表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
第7章 明日への希望
118/133

終わりと始まり 第3話

ルビと妹にまつわる謎。


それは兄妹だからこそなのか?

終着駅で降りるつもりだったけど、予定が変わった・・・


それが功を奏したなんて、後から分かったことだけど。


一つ手前で臨時停車した時に降りる事にしたんだ。

何かの前触れだったのかは知らないけど。



「「本列車は、線路上の不審物を発見した為に一時停車致します。

 乗客の皆さまには大変ご迷惑をおかけいたします」」


車掌が謝罪を繰り返し放送して来た時に言ったんだ。


「なぁ、停まったら降りねぇか?」


嫌な予感というか、指輪のノエルが言って来たんだ。

<何かが待ち伏せてる気がするの>・・・って。


王女を捉えようとしていた憲兵からの通報でも来ているのかもしれない。

終着駅までは後30分もあれば辿り着けるだろう思っていた矢先に・・・だ。


「え?!停車するって言っても線路上だぜルビ?」


レオンが怪訝な面持ちで訊き返して来るのを、俺は指輪を差し出して教えたんだ。


「分かってる。

 だけど、ノエルの言葉を俺は信じたいんだ。指輪の魔女の言葉をね」


俺の仕草にレオンは頷くとエルとカインに注釈を加えてくれる。


「ああ、ルビナスの指輪にはそこに眠っている妹が閉じ込められているんだ。

 アンタ等が言った将軍の企みの所為で、魂を抜き去られてしまってるんだ」


レオンは自分も受けた実験には触れず、妹の事だけを話してくれた。


「あの子を救うには強力な魔法力が必要なんだと。

 研究者がルビに話した事に依れば、魔王の力が必要らしいのだが・・・」


端的に言えばレオンの言う通りだけど、ちょっとだけ加えて良いか?


「そうだけどさ、プロフェッサー島田によれば俺達だけじゃぁ魔王をどうにかできるとは思えないぜ。

 プロの研究者でも魂を入れ替えることは途方もないらしいからさ。

 此処に居ない研究者を頼る事も出来ないし、

 肝心の魔王とかいう奴も将軍に宿ってどっかに行っちまったんだろ?

 追いかけてとっ捕まえてもどうにもならないさ。

 そこでだよ、俺達はアンタ等と共に都に舞い戻ろうと思うんだ」


俺の言いたいのは、王女エルにロッソアをどうするかを任せようって意味なんだ。

妹の事は助けたいさ、でもさ今は魔王も都には居ないってことだろ?

魔王が居ないのなら、呪いの影響も低まっているんじゃないかと思うんだ。


だとしたらエルの親爺とか言う皇帝も、正気を取り戻せるかもしれないしさ?


「王女さんは皇帝を救いたいのかい?それとも民の味方になって滅ぼしたいのか?」


レオンが、俺の意を汲んで訊いてくれた。


「それは・・・叶うなら・・・命だけは助けたいの」


ポツリと本音が零れた。

他国に逃げようと試みていたにしても、本当は諦めきれていなかったのだと。


「エル・・・エルリッヒ王女。それが本当の君の答えなんだね?」


カインが少しだけ悲しげな声で訊き質した。


「ごめんなさいカイン。

 今話を聴いて思い直したの・・・私は祖国を愛するように家族も愛しているんだって」


謝るエルの手を取って、カインが首を振った。


「謝る必要なんて無い。エルが初めから戸惑っていたのが分っていたから。

 僕の手を握って震えていたのを感じていたのだから・・・」


逃げ出す事への躊躇いと、いくら酷い皇帝だと言っても父を見捨ててしまう事に対する猜疑心。

逃げる途中でも想いは揺れ動いていたと、カインは感じていた。


二人を観ていて俺は思ったよ。

この二人が王と妃なら、ロッソアは滅びはせずに済むのではないって。


だけど、紅き旗に組みする者達は、皇帝を赦しはしないだろう。

その娘や味方する者に対してだって、攻撃は向けられるだろう。


だとしたらどうやって救えると言うのか?

