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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
第3章 騎士と魔女
32/133

新装備!

新たに配備された車両。

それは75ミリ戦車砲を搭載していた。


戦車の分類には入っているのだが?!

戦争が勃発してより早、2か月が過ぎた頃。


「新しい補充兵が来たみたいよ?」


ロゼが新しい襟章を着けた、新規の猟兵隊員服で教えに来た。


「へぇ、補充兵か。それじゃあいよいよ出撃も近いな?」


俺はキューポラから身体を出して、ロゼへ答える。


「そーね、戦線も大分押されちゃってるし、ここらで逆襲に転じないと。

 ・・って、こんなことは上層部が考える事だね?」


ロゼはくるっと身体を捻って車体に登って来た。


赤栗毛だった髪が、いつもより透けて見える。

陽の光を浴びたロゼの髪が輝いて観える。

その髪を蒼いリボンで結った襟元には、マーキュリアの紋章が入ったネックレスが輝いている。


前の戦車兵服は戦車猟兵隊員服に替えられ、襟元が引き締まったように観える。

その襟元には一階級繰り上げられて兵長の4本線が着けられていた。


ロゼの替わったのは階級や服装だけじゃない。

一番替えられたのはその任務と配置だろう。

その理由は・・・・


「ルビ!照準器は新式に替えられたの?」


車内に潜り込んで来たルビが砲手席に座る。


「ああ、なんでも倍率を8倍にまで上げたらしいな。長距離砲撃にも対応できるってさ!」


整備班長が言っていた通りに教えて、


「それに、俺達の車体にはアレが着いたぞ!」


操縦席から装填手席に向けて指し示した。

俺が知らせたのは。


「ほんとーだ!砲身を替えたら付いて来た?!魔鋼機械だよねこれって!」


ロゼが砲尾に着けられた機械を複雑な顔になって観ている。


「ああ、我が隊始まって以来の快挙じゃぞ!」


頭上のキューポラから、小隊長ハスボック准尉が言って来た。


「この3突、3号突撃砲には初めて搭載されたんじゃからな」


小隊長車となった俺達の新しい戦車。

今迄の砲戦車なんかとは、雲泥の違い。

本格的な装備を施された、駆逐戦車だった。

今迄の3号戦車の車体に、砲塔を抜き取り75ミリ砲を載せた。

それだけではなく、砲盾も射撃装備も新たに誂えられた別の戦車になっていた。


「本当ですね、魔鋼機械が搭載された駆逐戦車なんて。聞いた事も観た事もありませんから」


ロゼは配車された時から上機嫌だった。

今迄の砲戦車なんか、比べ物にならない実力を秘めた車体だから。


「それにこいつなら前面装甲に敵弾を受けても、ある程度弾けさせれるだろうしな」


操縦席前の増加装甲が頼もしく思えた。

なにせ中戦車よりも強力な厚さを誇っているんだから。

前面に張られた装甲は併せて80ミリにも達しているし、砲盾なんて傾斜角を併せればもっと厚い。


「そうじゃのぅ、相手が短砲身の75ミリじゃったら。

 じゃが、油断は禁物じゃぞ、こちらが性能を上げたのなら敵も同じと考えておくんじゃ」


准尉の言うのは当然だろう。

敵も闘っているのだから、技術を惜しみなく注ぎ込むだろう。


「アタシはこの砲の貫通力を信じるのみですよ」


配車された3突の中でも、ずば抜けて長砲身の一台であるのが気に入ったようだ。

ロゼが上機嫌なのは車体よりも砲の威力を知って、自信を得たからだろう。


「敵が機動戦を挑んでこない限り、こちらから飛び出さない限りは。

 撃ち負ける気なんて全然しないから!だって500メートル先のKV-1の正面装甲も破れるんだから!」


ロゼは試射した折に貫通させれた、100ミリ装甲板を思い出して言い放った。


「まあな。当てられたら・・・だな」


嫌味じゃないが、俺の言う意味は。


「問題があるとすれば、機動力が3号より遥かに低いって事だけだよ」


操縦を任される俺としては、機動力の低下は痛し痒しってことなんだよ。


「そんなの、ルビが何とかしなさいっての!」


・・・出来るかっ、そんなこと!


