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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
第7章 明日への希望
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福光(ふっこう) 第5話

アリエッタに連れられて、宮殿まで来たルビ。


そこにはプロフェッサー島田の娘が居るはずだった・・・

戦争を終えようとしているフェアリア皇国に一通の機密文書が届けられた。


駐在する公使からの暗号電文には、終戦を働きかけてくれた友好国からの情報が記されてあった。

一つは公にしても差しさわりがない派遣軍を求める救援要請。民族紛争を武力で解決するための依頼。

そして、もう一つは・・・




「ミハル、どうかしら?」


宮殿の中、皇太子妃ユーリが黒髪の少女に訊ねた。


「それが本当ならば・・・行かなければなりませんが・・・」


戸惑い迷った顔をするミハルが、もう一人の皇女の顔を観る。


「私はどうしていいのか、今直ぐには判断できません」


金髪の皇女から顔を背けると、か細く答える。


「そう・・・それでは決心がついたら教えてくれるかしら?」


皇太子妃ユーリは、優しく促すだけに留めた。


「はい・・・・」


俯いてしまったミハルは、はっきりと答えることが出来ずに二人の前から退がるしか出来なかった。

ユーリは退出したミハルを見送り、傍らの妹に訊ねる。


「ミハルは追い求めていくかしら、熱砂の国まで?」


「ええ、ユーリ姉様。あの子はきっと両親を救う為にオスマンへ行くわ」


なにも躊躇わず答える妹リーンを観て、ユーリは溜息を漏らす。


「あなたも・・・それで良いと言うの?」


二人の仲を知っている姉から漏れた言葉に、リーンは瞳を閉じると。


「必ず・・・ミハルは私の元に帰って来るわ。だって約束してるもの私達は」


心に秘めた想いを唱えて、蒼き瞳を魔鋼ミハへと向けるのだった。








「良い?絶対に喋っちゃ駄目よ。私が切り出すから・・・」


アリエッタは第1種軍装を靡かせて俺達に言い聞かせて来た。


「はいはい、同じ事を何回も言わなくて良いよアリエッタ姉様」


ロゼがぶぅぶぅと剥れて言い返しやがる。


宮殿の中庭に2両の戦車が置かれている。

入って来た時に観たんだけど、何かの車両が壁を壊して突入した形跡があった。

どうやらここでも一悶着があったみたいだな。

ロッソアでもそうだったけど、フェアリアでも同じような事が起きたんだと思ったよ。


宮殿の中に戦車を配備している処からして、まだ安心は出来ていないのかもしれないな。


「ともかく!シマダ少尉に会わなきゃならないの。

 今はリーン殿下の副官扱いなんだから、おいそれとは会えないんだからね!」


アリエッタ中尉・・・階級章ではそうなってる・・・が、くどくど言うのには訳があった。


相手は一国の皇女の副官扱いの少尉なんだ、そんじょそこ等の少尉とは訳が違う。

おまけに魔鋼の騎士扱いで一国を救った誉れ高い魔女でもある・・・


「分かってますよ、アリエッタさん。

 でも、どうしても逢わなきゃならないんです俺は」


背におぶった妹を助けなきゃならないんだよ、俺は!


ー ルビ兄ィ・・・なんだかこの辺りに物凄い異能ちからを感じるよ?!


