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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
<ロッソア>編 第6章 紅き旗
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妹(ノエル)奪還 第5話

魔導書に書かれた秘密。

そこには人ならざる力こそが魂を救えるのだと記されていた

ノエルが携える魔導書。


古の魔女達から授かった、俺達の家に伝えられて来た<魔法の古書>。

それがなぜ島田の手に在るのか?


「そいつは?!魔導書って奴なんじゃ?」


指輪の中に居る妹の魂も、答えを待っている。

どうしてそれが手に在るのかと。


「そう、これは日の本より持参した魔法の古書。

 君達が魔導書と呼んでいる古からの技術が書き記された本だ」


古びた表紙には、何語かも分からない文字が記されている。


「此処に記されてあるのは、どうやれば魔鋼の力を取り出せるかと。

 光と闇の力の使い道・・・そして」


言い澱んだ島田が、重い口を開くと俺に言ったんだ。


「魂の取り戻し方。

 魔王に奪われた魂を、どうやれば器に戻せるか・・・」


「なんだって?!出来るのかよ、そんなことが?!」


咄嗟に訊いていたんだ。

出来るのなら・・・取り戻せるというのなら。


「魔王が居なくたって、そんな事が可能なの?!」


魔女のロゼも真実なのかを問い質す。

本当に可能なのなら、諦めるなんて出来っこないから。


「可能・・・そう書かれてある。

 だがしかし、それには人間離れした異能ちからが必要なのだ」


認めた島田が、苦し気に古書を観る。


「記されてあるのは、人の限界をも超えた力。

 神の領域に踏み込んだ能力が、必要であるのは間違いない」


知らされたのは人以外の異能を持つ者。

そんな能力を誇る者が居るのかと思わされるだけ。


「この古書には記されているのだ。

 古の時代に天使が存在し、魔王の力をも携えていたのだと。

 その力を以ってすれば、魂は救われ元に戻せるのだと」


古書に記されたのを要約すれば、

古には魂を扱える天使が居て、魔王級の魔力で魂を救った・・・


島田が言うのは、その天使がこの世界にも居るのではないか?

その力がどこかに眠っているのではないかという事らしい。


「私には魔王が存在するのであれば、その天使が存在していると考えられるのだ。

 どちらも対極、片方だけが存在するなどあり得ないのだよ」


もし悪魔が陰というのなら、天使は光・・・


「光と影は必ず同じ場所にある。

 モノの姿を標すのは<光と影>・・・必ず存在するのだよ」


魔導書を叩きながら、力説するプロフェッサー島田。

でも、その天使とやらは実在するのか?

どこを探せば見つけられるんだ?


「一つ。一つ訊いても良いかしら?

 その天使は人の世界に居るのか・・・天国にでも居ると言うのかしら?」


魔女も同じ想いだったらしく、問い質してくる。


「君達は何か思い違いをしているようだな。

 私が知らせたのは<天使>の力を持つ者・・・人間の中に眠るものを指したのだよ」


「なんですって?!この世界の中に居るというのね?」


それがプロフェッサー島田の研究の成果。

魔王の力を調べつつ、それに勝る力を追い求め続けた結果だろう。


「考えてみ給え。

 もしこの世に悪魔達だけが存在するのなら、既に闇に堕ちている筈ではないか?」


そうとも言える。

もしも悪魔だけが存在しているのなら、人間が居る意味もない。

魔物達に因って世界はとうの昔に混沌へと貶められている筈だから。


「可能性はあるというのね?

 私達が救われる日が来る可能性が?」


「信じるかは君達次第だ」


言い切られてしまった。

悪魔の実験に手を貸していた男に。

この島田だって、俺達を悪魔の元へ連れ出すかもしれないというのに。


「信じるか信じないか何て関係ない。

 俺はノエルを元に戻すだけに生きるんだ、諦めたりはしないぞ」


はっきりと断言してやった。


「それが何年懸ろうと。

 俺は諦めないし、絶望なんてしないさ!」


さっきまでとは全然違う。

希望を知らされた今なら、希望に向けて突き進めば良いのだから。


「そうか・・・君にも強き想いがあるのだな」


ふっと、顔を緩ませたプロフェッサー島田が。


「ならば、旅立つと良い。

 君の想う様に、君と仲間達が向かう希望へと」


俺達に向けてそう言って来た。

探し求めるおれたちへと、望みを託すように。


「アンタは・・・どうする気よ?」


いつの間にか魔女が引っ込んでロゼに戻っていやがる。


「アタシ達に望みを託して・・・これからどうする気なのよ?」


ノエルを抱えた俺を越えて、プロフェッサー島田へ問いかけるロゼ。


「まさか・・・魔王の元へ行く気なの?」


問い詰めたロゼに、拒否しない島田。


「私と妻、それにもう一人の娘。

 奴の元へ行かねばならない。そうすればいずれきぼうにも出会えるだろうからな」


遠い目を南に向けて答えた島田へ、ロゼの眉が潜む。


「最期に訊きたいのよね。

 アンタのきぼうって奴の事を・・・さ?」


訊き質された島田が、サングラスを外して目を向けて来る。

その瞳に在るのは?