「はっはっはっ!そこは味方の機甲部隊に何とかして貰わんとなぁ」


准尉が笑う。

味方に出来た戦車部隊に気を強く持って。


「姉様も新式車両を貰っていたし。あれはきっと強いんだろうなぁ」


ちょっと羨まし気にロゼが溢した。

機甲部隊に新たな車両が次々に配備され、敵の重戦車にも対応できると目されていた。


「特にアリエッタ姉様の中戦車。

 始めて長砲身75ミリ砲を搭載してあるアレ。

 きっと無敵なんだろうなぁ・・・いいなぁ」


砲手として、砲術を学んだ者として。

ロゼは羨望の眼差しで車体を思い出していた。


「こっちだって、貫通力なら負けちゃーいないだろロゼ?」


そう言った俺にロゼが頷き、


「そうよね!負けられないわ姉様なんかに!」


・・・張り合う処が違うような気がしますけど?







装備の充足が進む折、拡充された戦車猟兵部隊は。

機甲部隊の一翼として駆逐戦車が36両の戦車大隊を保有。

実働30両前後、兵員は整備中隊を含めて総勢270名。

他に対戦車歩兵として行動する時としての武器弾薬運搬車隊など、都合300名にも達していた。



フェアリア軍が拡充されていた時、敵ロッソア軍は。


本国からの正規軍以外にも、衛星国からの増派を受けて拡充されていた。

北方軍には都合7個師団計15万人。

中央軍には12個師団の主力、28万名にも及ぶ規模で攻略に掛かっていた。

一方ルビ達と対峙する南方軍には6個師団計14万人と、

増派されて来た衛星国軍の3個師団計4万2千名が侵攻を企てていた。


フェアリア総軍50万名とロッソア軍60万名とが戦闘状態だったのだ。


だがしかし、人数よりももっと開きがあったのは武装の差だった。

ロッソアは余りある国力に物を言わせて機甲部隊を形成させていた。

陸の王者たる戦車の量産に掛かり、国力の差を見せつけて来た。


フェアリア軍も新型戦車を開発、逐次戦線に投入していたが、

ロッソアは物量に物を言わせて押し寄せて来た。


戦争は、一気に敵より勝る物量を投下できるかで勝敗が決すると言えた。


少々敵より劣っていたにせよ、数倍する物量を一つの戦場へ投下出来れば。

数の暴力は敵を圧倒する事になる。


その当時、フェアリア軍の生産できる戦車は一日に5両。

かたやロッソア帝国は衛星国と併せて日に50両。

国力の差は10倍にも達しようとしていたのだ。




各戦線で動きが観られた。


ロッソア軍は伸び切った兵站線の確保を終え、いよいよ進撃を再開する事になった。

先に中央の機甲部隊が北方軍との連携を執る為に転進を始めた。

また北方軍も呼応し、南進を開始した。


これに対峙するフェアリア軍は敵主力をエレニア市街地に迎え撃つ作戦を執る。

後に<第1次エレニア戦車戦>と呼ばれる機甲部隊同士の決戦の幕が開く事になった。


開戦から2か月を過ぎた、夏の事だった・・・






挿絵(By みてみん)

(画像は継続戦争時のフィンランド軍。ドイツ軍から貸与された3号突撃砲の車列)

(作者注・画像はウィキペディアから借用・加工しました)


戦車猟兵部隊の車列が続く。

目指すのは占領を許したタウロウニム市に続く街道の街エレニア。


ロッソアに占領を赦した街の奪還を目指し、エレニア防衛を果そうと目指した。



ほぼ一か月前、大隊を壊滅させられた生き残りであるルビ兵長とロゼ兵長が見詰める先に、長い車列が映っていた。


以前からは比べ物にならない装備を誇り、味方に自信を持った顔には不安の陰は無かった。

前方遥かに観える機甲部隊も、車列をくねらせ進み征く。


今度こそは失地を回復するのだと。

次こそは勝利を納めるのだと息巻いて。

 

車列は進む。

今度こそは敵を食い止められると踏んで。


次こそ敵を追い返せるのだと自信に満ちて・・・


次回 俺の女神

君の事をどう思っているかって?・・・腐った女神・・・だろ?

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