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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
<ロッソア>編 第6章 紅き旗
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妹(ノエル)奪還 第3話

危機はチャンスを招いた。


ソコには、希望があるのだろうか?

背後には、プロフェッサー島田の従兵が銃を突きつけている。

手を挙げさせられ、言う事を聞くよりはしょうがなかったんだ。


まだ早いと、指輪の妹に言い聞かせながら。



奥間った部屋の前まで連行されて来た俺とロゼの二人に。


「さっさと中へ入るんだ!」


後ろの従兵が、銃で脅しつけやがる。

尤も早口のロッソア語で言われたって、怖くも何ともないけどな。


俺達に部屋に入れと言った従兵だが、入ろうともしていない事に気が付いた。

まるで入るなと厳命されているかのように。

いいや、入るのが怖ろしいのか?


部屋の中を垣間見た瞬間にそう感じたんだ。


・・・そう、目の前に立ち並んだガラスケースを観てしまったから。


「お前達は配置に戻るが良い」


呆然と室内を見回していた俺に、プロフェッサー島田の声が聞こえた。


「はっ!それでは御用があれば内線にて」


従兵達が軽く会釈をしてからドアを閉じた。

閉じられたドアの音さえも気にならない。

なぜかって?それは周りに気を盗られていたからさ。


「ねぇ・・・ルビぃ?」


肘で脇をこついて来るロゼが、怯えたように訊いて来た。


ガラスケースの中を観て、何が此処で行われているのだろう・・・と。



招き入れたプロフェッサー島田が、配置されてある機械に手をかけている。

数十本もあるガラスケースには、各々(おのおの)一人が収まっている。

薄緑色に映る人体は、どれもが若い女性だと知れた。


その誰もが、生きているのかさえも判らない。


「・・・ここは?これは一体?」


そう訊くのがやっと。

ロゼには信じがたい光景なのだろう。

だが、俺は違うんだ。指輪に居る妹が知らせてくれているから。


ー ここはね、魔法少女を眠らせる場所なんだよルビ兄・・・


って、教えてくれたからさ。

尤も、教えられなきゃロゼと同じように聞き咎めただろうけどね。


機械を弄っているプロフェッサー島田が、俺達に向けて訊ねたのはこの時だった。


「ここでなら話せるだろう。

 研究室内は盗聴されないように出来ているんだ。

 奴等も魔鋼の秘密を、下々に知られたくないらしいからな」


フェアリア語で話しかけて来る、島田という東洋人のプロフェッサーが。


「君達の目的は、此処の破壊かい?

 それとも研究の奪取なのかい?」


俺達の目的を聞きたがった。


「どうしてそんなことを訊くのよ?」


辺りを見回していたロゼが、男の態度を不審がって訊き返した。


「いや、なにね。

 君達の顔を観ていたら、どうも狙いは違う処にある気がしたんだ」


訊ね返された島田の答えに、ロゼの顔が引き攣った。


「だから何よ?!ここにはこんなにも大勢の少女達が連れて来られてるじゃない。

 しかも・・・こんな有り得ない状態にされて!」


周りにあるガラスケースを指して、怒りの表情になるロゼ。


「確かに・・・な。

 これだけの魔法少女を以ってしても・・・だ。

 私の追い求める結果にはならなかったよ」


サングラス越しに見詰めた島田に、ロゼがビクンと仰け反る。


「君も?魔法が使えるのだろう?

 この少女達と同じように・・・魔力があるんだろう?」


その言い草は、ロゼを新たな生贄に求める悪魔のようだった。


「あ、アタシ・・・美味しくは無いから・・・」


ビクンと仰け反るロゼが、首を振り振り逃げ口上を溢す。


「はははっ、安心したまえ。

 ここの研究は昨日の時点で終わってるのだよ。

 この機械は最早、何も出来はしないのだよ」


サングラス越しに、僅かだが島田という男が何を観ているのかが判った。

その茶色の瞳が見ているのは・・・


「君もなんだろう?

 男子が魔法を使えるなんて、珍しいものだな?」


俺を・・・いいや。

瞳の先にあるのは?


「その指輪。君の魔力の元では無いのかね?」


ズバリ、言い当てやがった?!


「どうして?分かるんだよ」


もう隠したって意味が無いから、俺は言い返してやることに決めた。


「そうだよ、この指輪が俺の魔法の全てなんだ。

 これがルナナイトに与えられた魔力の根源。

 俺の先祖から伝えられた、古の魔法を宿した指輪なんだよ」


間違いなく俺を疑っちゃいない。

いいや、それどころか頷いてやがる。

悪魔のような貌で・・・


「古から伝えられたのか・・・君も。

 まるで彼女の様に?ミユキの様にとでも言いたいのか」


違う。こいつの顔は・・・


「引き継いだ魔力の所為で、ミユキは闇に閉じ込められたのだぞ?!

 お前には判るまい、魂を抜き取られる苦痛を。

 魂を取り戻そうと手を尽くす者が居るのを!」


島田という男は俺に対してではなく、この指輪に込められた魔力を呪っているんだ。

古から引き継いだ指輪に込められた魔法へ、怒りを孕ませたのだろう。


・・・・俺には、そう感じとれたんだ。



「ちょっと、ちょっと!待ちなさいよアンタ!

