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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
第7章 明日への希望
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終わりと始まり 第2話

いよいよ、物語はロッソアの秘密を暴きに掛かります。


魔女ロゼの秘密も・・・

フェアリアに帰る予定は、二人と出逢った事に因って変更したんだ。


母国に無事に帰れるかも分からない状況下にあると知らされた俺達。

だけど、目の前にある<願望ねがい>を知ったからさ。


願いってのが分らない?

俺達に希望きぼうを与えてくれる存在って・・・何だと思う?


魔法ちから>だよ、でっかい<野望ちから>だよ。


俺にだってとてつもない力が与えられてたさ、時を戻せる異能が。


だけど<そいつ>は俺の魔法の数倍、いいや数十倍も手強いんだぜ?

望みが果たせるかは俺自身にかかっているんだ。


気になるだろ?知りたいだろう?


勿体ぶらずに話せって?


分かってるよ、教えてやるさ・・・今。





「もう一度だけ訊かせてよエル王女。

 あなたの知っている魔王の存在について!」


魔女のロゼが勢いのあまり乗り出して来た。


「いいや、それはカインの方が知っているんじゃないか?

 武官だったし、軍の情報にも詳しいだろ?」


ロゼとまではいかないけど、俺もそいつの事が知りたいんだ。

だって、研究所で聞いちまってたんだから、魔王の存在が齎す事を。


「あ、あの。私は詳しく知らないんですけど?」


白金髪のエルが困ったように傍の男を促す。


「ああ、エルは軍には興味が無かったからね。

 僕もそんなには詳しくはないけど、漏れ聞いていたんだよ。

 魔鋼の巨大戦車には機密情報があったのを」


何かを思い出そうとしたのか一旦口を噤むと、荷物の中から一冊のノートを取り出した。


「そうそう、あれはギガンテスとか言う巨大戦車に方面軍の将軍が乗り込む事になったんだけど。

 なにやら得体のしれない装置を載せたとか、強力な魔鋼の力を発揮させるんだとか言ってたな」


ページを捲るカインの手が停まる。


「その強力な魔力でフェアリアを殲滅する作戦らしい。

 バローニア将軍とかいう奴の強硬な意見具申だったらしいのだけど・・・」


「だけど?だけど・・・どうしたんだよ?」


意味有り気に言葉を切られたから、気になってレオンが問い詰める。

口を噤んだカインが、聞き咎めたレオンに目を向けると。


「報告書にあるのは、バローニアがこう言ったと書いてあるんだ。

 <最強の闇を手に入れた。フェアリアはそいつによって闇に堕ちるのだ>って・・・」


・・・・


俺と魔女ロゼには薄っすらとだけど、カインの教えた意味が分かったんだ。

研究所で出会ったプロフェッサー島田の言葉を思い起こして。


「なんだぁ?闇って何の事だよ?堕ちるって国がかい?」


レオンは知らない。闇っていうのがどういうモノかなんて。


「さぁ?僕にだって分かりやしないさ、極秘兵器がどんなものかなんて」


カインが応えても、俺と魔女は不思議がりやしない。

知っているのは島田と、そのバローニアとか言う悪魔の化身だけだろう。

俺にだって本当は判りやしない。だけどその意味がとんでもないのは判る。


「なぁカイン。あんたは魔王って存在が実在すると思うかい?」


無駄だろうけど、一応聞いてみる事にした。


「はぁ?魔王・・・あの神と争う悪魔の事か?」


・・・ほらね。


「そう。ロッソアの伝承にも出て来るんじゃない?」


魔女が後を引き取って訊いてくれた。

普通ならそんな馬鹿な話と嗤われるだろうけど。


「ああ、古から伝えられた魔王の話なら知ってるが?」


魔女の言葉に何かを感じたのか、カインが真顔で返して来る。


「それが?何か関係でもあるのか?」


「あるから・・・訊いたのよ」


魔女ロゼも本気だと、真顔で受け答えして。


「その邪な将軍とやらは、魔王を連れ出す事に成功した・・・

 いいえ、魔王が将軍に宿ったのかもしれないわ!」


考えられる範囲で仮定した。


「フェアリアを滅ぼすって言うのは単なる建前。

 本当の狙いは多分人類全てに対する攻撃、若しくは言っていた通り殲滅を図った?」


魔女の口から仮定ではあるが、魔王の狙いが語られた。


「まさか?本気でそう言ってるのかよロゼ?」


レオンも、あまりに話が唐突過ぎて笑い顔になって質して来たが。


「仮定の話。だけど、魔王が宿ってしまったのならあり得ない話じゃないわ」


魔女の口はその存在を否定していない。

本当に魔王というものが居ると思わせるくらいだ。


「神と悪魔なんて想像の産物だろ?実在するなんて・・・」


信じられないレオンが魔女の仮定を疑うが。

傍の乙女からの言葉で、仮定が真実味を帯びて来る。

それは・・・


