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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
第2章 蒼き指輪
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偽装?!擬態?!

作戦が始まった!

夜闇をついて、姿を晒したんだ・・・こんな感じでさぁ・・・

まだ明けやらぬ夜。

月は上空に輝き、地上の者達に影を与えている。


突然降って湧いたような大音響が半ば疲れに負けて眠っていた者を起こした。



  ギャギャギャン ガガガガッ



観えない先から聞こえて来た音響に、ロッソアの偵察隊も叩き起こされた。

歩哨に立つ者も、観えざる先からの音に驚きを隠せず。


「敵か?!敵だろう?」


音のする方に目を凝らした。



  ガサガサ  ざわざわ



まるで草をざわつかせて近づいて来るような物音。



  ドドド  ギャラギャラ



排気音とキャタピラ音も聞こえる。



「「ほーっほっほっほっ!ワラワの邪魔をする者は誰じゃ!」」



聞きなれない国の、喚く少女の声が戦場に流れて来た。



「なんだ?!何が一体?!」


やって来るんだと、ロッソア兵が驚愕する前に影が迫った。


「「フェアリア魔女のお出ましよ!そこをお退き!」」


魔女だと告げた影が、兵士達に命じた。


「魔女だと?馬鹿な、そんな奴がこの世いる訳が・・・」


ロッソア兵達が銃を手に取り、現れた影に言った時。


(( ピカッ ))


影の上部で光ったのは・・・


「あわっ?!あわわっ?本当に魔女なのか?!」


二つの怪光線が現れたのだ。

影の目玉が光ったように・・・だ。


「魔女だ!フェアリアに伝わる魔女が現れやがった!」


驚きの声を上げる者、腰を抜かして逃げる者。

夜闇に紛れて現れた影に、数十人の偵察隊員が恐慌状態となる。


「馬鹿者!魔女なんていないっ、奴は何かが化けているだけだ!」


「そうだ!撃ち殺してやれば良い!」


何名かの肝の座った兵士が銃を構えて・・・



 ダダダッ ダンッ ダンッ !


