない。


「ロゼ・・・目を瞑っていろ。耳を塞いでおけよ」


坐して黙す。

味方を見殺しにするのが嫌なら、何も観ず、聴かない事だ。


「ルビ・・・悲しいよ・・・」


それが本音だろう、優しいロゼの。


だけど俺達は戦争をやってるんだ。

味方の損害に気を留めていられる余裕なんてないんだ。


次に待っているのは俺達の番かも知れないんだから。


「車長!味方中戦車隊が駆けつけます!」


ムックの叫びに車内の沈痛な気分がいくらか和らいだ。


「F型装備の・・・ラポム中隊です!」


「ラポム中尉?!アリエッタ姉様?!」


ロゼの顔が花開いた。

魔鋼騎乗りの姉が来てくれたことに、感謝と期待を込めて。


「F型の75ミリでも余程近寄らんと、KV-1の装甲は破れんぞ。

 宛てにするなとは言わんが、双方共に注意しなければいかんからのぅ」


ハスボック准尉が注意を促したのは、自分達とラポム中隊の連携が執れなければ意味を為さないという事だ。


「中戦車隊が攪乱させてくれたら、砲塔側面を狙うチャンスも来よう。

 牽きつけてくれれば車体側面を狙えるだろう。

 そう巧く事が運べるか・・・それが鍵じゃぞ?」


相手がまだ7両ほど向かって来ている状況で、待機を続ける猟兵部隊。

司令部の指示に従い陣地から抜け出した17両を除いて、陣地に籠るのは残り9両。

俺達の中隊だけが敵と対峙していた。


「交戦中の味方中戦車隊、残り一両だけです・・・」


ムックの声に視線を戻す。

あちこちに擱座した戦車からの煙で視界が良くない。

その中を唯の一両だけ生き残ったJ型改が走っていた。


「あの紋章付きか。善くもまぁ・・・無事に済んだな?」


確かにJ型改は強かった・・・だが。

相手が多過ぎるし、手強かったんだ。


細長い砲身から撃ち出せる弾では、敵に与えられる損害も知れているだろうに。


逃げるかと思われた紋章付き戦車が向きを変えたのは、俺がラポム中隊に異変を感じた時だった。


「味方3号、敵KV-1に向かいます!」


「なんだと?!」


ムックの声に俺が泡を喰う。


「なんじゃと?!死ぬ気なのか?」


「えっ?!何が起きたの?ねぇルビ?」


ハスボック准尉が叫ぶのと、目を瞑り耳に手を添えていたロゼが訊いて来たのとが同時だった。




まるで遠くの映画でも見ている様に感じられた。

現実とは思えない事が起きたから。


反転し再突入を図った3号J型改の紋章が蒼く輝いたと思ったら、

みるみる車体が替わって行ったんだ。

正面の装甲が斜めになり、トランスミッションまでが別次元になる。

転輪そのものが巨大化し、側面に観えていた補助輪も消えてなくなった。

そして砲塔が・・・観た事も無い形状へと替わり、突き出ていた砲が長大で太くなったのだ。


「なんだあれは?!あれは新型戦車なのか?それとも俺の眼が腐ったのか?!」


観ていた者全てがこう感じてもおかしくない。

魔鋼騎の3号はもはやそこには居なかった。


居るのは怖ろしいまでに長い砲を持つ、重戦車のような車体。


敵弾を弾く為に傾斜させた正面の装甲。厚みは如何程なのか?

敵装甲を破壊する長大な砲身。その貫通力は如何程か?


今迄の戦車が時代遅れにも感じてしまう魔鋼の戦車。


「俺達は化かされているのか?奴は本当に魔女じゃないのか?」


俺はこうも言いたかったんだ。

あれこそが、<双璧の魔女>なんじゃないのかと。


フェアリアを護る為に遣わされた、古の魔女の姿ではないのかと。



ラポム中隊も固唾を呑んで見守るだけに留めた。

味方の魔法戦車と敵重戦車の闘い。


固唾を呑んで見守るのはフェアリア軍だけでは無かった。

重戦車隊の中から一両だけ進出し、魔鋼戦車に挑んで行った。


それは自らも紫色の紋章を浮かび上がらせ、自らも魔鋼の戦車だと知らせていた。


敵味方一両ずつの一騎討ちに、両軍の兵は手を出しかねた。

どちらも魔鋼騎、どちらも新型戦車。


見詰める者達は、どちらが勝利を納めるのかを待つのみだった。




「ルビ!観える?!アイツは魔鋼騎だった、ロッソアの!」


ロゼが照準器の倍率を上げて教えてくれた。


「魔鋼騎だって?紋章は?紋章が観えるか?」


心臓が爆発しそうだ。

ノエルが乗っているかも知れないのだから。


「観える!観えるわ!奴は紫の紋章を浮かべている。

 蛇の紋章を浮かべているのが判る!」


紫・・・蛇・・・違うのか?


「紫・・・か。それじゃあ違いますよねロゼさん?」


ロゼッタに宿る魔女に訊いてみるが、応えは気にしない事にした。


「うん?アタシに何を訊いたの?

 ああ、宿った人に訊いたんだね。そうねぇ・・・どうかな?」


暫しロゼが沈黙した。


「そうみたい!良かったというか・・・その。

 ルビには残念だったろうけど、奴は魔女じゃないみたいね」


宿った魔女に伺いを立ててくれていたようで、


「だから、味方が倒してもお構いなしってことね!」


ほっとしたというか、気が抜けたというか。


「だったら傍観してないで手助けしてやればどうなんだよ?」


「なによ、現金ねぇ。妹さんじゃないと分った途端・・・」


ジロッと振り向いてやったら、ロゼがそっぽを向きやがった。


「兎に角じゃ!後ろに控えて居る重戦車部隊に備えるんじゃぞ?!」


助け舟を出してくれたハスボック准尉に感謝するよ。

俺達は味方魔鋼騎の闘いに気を奪われていたんだから。

戦場で気を逸らすのが、一番危ない事なんだから・・・さ。

<双璧の魔女>と、<ロッソアの魔女>

2つの紋章が雌雄を決する時、新たな宿命が生まれるのです・・・が。


この物語には関係無さそうですW


と、いう訳で。

闘いに一時の休息がもたらされた時、ルビ達は一人の少女と出逢うのです。

黒髪を紅いリボンで結った・・・あの子に。


次回 戦闘休止?!

君は壮烈なる戦車戦の末勝った者を称える。そして乗って居た者に表敬訪問するのだ・・・


特報!次回・・・初期型ミハル登場。

作者注・この頃のミハルは大人しくていい子だったのになぁ・・・・今は。

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