指輪からノエルが怯えるような声で知らせて来てる。

それがプロフェッサー島田の娘からのモノであるのかは分からないが。


「ああ、俺もビンビン感じてるぜノエル」


気が付けば、俺達は宮殿の中庭を通り越して衛兵詰所迄来ていた。

小銃を肩に構えている門番に、アリエッタが話しかけてくれた。


「私は機甲第7師団第3連隊所属のアリエッタ中尉です。

 衛兵隊にお願いがあって罷り越しました。是非当直士官に取り次いでいただきたい」


堂々と名乗るアリエッタの前に居る当番兵は、少し困ったように苦笑いを浮かべると。


「あのぉ、中尉殿。私達は衛兵隊じゃぁないんですが。

 リーン皇女が率いていた第97戦車中隊・・・いえ、今は宮殿警護隊とでも云いましょうか」


自分達の配置に戸惑っているのか、兵長の階級章を着けている栗毛の少女兵が応える。


「はぁ?!それではお前達は臨時の衛兵なのか?」


アリエッタも毒気を抜かれたように戦車と門番兵を見比べて驚いていたら。


「なんだ?ルマ、誰か来たのか?」


詰所の中から准士官が現れた。


「あ、先任。こちらの中尉殿が御用があられるみたいなのですが?」


兵長のが、女性准尉に答える。


「失礼しました中尉殿。私が代わって承りましょう」


堂々とした准尉の姿・・・やはり戦車兵の叩き揚げっぽく感じる。

どちらかと言えばアリエッタ中尉の方が下級者に思えてしまう。


「当隊に御用の向きが有られるのですか?それとも宮内の方でしょうか?」


敬礼を交わした准尉から早速に要件を訊ねられたアリエッタは、衣を正すと切り出した。


「こちらに居られる魔鋼騎士マジカナイトシマダに面会を希望します。

 私の後ろに居る者達の話を聴いていただきたい。

 面会し、お時間をいただく事を願い出た次第です」


大真面目にアリエッタが出向いた訳を告げると、准尉は俺達を観て・・・・


「ぷっ・・・あははははっ!」


不真面目にも大笑いしやがった。

流石にアリエッタもこれには。


「なっ、何がおかしい?!私は大真面目なのだぞ!」


笑い続ける准尉に向けて怒鳴り返した。


「いやいや中尉殿。魔鋼騎士ってミハルのことですよね?

 そう呼ばれるなんて本人が聴いたら恥ずかしがりやがりますから」


准尉は上官のシマダ少尉を名前で呼びやがる・・・おかしな隊風だな確かに。


「それに、あなた方はどんな御用向きで来られたのか。

 魔鋼を告げるからには、あなた方も魔砲使いなのでしょう?」


うわっ?!前言撤回。こいつはマジでおっかない隊かもしれない。


「そこの紅い目の男と、背中におぶってる娘に用があるみたいですが。

 もしや、ミハルの・・・

 魔鋼の少尉が放つ<魔砲>が必要なのではないのでしょうか?」


ぎゃっ?!モノの見事に言い当てられたぜ?


「ど、どうしてそんなことが判るのです?!」


アリエッタも准尉が空恐ろしく感じて来たのか、声が震えている。


「いやぁ、ミハルと永年連れ添ったら。

 嫌でも魔法に詳しくなっちまいますんで、当たりでしょう?」


「うっ?!そうだとしたら・・・面会を取り継がないのか?」


だんだんアリエッタのぼろが出始めて来た・・・・


「いいえぇ~、取り次ぐ必要がないんで。なぁミハル?」


後ろを振り向いた准尉が、詰所の中に呼びかけた。


「考え込んでないで出て来いよ。

 お客さんと話しをすれば、気がまぎれるかも知れないだろ?」


詰所と思われたドアが開いて、誰かが俺達を覗き込んでいる。


「ラミルさん、ルマ。どなたなの?」


聞こえるか聞こえないかの小声が誰何して来た。


「ミハル姉、隠れてないで出てきたら?新聞記者ぶんやじゃないから!」


兵長が手招きしているが、ドアから覗き込んでる人影は出て来ない。


「こちらは・・・えっと、御用向きがあるそうだぜ?」


ラミル准尉が隠れたまま出て来ない影に教えているけど。


「どんな御用なの?」


怯えているのか、はたまた面倒臭いと思ってるのか?

ドアの陰から女の子が訊ねて来る。


「ミハルぅ?!この前記者連中から根掘り葉掘り訊かれたからって、警戒しすぎだろ!」


流石に失礼と感じたのか、ラミル准尉が一喝してくれたよ。


「だ、だってラミルさん・・・トラウマになっちゃたんだもん」


いやあの・・・トラウマの意味が違うと思いますが?


隠れている少女は、間違いなく・・・怯えてたんだ?!


押し問答のような時が一刻流れたが、それをぶち破ったのは・・・俺の相棒だった。


「あ~っ、もうっ!イライラするわねぇ!