どうすればロッソアを清浄なる国へ導けるのか?


俺は指輪に居る妹に魔導書を開いてくれるように頼んだんだ。


「ノエルは、さっき嫌な予感がするって言ったけど。

 どうしてそう予告めいた事が解ったんだ?」


ー どうしてって・・・予感だもん


戸惑う言葉の端から、妹には未来が判るんじゃないのかと思えた。


「もしかしてノエルには予知能力があるんじゃないのか?」


そう、俺が訊きたいのは魔女となっているノエルの異能。

もともと俺にあったように、ノエルにも魔鋼の力が継承されている筈だ。

ルナナイトの血を受け継ぐ者として・・・


ー そんなことはないと思うよ?

  もし予知能力があったならお母さん達を救えた筈だもの・・・


悲し気に話すノエル。

だけど引っ掛かってる事があったのを思い出した、今更だけど。


「なぁ?どうして一人だけで逃げたんだ?村が襲われた時に。

 その時、指輪は持っていたのか?

 どうして俺の手に渡って来たのか教えて欲しいんだ」


戦争が始まった時の話。

俺達が運命に呑まれちまった日、妹はたった独り生き残れた。

その訳と指輪がもつ意味を知りたかったんだよ。


ー え・・・あの日?あの日は・・・


思い出そうとしてノエルが息を呑んだ。

魔女となるきっかけになってしまった月夜の悲劇を。


「ノエルはあの日に指輪を外してしまったんだろ?

 俺に託す為に・・・自分では使い道のない指輪まほうってものを」


気が付いてたさ、ノエルには時の魔法が使えない事くらい。

母さんから譲り受けた指輪の使い方を知らなかっただけじゃない。

もともとノエルには過去に戻す魔法が使えなかったんだって。


同じ魔法でも俺とノエルは、正反対の力を授かったんじゃないのかってな。


過去に戻せる俺、未来を見通せるノエル。


古の騎士が自分の未来を知って、魔女ロゼに子供を託したように・・・


ー あの日はねルビ兄ぃ。ルビ兄ぃが出発するから占っていたんだよ。

  そしたらルビ兄ぃが酷い目に遭わされちゃうのが観えちゃって。

  暗い気持ちになってて、言い出せなかったの。

  本当に戦争が起きるなんてとても・・・言い出せなかったの別れる時まで。

  その夜ロッソア軍が押し寄せて来て、渡さなきゃって思ったんだ指輪を!


・・・やっぱりか。ノエルには未来を観る力が授けられていたのか。

だとしたら、この先に起きることも今なら観える筈だろ?


「ノエル・・・見通せないか?変えられないのか?

 俺達の魔鋼の力って奴で、未来を明るい物に出来ないのか?」


指輪と同化している今なら、俺達は古の騎士と同じ力を発揮出来る筈だろ?

騎士は諦めちまったようだが、俺は諦めが悪い男だからさ、同じ轍は踏みたくないんだ。

未来が暗いのなら、明るい物へと変えれないのかって考えるんだ。


ー 明るいモノ?ルビ兄ぃのいう未来は暗いモノだって言うの?


あれ?!違ったのか?


ー アタシに見えたのは少しだけ先の未来。遠い未来は見えないんだよ?

  だってアタシがロッソアに捕まるのも見えなかったし、ルビ兄ぃに救われるなんて思いもしなかった。

  今だって見えたのはこの汽車が脱線する光景だもの・・・


「なんだって?!脱線する?」


思わず声を荒げてしまった。

指輪とのやり取りは心の中でしていたのに・・・だ。


「脱線?!なんのことだよ?」


急に話したからレオンが問い質して来たけど、詳しい事は言えない。


「この汽車は脱線してしまうかもしれないって言うんだよ」


妹の言葉を鵜呑みするならば・・・このまま乗ってはいられない。


ー もしかしたら脱線するだけじゃぁ済まないかもしれない。

  脱線させた者によってもっと酷い事になるかも知れないの・・・


そうか、やっぱり憲兵の知らせを受けた奴等が待ち構えているんだな?

