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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
第3章 騎士と魔女
37/133

応戦!

激戦続く!


ロゼの砲撃能力は並外れていたのだが・・・

ラポム中尉の戦車隊が応援に来てくれるまで、持ち堪えねばならなかった。


戦車猟兵中隊の3両は、後退しながら敵を阻み続けていたのだが。

押し寄せる敵兵力は次第に増え、街の中へと侵入を開始し始めた。



「車長!第2小隊長車被弾!」


無線機からの悲鳴を聞きつけたムックが振り返る。


「残りは儂等と中隊長車だけじゃぞ!ルビ、急ぎ後退せいっ!」


連携を執ろうにも中隊長車との距離が開き過ぎていた。

敵との距離を考えると、中隊長車に近寄る事もままならなくなった。


「もう、ここらが潮時じゃ。歩兵達の後を追って市街地から脱出するんじゃ!」


ハスボック准尉に命じられたが、ルビには反転する気にはなれなかった。

待っ正面から敵が近寄りつつあったから。


「ロゼ!真っ正面に見え隠れする2両を何とか撃てないか?

 ここから後退しようにも、あいつ等が居ると後退するにも危険だ」


第2小隊長車が被弾し、行動不能となった今。

敵の狙いは、この車両に集中していると考えられたから。


「早くしないと囲まれちまう!」


ルビの焦りが伝播するのか、右に座るムックも砲手席に振り向く。


「焦らないでよ!奴等の内、どっちかが飛び出すのを待ってるんだから!」


建物の影に潜む2両の戦車。

連携を執って射撃に出てくると考えたロゼは、射撃諸元を調整して待っていた。


「敵の内どちらかが飛び出した瞬間を捉えてやるわ。

 連携を執られる前に、片方だけでも撃破してやるんだから!」


ロゼはチャンスを捉えようと照準器を睨む。

射撃ペダルに足を載せ、いつでも撃てるよう射角ハンドルを握り締めていた。


ルビ達の3突が停車し、敵2両と対峙していた時。


「中隊長車から無線!新たな敵3両がこちらに向かっていると言ってます!」


ムックの叫びは、俺の度肝を抜いた。

2両でさえ、手が回り兼ねるというのに。

新たな敵が3両も増援に来られたら・・・


「ロゼ!ここは無理でも退き下がろう。そうじゃないと本当に囲まれちまうぞ!」


敵を威嚇しながらも、なんとかこの場から逃げなくては囲まれてしまう。

砲塔がない駆逐戦車が周りを囲まれてしまえば、側面や後部を撃たれてしまう。

前面装甲はそれなりに厚いが、側面や背面は3号戦車のままだったから。


「囲まれたら20ミリ程度しかない側面装甲を撃たれちまうんだ。

 45ミリでも易々と貫通されちまうんだからな!」


そうなったら、俺達が倒した相手と同じように、撃破され破壊に呑まれてしまうだろう。


「判ってるわよ、そんな事ぐらい!

 でも、正面の奴等はタダでは下がらしてはくれない、こちらが動くのを待っているのよ?!」


俺達はジレンマに嵌ってしまった。


どこかから近寄って来る敵の気配を感じ、それでも動けない苛立たしさ。

動きを見せたら、正面の2両が飛び出して来る・・・


「動くと見せかけてチャンスをものに出来ないか?

 俺がエンジンを吹かし、排煙を上げるから。ロゼは敵が動いたら躊躇せず撃つんだぜ?!」


真っ正面の敵から観れば、排煙を上げた3突が後退を始めたと勘違いしてくれないかと思った。


「よし、やってみろルビ。敵が嵌れば儲けもんじゃ!」


次弾を持った准尉が促して来た。


「ロゼ、いくぜ!」


俺がギアをニュートラルに入れたまま、アクセルを踏み込んだ。

急激なエンジン振動を感じ、排気管から真っ黒なディーゼル機関の爆煙が舞い上がった。


「出て来やがれ、コン畜生共メ!」


ムックも思わず叫ぶほど、じれったく思っていたらしい。


敵はこちらが逃げ出したと捉えたようだ。

それとも味方がもうすぐ傍まで来ていたからか。


飛び出したT-28の左転輪が観えた瞬間。


フォイアっ!」


ロゼが射撃ペダルを思いっきり踏み込んだ。


 ズドッ!


徹甲弾が距離僅か200メートルを飛び、狙い違わず命中した。


 ガッ!


紅い火花がT-28の車体左前方に飛び散る。

と、同時にこちらへ向けていた砲身が垂れ下がった・・・


 バガァーンッ!


