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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
第7章 明日への希望
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終わりと始まり 第4話

汽車から降りた後。

やっぱりアイツがごねたんだ・・・

汽車から降りた俺達だったけど。

都に行く方法を考えてなかったんだ。

ぶらぶら歩いて行く訳にもいかないだろう?遠足じゃないんだからさ。



「ルビぃ、疲れたんじゃないの?」


ロゼが気にしてくれたけど、代わって欲しいとは言えないよ。

背におんぶしてるのは俺の妹なんだから。


「気にすんなよロゼ。ノエルは軽いから・・・」


そう強がりを言っても、俺の額に浮き出てる汗を観れば重労働だって解かるだろ?

背に担いだノエルを冷やさないように防寒具を着ているからもある。

おんぶしたまま雪道を歩く辛さが分って貰えるかな?


「ルビが強がりを言うからもあるけど、王女さんも耐えてくれているみたいだな」


王女エルはこんな雪道を遅れもせずに歩いている。

カインに付き添われているにしても、王女がこんな長距離を文句ひとつ零さずに歩けるなんて俺にも信じられなかったぜ。


「そうだぜロゼ、寒いなんて溢したら罰が当たるぜ?」


「うっ、うるさいわね!疲れと寒さは別ものなのよ!」


文句を返しながらも、ロゼは王女とカインを羨ましそうに眺めている。

連れだって歩く男女は、幼馴染を越えて睦ましくも見えるのだろう。


「なんだロゼ?寒いからって誰かさんとくっつきたいのかよ?」


気付いたレオンが茶化して来るが、当のロゼは寒さに震える様に。


「ねぇ、すこーしで良いから、コートの中に入らせてくれない?」


「・・・はぁ?!」


俺の代わりにレオンが呆れ果ててくれたよ。

寒がりロゼは仲睦ましい幼馴染を観て、単に温かそうと思っていただけらしい。


「そんなに寒いのなら、私とくっつけば良いだろ?」


俺に気を遣ってくれたレオンが折衷案を出してくれる。


「にょっ?!ホント?」


やっぱり誰でも良かったんだ・・・ロゼは本当に寒がりな魔女だな。

どうしてこんなに寒がりなんだろう?

今にしてそう思うようになった、遅いけど。


鞄から迷彩幌を取り出して二人揃って頭から被る姿を観て、尚更気になって来たんだ。


「そういやぁ、魔女ロゼさんは寒さに弱いと溢してたけど。

 なぜこうまで寒がりなんだ?フェアリアも冬ともなれば雪だって積もるのに?」


二人が幌を被り終えるの待って、魔女の宿るロゼに訊いてみた。


「アタシは暑いのも寒いのも苦手なだけだけど。

 そう言えばこんなに寒がりじゃなかったような・・・なぜ?」


おいおい・・・知らなかったのかよ?

お前に宿った魔女に訊いてみたらどうなんだ?


「それは・・・私の魂が寒くさせているのよ。

 宿ったロゼッタには悪いけど、私の魂が躰を冷たくしているのよ」


「え?!それってどう意味なんだ?」


くっついたレオンがロゼに触れると。


「冷てぇ・・・まるで死人の様だぜロゼ?!」


驚いたレオンが何気なく言ってしまった・・・死人と。


「そう、私はとうの昔に死んだ魔女だから。

 死人を宿した躰まで冷たくしてしまう・・・私と同じように」


魔女の口からロゼが極端に寒がりな訳が知らされたんだ。


「もしもロゼッタに魔法力がなかったのなら、とうの昔に凍死していたかもしれない。

 辛うじてロゼは魔法力で体温を最低限度で保てている・・・死なない程度によ」


驚いたぜ、魔女の言う通りなら魔法力が切れてしまえばロゼは?!


「大変だぞルビ!ロゼの躰は本当に冷たくなってる。

 このまま歩きで行くなら、途中で魔法力が切れちまうかもしれないぞ!」


レオンが心配したのは俺と同じ考えだ。

宛もなく彷徨い歩いてたら、いつかはロゼの躰は・・・


「カイン、この辺りに暖をとれるような場所はないのか?

 村や町、この際どこでだって良いんだ!」


地理に詳しくないから、頼りとなるのはこいつしかいない。


「いや、残念だが。終着駅迄行けば敵が待ち構えているだろうし・・・」


言い辛そうにカインが口を濁す。


「しまった・・・もっとよく計画を練れば良かった」


後からの祭り。臍を噛んだ俺に指輪が教えてくれる。


ー ルビ兄ィ、心配いらないよ。もう直ぐ騎兵隊がやって来るからね?!


騎兵隊?!何の事だよノエル?