 このルビはねぇ、大事な妹を取り戻しに来ただけよ。

 アンタの所為で、魂だけにされちゃった大事なを助け出しに来たんだから!」


黙っていられなくなったのか、それともいつもの勝気が喉から飛び出したのか。


「ここの中にノエル・ルナナイトっていう娘がいる筈よね?!」


いきなり本題を切り出しやがった。


「なに?!その娘がどうしたというのかね?」


吠えるロゼに毒気を抜かれたのか、島田が落ち着きを取り戻して訊き直す。


「どうしたもなにも!アンタ達の所為で、指輪に宿るだけになっちゃってるのよ!」


買い文句に、ロゼが俺を指して言い募る。


「ルビの妹ちゃんはねぇ、魂だけにされちゃって指輪に閉じ込められてるの!」


ぎゃぁぎゃぁ吠えるのは良いけど、少し間違ってるんだが。

ノエルは閉じ込められているんじゃなくて、自ら望んで宿ってるんだけど。

何かに宿らないと、どこかに行かされてしまうと思って宿ったんだが。

つまり、宿らなきゃぁ死んじまうって事なんだが。


「なんだと?指輪に?どうやってなんだ、教えたまえ!」


ー ほらみろ、ややこしい話になりそうだ。


俺が肩を竦めて、島田が訊き返して来たのを咎めようとしたら。


ー ルビ兄ぃ。この人の奥さんらしいよ、この中に居るのって!


ノエルの言葉にソレを観る。

ガラスケースに収まった黒髪の女性を。


年の頃はプロフェッサー島田より、少々若そうに見える。

目を閉じ眠ったようなその人は、微かにだが微笑んでいるようにも見て取れた。


「まさか・・・同じって言うのか?」


実験に供された?

いいや、此処に在るガラスケースとは違う形だ。

それなら、いつから閉じ込められているんだ?

機械の全ての配線が、この女性のガラスケースに伸びているんだが?


「まさかとは思うが。

 あんたも彼女を救い出そうとしているのか?」


俺の問いに、否定は返って来ない。


「そうだとしたら・・・どうだというのかね?」


むしろ問い直して来た。


「どうもこうもあるか。

 じゃあ、このガラスケースに居る子達は?

 助けられないと云うんじゃないだろうな?」


この問いかけにも・・・否定は返されない。

つまり・・・


「なんですってぇ?!アンタ、どう始末をつける気なのよ?」


ロゼが吠えた・・・俺の代わりに。


「魂を元に戻せないですってぇ?!

 それじゃあこの人達は眠った状態のまま?」


顔を背けた島田が、ロゼの怒りを受け流して。


「いいや、いつの日にかは助けてみせる。

 それが私とミユキとの約束なのだ・・・」


助けられ無いとは言い切らなかった。


「ここにはもう、助け出せるだけの魔力がないのだ。

 悪魔の力、魔王級の魔力が無くなってしまったのだ。

 だから、この研究所では助けられないと言ったのだ」


答えた島田も、苦しそうな言い訳を返して来る。


「はぁ?!アンタ、正気なの?

 どこの世界に魔王とか悪魔とかが実在するのよ?!

 いい加減なことで誤魔化そうたって、許さないんだから!」


今にも掴みかかりそうなロゼを、俺は止めると。


「一つだけ。

 一つだけ本当のことを言ってくれ。

 ここに俺の妹は居るのか?いや、ノエルの躰は無事なのか?」


一番大切なモノを求めた。


「ふむ・・・君の妹か。

 確かルナナイトとか言っていたな・・・調べよう」


即答で認めた島田が、机の上に在った書類をあさり始めた。

何通もの書類を掻き分け、島田の手が停まる。


「君に一つだけ問いたい。

 ノエルという娘を目覚めさせたいか?」


当たり前の事を吐いて来やがる。


「当たり前だろ。その為に戦場のフェアリアから来たんだ」


「そうか・・・君は戦場を越えて来たというんだね?」


頷いた島田が、一通の書類を指し出して来る。


書き込まれた書類には、ロッソア語でこう記してあったんだ。


<<魔法種別4級 属性は闇 フェアリア派遣軍で拉致>>


目を下に映した時、そこには・・・


<<本名 ノエル・ルナナイト 16歳 既に心神喪失状態で施術可能>>


悪魔のような一文が書かれてあったんだ・・・




紙片に書かれたのは?

妹の名は・・・ナニを意味している?


目覚める時は・・・来るのだろうか?

そして、カレは果てない想いを告げるのだった・・・


次回 ノエル奪還 第4話

辿り着いた・・・間違いなく奪い返せた・・・でも。でも足りなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] にゃんと2連投とは!! 美味しくはない(笑) そりゃな……とって食べようって言うんじゃないんだからね。 回りくどくなく、ずばっとストレートに。 そこがいいぞ、ロゼよ。 妹を助けられない…
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