「あの・・・もしかしてですけど。

 その魔王って呼ばれる者の事ですが、ロッソアに伝えられる北の魔王ベルゼブブのことでしょうか?」


それまで黙って俺達の話を聴いていたエル王女が口を挟んで来たんだ。


「王宮に掲げられていたタペストリーに描かれていたのですけど。

 古の魔王がロッソアを闇に貶めようとしていた姿を描いてあるのです」


「王宮に?それはどんな姿で?どのような背景があるのです?」


エルの言葉に魔女が反応する。


「はい・・・歪な蠅のような。人の容ですけど邪悪そのものって感じで」


「なるほど。それでそいつは何を企むと記されてあった?」


次々に問う魔女。

そして王女が答えるのは。


「ええ、ロッソアを呪う魂に導かれて闇を振り撒くのだとか。

 ですが、光によって企みは潰えたと記されてあるのですが?」


「・・・潰えた・・・か」


壁絵タペストリーに描かれたのが本当に事実ならば。

そう言う意味で魔女が言ったとばかり思ったんだ。

だけども。俺は自分の考えが浅はかだったと知らされる事になる。


「確かに。魔王らしい化け物は光に追いやられたように描いてありましたね」


王宮に務めていたカインも観た事があるのだろう。

王女の言葉を後押しして、魔王ベルゼブブは滅んだと言った時。


「違う、滅んだのではない。眠りに就かされただけだ!」


叫んだ魔女を観た時、その眼が澱んでいると感じたんだ。

まるで魔女が魔王と出遭ってしまったかのように。





声を荒げた魔女を観たのはこの時が初めてだった。

時に冷静に、時に優しく。それが魔女のロゼだと思っていた。

それが声を荒げて俺達に知らせたんだから、驚くしかなかったんだ。


「北の魔王は滅んでなんかいない。

 奴は<光と闇を抱く者>によって眠らされただけだ。

 今の場所に・・・そう。お前達ロッソア王朝の礎にされて」


魔女が俯き加減に話すのは、古の出来事なのか。

俺達は黙って彼女が話す古の物語を耳にした。


「私も本当の事を目にした訳ではない。

 だが、流浪の吟遊詩人の話によれば・・・

 ロッソアを滅ぼそうと試みた悪魔と手を携えたベルゼブブを、強大なる魔力を持った者が討ち平らげたという。その勇者は<光と闇の力を受け継ぎ>、魔王の力を逆手に取ったようなのだ。

 強力な闇の力を使い、より強大なる魔王を眠りに就かせたのだと聞いた」


魔女曰く、古来の魔王ベルゼブブは<勇者>によって眠りに就いただけなのだと言う。

その魔王が眠りから目覚めた?

北の魔王が蘇り、バローニアとか言う将軍に宿った?

では、その目的は?


「魔王が目覚めたというのなら、まず最初に狙うのは・・・」


魔女ロゼが王女エルに目を向ける。


「自らを封じた者への復讐。それは・・・ロッソア王朝の破滅」


エルの眼が大きく見開く。


「まさか?!だってカインが言ってたじゃないか。

 フェアリアを殲滅するのが目的だって・・・」


レオンが自分が言った事の意味を考えて口を噤んだ。


「そう、フェアリアに対しても・・・と、言う意味ではね」


つまり、魔女が言う意味は。


将軍まおうが狙ったのは、人類全てに対しての攻撃。

 最初に私が仮定した通り魔王の真の目的は、自らを眠りに就かせた人類全てを滅ぼす事」


魔女は俺達に知らせようとしている。

遂に本当の闇が姿を現したのだと。


もしかするとロッソアが干戈を開いたのも、魔王が策動していたかもしれないのだと。

それなら・・・俺が本当に復讐する相手とは?


「もしも、王女の父君が闇に支配されているのであれば。

 助け出す事も可能かもしれない。魔王を滅ぼす者がいるのならば」


そう、魔女の言った通りだ。

もしもそれが可能ならば・・・だけど。

だから、俺は今後を決める為に訊いたんだ。


「なぁ、ロゼ?魔王って奴は、人間でも滅ぼせるのかい?」

 


嘗て北の魔王ベルゼブブは<光と闇を抱く者>に封じられた。

だが、人間の闇により目覚めたという。

フェアリアに向ったバローニア将軍と同道したという。


もし、「魔鋼騎戦記フェアリア」をお読みならこの辺りの話もご存知かな?

赤毛玉ルシファーによって倒されることになるのですけど・・・


さて、時系列上では間も無くフェアリアで最終決戦が始まるところです。

後2ヶ月でロッソアとの戦争が終るのですが・・・どうなるのでしょう?


次回 終わりと始まり 第3話

汽車から降りることになるルビは、ある事実を知ることになるのです。


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― 新着の感想 ―
[一言] ついに明かされるいろいろな疑問……。 段々とスケールが大きくなってきたなぁ。 お父様を無事に助けられるといいけどね。 伝承とか伝説って、実際にあったことを元にしてるものですもんね。 まお…
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