陰に向けて銃撃を始めた。


だが、確かに銃弾を喰らった筈なのに、影は倒れもしない。


「「馬鹿者共め!魔女の怒りを受けるのじゃー!」」


反対に影からの声で恐怖に貶められる。


「うわぁーっ!化け物だっ、弾を浴びても倒れないぞ!」


一人が恐慌状態になり逃げだすと、周りの者も後を追う。


「逃げるな、馬鹿者!」


指揮官が停めても、闇の中では伝わらない。


軽戦車部隊迄逃げ始めた歩兵に、後ろを振り返るだけの余裕はなかったようだ。


二つの光の上に灯った火があった事を。




「きゃぁきゃぁ!燃えちゃったよぉ?!」


ロゼが狼狽える。


「落ち着くんだロゼ!もう間も無く夜明けだ。

 それまで火を拭き消せ!火の点いてる処を叩き払うんだ!」


「ひいぃ~っ?!なんでアタシがぁ?」


俺の声にロゼは涙目で消火にかかった。


敵からの銃撃は停まっているが、こちらも火災と闘わなきゃならなくなった。


「ロゼ!俺が消すからっ。見張りを交代しろ!」


操縦席から飛び出して、枯草に点いている火を消しにかかろうとした。


草を山盛りに積んだ砲戦車。偽装作戦は半ばまで完遂出来ていたが。


「ルビ!大変よ、奴等は軽戦車を押しだして来たわ!」


それは思いもよらない敵の出方だった。


偵察歩兵隊の窮地を知って出て来たにしては早過ぎる。

初めからここら辺りで野営していたにせよ、早過ぎると思った。


「見つかったら太刀打ち出来ないよ、こんな有様じゃぁ!」


ロゼの砲手席にも草が詰められ、射撃処の話じゃなかった。

焦るロゼは何とか闘おうと砲手席の草を掻き出しにかかったが。


「ロゼ!このまま後退するっ!徹甲弾を込めておくからな!」


消火を諦めた俺は、手早く弾を装填し、操縦席に駆け込んだ。


「こんな状態で撃つのぉ?!」


眼を廻したロゼが、それでも照準器に目を充てて狙いを定める。


俺達の砲戦車には枯草が山積みにされ、威嚇のために着けられた二つのライトが灯されたままだった。

敵から見れば、狙いをつけやすいだろう。

だって夜闇の中に灯りが燈って、姿が晒されているのだから。


「奴の弾が何処に目掛けて撃たれるのか、奴の射撃術が下手糞じゃなきゃ良いけどな?!」


俺が言いたかったのは・・・


「目玉の間を狙ってくるだろう。敵が射撃するまで撃つんじゃないぞ!」


「ええ~っ?!本当に?もしこちらの正体がバレてたらどうするのよぉ~っ?!」


ロゼが心配するのは尤もだが、相手に向けられたライトの所為で正体がバレているとは思えない。

それに今この車体は、窪地に入っている。

敵からは車体を撃つのは、まず無理な話だろう。


奴が榴弾を撃って来ない限りは、枯草を撃たれても貫通するだけに終わる筈だ。


俺は賭けに出た。


「ロゼ!もしもの時に備えてここにしゃがんで!」


操縦席と砲手席の間にある狭い空間へロゼを呼ぶ。


「ええ?!そんなとこに・・・解った!」


考えている暇が無いと思ったのか、俺を信じてくれたのかは判らないが。

ロゼは躊躇なく俺の背中に凭れ掛かった。



ロッソアのBT-7も、困惑しただろう。

夜間に砲撃出来るような暗視装置も無い時代に、昼間用の照準器で狙うのだから。

暗い照準器にはっきりと映るのは、二つのぼやけるライト。

その周りの影はこちらに向けられた光で観えなくなっている。


喩えて見るのなら、双眼鏡で夜間に遠く離れたバイクのライトを観た様な状態。

ライトは観えてもバイクだとは分からないだろう?

車なのかバイクなのか、それとも懐中電灯なのか・・・


狙うとすればライトを狙うしかないだろう?


BT-7の砲手も同じように考えたかは判らないが。

二つの明かりの中間に的を絞った。

一発目で駄目なら次でとどめを刺そうと考えた・・・ようだ。

俺の考えた通りに・・・



 バムッ



射撃炎が瞬いた。

俺はどうか考えた通りになれと念じて目を瞑る。



 ジャッ!バフッ!


旋風が枯草を薙ぎ払った・・・と、同時に燃えていた枯草まで吹き飛ばされていった。


「今だ!ロゼっ奴を撃て!」


頭と耳を両手で塞いでいたロゼに叫ぶ。


「りょ、了解っ!」


照準は着け終わっていたから、後は撃つだけ。

敵が二発目を撃つ前に倒さないと、次は無いと思うから。


「撃て!ロゼっ、撃つんだ!」


ギアをバックに入れ、射撃が終わったら直ぐに退がろうとアクセルに足を載せる。


必死のロゼがフットトリガーを拳骨で押し込んだ。


 バフッ ボムッ!カシャーン!


射撃音と、薬莢が排出された音が流れ・・・


紅い曳光弾がBT-7の砲塔に穴を開けた。


「やったぞ!ロゼ」


「きゃあんっ?!また燃えちゃったぁ!」


俺の褒める声をロゼの叫びが打ち消した。


「・・・え?」


振り返った俺の眼に、積み込まれた枯草が砲尾から排出された薬莢に因り燃え始めたのが映る。


「なんてこった・・・・」


これはもう・・・ヤバイ。


「ロ、ロゼ!消すんだっ何とかして消してくれ!」


「ひぃいいっ?!またぁ?」


敵の砲撃で一時は消えた火災が、自らの砲撃で再延焼してしまった。


「もうむりっ?!ルビっ逃げよう!」


「俺もそう思っていたんだ!」


こうなったら作戦は無茶苦茶だ・・・と、思うかい?


「逃げるが勝ちっ!ライトを消して反転180度!全速離脱!」


ロゼに言われるまでも無い。


「敵戦車が追いかけて来る前に!ロゼはしゃがんでいて!」


枯草に炎が点き、それでなくとも目立つから。


「枯草とライトを投棄するわ!ルビは目的地点に向かって!」


バックを始めた俺に、初めから予定された行動を促して来る。


「よぉしっ!旋回して全速で逃げる、放り出されるなよ?!」


旋回を終え、1速に入れた俺が後ろのロゼに言い放った。

ライトのケーブルを抜き、縛り上げてあった添え木を押し倒したロゼが。


「ここからが作戦の本番なんだからね!巧く運転しなさいよ!」


「キャタピラが外れないように祈ってくれ!」


ロゼが命名したお化け大作戦の第2段階が始った。


偽装してあった枯草を投棄した砲戦車は、姿を敵に晒しながら全速で逃げ出した。

敵から逃げつつも、誘い込む様に・・・



「ありゃなんだ?!フェアリアの怪車両じゃないか?」


「怪車両じゃねぇ、軽車両だ!」


「化かされたか!それとも馬鹿にされたのか?!」


一両の軽戦車を撃破されたロッソア軍は、逃げ出した敵に向けて怒りを顕わにした。


「追いかけろ!逃がすな、撃破してしまえ!」


怒りの声が辺りに巻き起こる。

仲間をやられた戦車隊も追撃に移った。

たった一両の軽車両だと踏んで。まだ明けやらぬ空の元。



「来ましたぜ、奴等がまんまと・・・」


双眼鏡を降ろしたハスボック軍曹が、戦車隊中隊長に教える。


「ああ、それでは歩兵隊の指揮を宜しく」


戦車から降り、歩兵の指揮を任された軍曹が。


「そちらこそ、巧くやってくださいよ?」


作戦は戦車隊に懸かっているのだと返した。

頷き返した中隊長がマイクロフォンに指を添え。


戦車前進パンツァーフォウ!」


砲戦車を追撃して来る敵に向けて、部隊の前進を命じた。


後は仕上げをごろうじろ!


作戦は思いのほか巧くいきそうだった。

ルビとロゼの砲戦車は逃げる!


次回 生きる希望

作戦は最終段階へ!生き残れ俺!闘え魔砲乙女!

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