「私には姉弟こどもがいてね。

 ここより遠い彼の地に・・・ミユキの力を継承した二人がね」


黒い瞳には、僅かだが光が見て取れた。

俺達に<きぼう>と告げていたモノの所在に重ね合わせて、そう告げたんだ。


ー ルビ兄ぃ・・・


指輪の中でノエルが伝えたがっている。

このプロフェッサー島田も、俺達と同じなんだと。


人間に潜む業に、運命を狂わされたのだってね・・・





「この研究所は近い内に閉鎖されるだろう。

 救出に来る者に伝えて欲しい。来るのなら明後日以降にすれば良いと。

 そうすれば無意味な殺戮をせずに済むと・・・」


島田が教えてくれた。

この研究所は明日にはもぬけの殻になるのだという事を。


「ガラスケースに収まる魔法少女達には申し訳ないが、このままにしておくように命じてある。

 救いの手が届くまでの間、全員の躰は眠り続ける事になっているんだ。

 電力も、繋がれた生命維持装置も。動かしたままにしておくように言い渡してある」


研究所に繋がる秘密の地下道へ連れて来られた俺とロゼ、それに眠り続けるノエル。

脱出を促す島田によって、ノエルが目覚めるまでの生命維持方法を教わった。


「魂が抜けたとはいえ、脳波も心臓も動いているのだよ。

 要は成長も続いているし老化も同じだ。

 食事を与えねば胃が退化し内臓を損ねる。適度に体の筋肉を動かさねば弛緩する。

 つまり介護を怠らないようにせねばならんという事だ」


注意を与えて来る島田に、俺はもう一度訊いた。


「アンタの姉弟達は?フェアリアに居るんだろう?

 逢いたくはないのか、帰りたくはないのか?」


その答えは島田の眼が知らせていた。

曇った黒い瞳に・・・


「さぁ、早く行き給え。

 巡回が来る前に、見つかったらことだぞ?」


話をそれで打ち切るように、島田が急かして来た。


「アンタは?アタシ達を逃がして無事に済むの?」


ロゼの問いにも島田は答えようとはしなかった。

唯、俺達を誰かと兼ね合わせたように観て来るだけだった。


「君の妹に目覚めが来るのを願っている。

 魔王の呪いが解ける日を・・・心から願っている・・・」


地下道のマンホールを閉めにかかるプロフェッサー島田の声が、俺達に落ちて来た。

それが、俺の見た最後の島田しまだ まことという天使の父親の姿だった。



・・・そう。

彼は次の日、この地から去ってしまったんだ。

魔王の待つ灼熱の地へと・・・







___________________






 キキキィーッ!


急ブレーキ音が夜のシジマを破った。



「なに?!どうかしたのカイン?」


つんのめったエルがどうしたのかと操縦者に問う。

まだ市街地から出る直前の事。

ロッソアの都での話。


「エル、どうやら僕達の事が知られていたようだ」


秘密裏に脱出する計略だった。

夜の間に都から抜け出すつもりだった・・・のに?


「そんな・・・どうしてなの?!」


カインが前方に造られていたバリケードと検問を観て。


「エル、よく聞いて。

 ボクが盾になるから、君だけは逃げ続けるんだ。

 ボクだけがこの車で突っ込むから、君は徒歩で駅まで行って」


このままでは二人共が捕らえられる。

そう考えたカインが最期の手に訴えようとエルに頼んだ。


「待って!そんなの嫌よ。私だけ逃げるなんて出来ないわ!」


拒む王女エルリッヒに、首を振るカインが。


「頼むエル。僕の為だと思って・・・お願いだから」


諭そうとエルに微笑むのだが。


「嫌と言ったら嫌!カインが行けないのなら私も!」


駄々を捏ねるエルが、カインにしがみ付いて来る。


「困った姫様だなエルは・・・」


こうと言ったら退かないのは承知の事。

いつまでもこうしておられないのも理解の上。


「距離にして300メートルか・・・バリケードをぶち破る事は出来そうだな」


全速力で体当たりすれば、簡易なバリケードを破るのは可能とも言えたが。


「その前に。撃ってきたら・・・」


停まる気配を見せない車輛に、憲兵達がどうするのかをカインは知っていた。


「エル・・・ボクと一緒に行くよね?」


「そう・・・最初からそう言ってるわ」


二人の視線が絡み合う。

頷き合う幼馴染は手を執り合い・・・


「じゃあ・・・往くよ!」


アクセルに乗せた足に力を込めた・・・


脱出するルビ。

その手はしっかりとノエルを抱きしめていた・・・


一方のカインとエルの前には危機が訪れていた・・・


次回 ノエル奪還 第6話

君が求めるのは偉大なる天使の力?!それとも?

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