 魔鋼マギメタだか魔砲マジカガンナーだか知らないけどっ。

 とっとと出てきたらどうなのよ、この腐れ魔女!」


あああああっ?!あれだけアリエッタさんに停められてたのに?!

ロゼの中から魔女のロゼさんがしゃしゃり出て来たみたいだぜ?!


「なんてこった・・・」


これはもう・・・駄目になるな?呆れてため息しか出なくなっちまったよ。


とほほな気分でアリエッタの顔を観る。

せっかく用立ててくれたのに、何もかもがおじゃんになったか?


「そ、そうよ!これだけ話してるのに顔位見せたらどうなのよ!

 私は少尉よりも上官なんですからね!」


おや?アリエッタさんが珍しく共同戦線を張ったぞ?


詰所の前で俺達がドアに隠れたシマダ少尉に詰め寄っていると。


「なーんだ、また姉さんが天の岩戸に籠ってるのか」


いつ近寄られたのか分からなかったが、不意に後ろから呼びかけられちまった。

途端に指輪の中に居るノエルが悲鳴をあげやがったんだ。


ー きゃぁーっ?!お兄ちゃんっ、化け物が出たぁ!


・・・化け物って?この軍曹がか?


振り向いた先に居るのは。


「ミハル姉に御用があるんですよね?もしかしたらその子の件でしょうか?」


ずばり言い当てて来たのは、俺より少しばかり年下に見える黒髪の軍曹だった。


ー ぎゃぁっ?!やっぱり化け物級に凄い魔法力を持ってるよこのひと


いや・・・ノエル。言い当てられただけで化け物とは?


ー アタシには感じられるの!このヤポン人から物凄い魔力が放たれてるのが!


つまり・・・なにか?この部隊は・・・化け物の集まりなのか?


「あの・・・僕の顔に何か?」


ー ひぃっ?!喋りかけられちゃった!


・・・おい。そこまでびくつくなんて?


ー ルビ兄ィ、逃げよう!


・・・待てって。なにも逃げなくったって良いだろう?


「あ、その蒼い指輪・・・魔法の指輪リングですよね?

 時空を司る・・・って、言うか。危険回避のリングでしょ?」


「ひぃっ?!どうして観ただけで分かるんだ?!」


俺も飛び退いたよ、こいつから感じる恐怖感に。


「あ、あの?どうかしましたか?」


キョトンとする男に、俺は改めて脅威を感じ始めていたんだ。妹と同じく・・・


「ル、ルビィ・・・もしかしたら、アタシ達とんでもない処に来ちゃったんじゃあ?」


魔女さえも動揺を隠せない。オドオドと俺の袖を掴んで引っ張り、男から姿を隠そうとしてたんだが。


「ミハル姉、こちらの方々はどうやら姉さんの魔法に用があるみたいだよ?

 宿る魂を移動させて欲しいみたいなんだけど、どうする?」


ずばりというか・・・観ただけでどうしてそこまで解ったんだっ?!


ー ひいいぃっ?!お兄ちゃん怖いようぅっ!


「にゃぁっ?!にゃんで分かったんだにゃぁ?!」


指輪に宿らされたノエルも魔女の魂を宿したロゼも。

驚愕を越えて泣いて怯えている・・・ぞ?!


「なっ?!なぜそう言い切れるっ?どうして見透かしたんだ?!」


ノエルとロゼを背後に隠し、俺は半歩後退った。


「え?!どうしてって・・・丸見えなんですけど?」


軍曹が俺の指輪とロゼを交互に指して。


「ああ、言い忘れてましたね。

 僕はミハル姉の弟で、魔鋼騎乗りのシマダ・マモルっていうんですよ」


にっこり笑いやがる軍曹に、俺達はポカンと顎を落としていた。


挿絵(By みてみん)



でましたね、ミハルとマモルが!

魔鋼騎戦記フェアリア当時の2人・・・と、言う事は?!


<光と闇を抱く巫女>・・・


で・・・次回は?

遂にノエル救出なる?!


次回 福光ふっこう 第6話

光が・・・彼女の異能を表した・・・そう、福音の光が俺達に降り注いだんだ!



ミハル・・・やっぱりTUEEEEEEE・・・・

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