それなら初めに言っていた通り降りなきゃならないが・・・


ー ねぇルビ兄ぃ、他の乗客さんや乗務員さん達も助けられないかなぁ?


未来を変えれるとでも言うのか?未来を知った者には?


「脱線させる奴等が、見逃す筈が無いだろ?」


どうやって救えるんだ・・・考えてみろ。


「相手の規模とか、脱線させる方法とかが分らない事には・・・」


考えてみたって対処の方法も判らないぜ?


ー あの・・・さぁ。見えたのは汽車が爆発したんだよね。

  その後も停まった汽車に爆発が続いたんだ、次々とね・・・


「え?!・・・爆発が続いた?って事は時限爆弾って奴なのか?」


ー それは判んないけど。弾が飛んで来たって事は無いと思うんだ・・・


言葉の端には自信が無さげにも思えるが、ノエルが観たのを総合すると。


「そうか!汽車を一時停車させたのも、それを仕掛ける為だってことか!」


敵は姑息な手を使って来たんだ。

線路上に遮蔽物を置き、停車させている間に爆発物を仕掛けるつもりなんだ!


「わかったぜノエル!これで汽車も乗客たちも救えるかもしれないぜ!」


俺の声にみんなが目を丸くしやがった・・・仕方がないけど。






汽車が停まり、乗務員たちが総出で線路上に置かれた荷車を除けにかかっている。


客車は全部で8両。一番後列の客車が俺達が乗っていた貴賓客用寝台車。


「やっぱり・・・ルビの言った通りだったぜ?!」


自動拳銃を片手に、レオンが促して来る。


「ロゼ、ノエルを頼んだぜ?」


旅行鞄からカインの拳銃を借りた俺が、ノエルを担いだロゼに頼む。


「分かってるわよ、アンタも気を付けなさいよ?」


イザという時の為、ロゼにはノエルと二人を護るように頼んであった。

こっそり近付いたつもりだろうけど、事前に悟った俺達には丸見えだぜ。


線路わきに身を潜め、数人の男らが何かを持って客車へと忍び寄るのを観ていた。


「全部で3人か・・・俺は二人、レオンはアイツをやってくれ」


指で相手を指定して、行動に移った。


忍び寄る男の背後に廻り込んで・・・


「残念だったな、テロリスト野郎!」


後頭部へ台尻の一撃を与えてやった。


「?!」


声も出さず男は崩れ落ちる。

手にしていた袋には、やはり爆薬らしい時計付きの異物が入っていた。


もう一人に対しても同じように忍び寄って叩きのめしてやった。

気が付いた頃には汽車は走り出しているだろうさ。

一応、二人の袋は俺が手の届かい処へ隠して置いたけどね。


離れた所に居るレオンも巧くやったみたいで、男は既に倒れた後だった。


「よし・・・これで汽車は駅まで辿り着けるだろう」


ー うん!なんだかさっきの予知夢みたいなのが消えたよ!


指輪で喝采をあげるノエルに頷く。

やっぱり、ノエルの見た未来は変える事が出来そうだ。


「そうなると・・・俺達は王女を救えるかもしれないぜ?

 このロッソアを闇から救えるのかもしれない・・・俺達の手で!」


時の魔法使いである俺達兄妹によって・・・だぜ?




そこで汽車から降りた5(6?)人は、都へと向かう事にしたんだ。

途中で出遭う事になる、試練を想いながらも。


王女エルとカインの願いを果してやる為にも・・・な。



時の魔法使いは2人に引き継がれていた?!

ルビには過去に戻せる力が。

ノエルには未来を見れる力が?!


2つの力が合さる時、ロッソアの未来はどうなるというのか?


いよいよ王女エルを擁して都へ向かうのか?


次回 終わりと始まり 第4話

君たちに待ち受けていたのは<冬将軍>?!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] にゃるほど。 未来が見えたら便利だよなぁ……。 その上で、悪い状況を回避する手段も実行できるというもの。 いやー、でも。 私の勝手な予想だけど、今さら王様は助けられないと思うのですわよ。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