心へ向けて問いかけようとした時だ。


「いかんっ!何かがやってくるぞ?!」


耳ざといレオンの声が注意を促して来たんだ。






雪の中を集団で動いていやがる。

もしも車輪を付けたモノだったら、エンジン音がしただろうけど。

そいつらからは人馬のうななきぐらいしか聞こえて来なかった。


馬郡の群れと幌馬車、それは紅き旗を翻してやがったんだ。


「どうやらガッシュ達と同じ様な奴等みたいだな」


迷彩幌を被り、相手の様子を伺う。

前に出遭った反乱軍を思い出し、警戒する事に決めていた。

もしかしたら、また私欲に奔る奴等かも知れないんだから。


振り返るとカインと王女が身を固くしているのが見えて。


「安心しな、アンタ達を売る様なマネはしないからさ」


理解し合えた友を売るなんて、俺には死んでも出来やしないさ。

安心しろと伝えて、旗を掲げる奴等を監視し続ける。


人数は凡そ30人ぐらいか。

馬に跨る男達は、この辺りの人間ではなさそうに観える。

防寒帽は何かの毛皮だし、羽織っているのも熊か何かの毛皮だろう。

まるで古代の先住民みたいにも見えるが、それが彼等の普段服なだけだろうと思えた。


「おい・・・ルビ、見ろよ」


肘でレオンが知らせて来る。


「あいつ等、どこであんな物を手にしやがったんだ?」


幌馬車の後ろからはみ出ている金属棒。

それは間違いなく大砲の砲身だろう。

あの太さから考えて、40ミリかよくて50ミリクラスの歩兵砲って処か。

毛皮を着こんだ男達からは想像も出来ない武器だとも言えるが。


「どうやら、それなりに戦績があるようだな。

 ボスらしい奴の眼を観ても、なかなかの面魂って思えるぜ?」


馬郡の前を進む男を観て、レオンは尚更気を引き締めている。

俺達が闘って勝てる相手じゃないのだと、眉を顰めて教えている。


「それに、あいつ等全員が持っている銃は、みんな正規軍のトカレフだぜ?」


騎馬銃じゃない。あれは前線でさえも眼にする事が少ない機関短銃だ。

馬に乗りながらボルトアクションの小銃を撃つのは、よほど腕のいい奴だけ。

それに対してこいつらが持つ自動小銃は、引き金を絞るだけで連射出来る。


「つまり、こいつらはなかなかの装備を持ち、それなりに実戦を積んで来たってことだよな?」


そうなれば俺達がいくら魔法使いだって言っても、おいそれとは脅しは効かないってことだぜ。


「だろうな・・・でも、あの馬車が欲しい・・・だろ?」


良く解ってるじゃないか。その通りだよレオン。


「ノエルが言ったんだよ、騎兵隊が来るってさ」


俺が言った<騎兵隊>に、レオンが少し考えてから言い返して来た。


「そうか・・・仲間にするってんだな?あいつ等を」


「そう、それにはレオンとロゼの力を借りたいんだ。勿論、決め手は王女さんだけどな」


俺に一計が浮かんでいたんだ、時の指輪に居る妹の言葉を借りれば。


「紅き旗をはためかせているからには、反乱分子には間違いないけど。

 どう転んでも民衆の為に立ち上がった奴等には見えない。

 恐らく反乱に乗じて分捕る野盗とかの類と思えるんだよな」


それじゃぁ、却って身ぐるみ剥がされそうだけど?

俺の言葉を待つレオンが、そう言いたげに小首を傾げるのを観てから。


「少し前に居ただろ?俺達を出汁にしようとした奴が。

 それの逆手に行くんだよ、奴等だって取れるか分からないものを手探りするより手っ取り早い筈だからな」


そう言ってから王女エルに振り向くと。


「王女って証が示せるかい?この国を任せられる証がみせれるかい?」


策略の一端を開示してみせたんだ。



「おーいっ!そこの猟民イェーガァー。話があるんだ」


俺が手を挙げた状態で近寄ると、件の男が戻って来た。


「見掛けねぇ野郎だな、俺達を猟民扱いするとは無礼だぞ!」


声高に男が応える。

しめしめ・・と、俺は心の中で喝采をあげたよ、こいつは貰ったと。


「なぁ、俺達と都迄攻め寄せないか?美味しい話があるんだよ」


そう言ってからカインから預かった金貨を見せてやったんだ。


「これをたんまりせしめたいとは思わねぇか?」


金貨を観た髭面の男の眼が怪しく光るのを、俺は見逃さなかった。

これで、ノエルもロゼも辛さから解放出来るなと、細く笑みながら・・・



なにやら怪しい男が目の前に居た。

でも、意外な事に髭親爺は紳士だったんだ。

いいや、真摯な男だったんだぜ?


次回 終わりと始まり 第5話

君に傅く男は、一家の棟梁であり一族を率いて来ていた・・・

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