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#55 大切な人への贈り物 その二

ーーーララ編。


『タクミが喜ぶ物・・・。女性視点で考える・・・』


部屋に戻ったララは何を創るのが一番いいのか悩んでいた。正直、ララの錬金術レベルはかなりのものでこの国の錬金術士としてはすでに最上級レベルであったが、如何せん『知識』が足りなくて自分で何かを創造する力が不足していた。


『大体タクミは私が作れるものは何だって作れるんだからプレゼントと言っても難しすぎるわよ!装飾品なんてものは論外だと思うし、女の子らしく着飾ったわたしってやったらめっちゃ叱られそうだし・・・、頭がパーンってなりそうだわよ。そうだ!ちょっと街に出てみるのもいいかも知れないわね、一人で出るとうるさいからセジュさんに頼んでみよう』


ララはセジュに頼み込んで一緒に街へネタ探しに出かけることにした。服屋、雑貨屋、ケーキ屋、ネタ探しと言いながら普通にウィンドウショッピングを楽しむふたりだったがふとあるものが目にとまりララの中で確信になった。


「これに決めた。セジュさん、何を作るか決めましたよ。材料を買うのでもう少しだけ付き合ってくださいね」


その後、ララはいくつかの商店を回り必要な材料を購入すると試作品の作成に入った。


『よし!なかなか良い感じに仕上がってきたわね。もう少し調整が必要かと思うけど、今手に入る材料だとこれが限界かも知れないわね。ちょっと味見をして・・・。うん、久しぶりに作った割にはなかなか良いんじゃないかな?タクミ喜んでくれるかな?』


今回ララが選んだものは『竜族異世界料理(ドラゴンスープ)』であった。


『男を落とすには胃袋を掴むべし!と世間では常識とまで言われているらしいから料理錬金でタクミが絶対に食べた事のない私の世界の料理を作ってびっくりさせてやるわ』


ただ、私の世界でしか集められない材料が幾つかあったので代替えの材料を探すのに時間がかかったのが大変だったけど何とか満足いく物が出来た。


『よし!これで勝負よ!タクミ待ってなさいよ!』


* * *


ーーーメイシス編


『うーん。何を作ろうかしら・・・』


メイシスは自分の工房に戻り、錬金釜を前に頭を悩ませていた。


『基本的にタクミ様に教えて貰ったものは駄目だろうし、そもそもタクミ様にプレゼントするものを考えなければいけないのだから大変ですわね。ララさんは何を作るのでしょうか?彼女の錬金力ならかなりの物が出来るでしょうからアイデアで勝負しないと勝ち目はないでしょうね』


メイシスは何故かララと勝負すると勘違いをしていてどちらの品物がよりタクミを喜ばせるかに重点をおいて考えていた。


『そうだ!良いことを思い付いたわ!これならば錬金術としても世間に発表できる品物だし私をもっと魅力的にみせる事が出来てタクミ様も私から目がはなせなくなる事でしょう』


そう思いながらメイシスが作り始めたのは『女性用化粧品』だった。今までも化粧品はあったが希少な素材を使う割にあまり質が良くなくて広まっていなかった。メイシス自身も使った事はあるが満足いくものではなく、最近は殆んど使ってなかった。


『今回はファンデーションと口紅にしましょう。あまり多く作っても後でレシピにする時が大変ですからね』


メイシスは今までの化粧品で不満に思っていた事を錬金術という特別な製造方法で実現させていった。作り上げた品物はメイシスには素材の入手難度の高さに冷や汗をかきながらも出来上がりには満足していた。


『よし!私はこれを課題として出してみるわ。そして化粧した私をタクミ様に・・・・うふふふふ』


メイシスの妄想は今日も全力全開であった。

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