垂れ下がった砲のまま、搭載弾薬が誘爆したT-28の至る所から激しく煙と炎が噴き出た。


撃破を喜ぶ暇もなく、車長は次弾を装填し、ロゼはもう一両を警戒した。

そして俺はクラッチを繋ぎ、今度は本当に後退を開始した。


「もう一両は仲間が撃破された事で躊躇しているわ!今の内よルビ!」


後退を急いでと、ロゼが急かす。

頷く暇なんて俺にある訳がない。


「お嬢ちゃん、無線手!見張りを厳にするんじゃ!」


キューポラに上がった准尉の叱咤が飛ぶ。


ロゼは正面の1両を睨み、出て来るのなら撃とうと油断なく観測し、ムックは側面の点視穴から右側を探る。

俺はバック状態のまま下がり続けていたが。


「まだ敵は狙える位置に居るのかロゼ?」


一刻も早く180度反転したかったから、状況を訊いた。


「うん、もう少し。後30メートルこのままで。

 そこまで下がれれば、敵の死角に入るから。そこでUターンしよう!」


ロゼの言葉にやっと目途が付き、一息吐けたのだったが。


「敵と思われる物、こちらに向かって来ます!」


現れたのは味方じゃないのか?

敵がわざわざ右側、つまり中隊長車の方から出て来るのか?


「敵が右から?中隊長車は何処を観てたのよ?!」


同感だったロゼが、俺の代わりに訊いてくれた。


「本当に敵なのか?ラポム中隊では無いのか?」


准尉にも、まだ掴めていないようだ。


無線機に何事かを呼びかけたムックが、一瞬押し黙ると。


「中隊長車から返事がありません!無線機の故障と思います!」


ムックの声は、俺達に危機が迫った事を告げていた。

戦闘中に突然無線機が壊れるなんて。中隊長車は無線機が突然使えなくなる事態になったのだ。

車体に何らかのダメージを受けて、無線機が押し黙らざるを得なくなった・・・破壊されたのだ。


「被害報告も出せずに・・・か」


准尉が、中隊長車のいると思われる箇所へ目を向けると。

微かに黒煙が見て取れた。

そこで何が起きたのかを証明するように。


残されたのは俺達1両だけ。

敵に囲まれようとする3突が、タダの両だけ・・・



「反転して、市街地から脱出するのは間に合わん!

 そこのビルに逃げ込め、車体前方だけを敵に向けてじゃ!」



咄嗟に准尉が命じて来た。

こうなればビルを盾に籠城するのだと。

車体側面と背面を敵に晒さなくし、防御しつつ交戦するのだと。


「了解ですっ!」


俺は言われた通り、ハンドルを引いて斜め後方の建物の壁をぶち破り侵入した。


「ムック無線で味方の援護を要請し続けるんじゃぞ!

 敵が新たに、3両が来ておる事も添えてじゃぞ!」


「はいっ!」


無線に取り付き、味方へと報じるムックを観てから。


「お嬢ちゃん、いよいよ魔砲を使わねばならんようじゃ。

 心つもりは良いかのぅ?魔法の準備は出来ておるかのぅ?」


済まなそうに准尉がロゼに頼んで来た。


「それがこの車両を与えられた訳ですから。

 アタシに出来るというのなら、成ってみせますから・・・」


ロゼは胸のネックレスを取り出して答えて来た。


「そうか・・・じゃったら。

 魔鋼機械を発動する・・・かかれっ!」


砲尾の下に備えられている紅いボタンを拳骨で叩き込んで叫んだ。


「魔鋼騎戦、発動!

 魔砲の使徒になるんじゃ!」


魔鋼機械が動き始めた。

内蔵された蒼い水晶が回転を始め、魔砲の力を求めだす。


「ルビ・・・アタシ。

 アタシ・・・姉様と同じ位強くなれるかな?」


ポツンと呟いたロゼが、ネックレスを翳して俺を観た。


「なれるさ、ロゼになら。誰かを護ろうとするロゼになら!」


俺に頷いた少女の眼が蒼くひかる


「そう!アタシは皆を護りたい!

 ルビと一緒に生き続けたいから!」


掲げられた魔法の石から、蒼き光が溢れ出した・・・・

決死の闘いが続く。

敵も味方も無い。

唯戦う者は、生き残ろうと抗うのみだ!


次回 間違った選択

君は正しいと思うからこそ異能を使う。だが、人は神ではない・・・・

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