遅すぎた決着
「やっと決着を付ける時が来たようだな……ゴホゴホ」
「そのようだな……大丈夫か?」
「ふふ、人のことを心配している暇があったら、我が身を可愛がることだな」
「けど、この前も大変だったって聞いたし」
「それ以上私を労わるのはよせ、やりにくいだろ」
「うーん……お互いの体調が万全の時の方がいいんじゃないか?と思って」
「体調が万全の時なんて、この年になるともう無いからね」
「俺たちもう87歳だもんな。俺も去年手術で腎臓取ったし」
「私も先月取ったよ」
「やっぱこの年になると取りがちだよね」
「うん。けどこれで条件は同じ。さあやろう」
「あっ、ちょっと待って」
「どうした?」
「入れ歯が取れそう」
「やば。接着剤貸そうか?」
「うん、貸して」
「はい」
「ありがとう」
「それ付けたら、絶対やろうね」
「ああった(わかった)」
「どう、いける?」
「カチカチ……よし大丈夫そう」
「よし、じゃあやろう」
「場所変えようか」
「え、何で?」
「だってここ病院だし」
「それは無理だよ」
「なんでよ?」
「私、外出禁止だから」
「ええ、やばいやん」
「まあ明日手術だからね」
「ええ!聞いてないよ」
「成功率はなんと10%」
「低い!安静にした方がいいよ」
「いや、今日を逃したら決着をつける時が無くなるかもしれない」
「それは確かに」
「さあ、やろう」
「よし……じゃあやろうか」
「お、遂にやる気になったんだね」
「じゃあ、いくよ」
「おう」
「「最初はグー!じゃんけん……」」
「「ほい!」」
「……」
「……」
「あいこだね」
「そうだね」
「また決着がつかなかったか」
「じゃあ、また来年だね」
「くそー……仕方ない。頑張って来年も生きるか」
「うん、そうしよう」
遅すぎた決着 -終-