#44 メイシス王女の錬金工房合宿 その九
GW更新強化週間
3日後メイシス王女はキッチリ時間通りに工房に到着した。
「只今戻りましたわ。皆さん今日からまたお世話になりますわ」
「ああ、よろしくな。メイシス様、今日よりいよいよ成人披露パーティーの目玉企画の練習に入りますので今まで以上に実技に特化した内容になりますので頑張ってついてきてくださいね」
僕はこれからの予定をメイシス王女に説明するとすぐさま錬金釜に向かい合った。昨日のララの言葉が頭にちらついてメイシスの顔を直視出来なかったからだった。
『くそー。ララが余計な事を言うから意識してしまうじゃないか。いやいや大丈夫だ。集中集中・・・』
「・・士様!・・魔士様!錬魔士様!!」
「あ、ああすまない。どうしましたか?メイシス様」
「もう!課題終わりましたので確認をお願いしますね。どうされたのですか?先程から何か考え事をしているみたいですが?」
「いや、まあ色々とあってな。まあ、それよりも今日の課題は出来が良いみたいですね。これなら本番までに充分間に合う事でしょう」
「本当ですか?良かったぁ!あと、錬魔士様この後で少しお時間よろしいでしょうか?相談したい事と報告したい事がありますので」
「ああ、大丈夫ですよ。それでは今日の講習は終わりにして休みがてらお話を聞きましょうか」
「はい。お願いします」
「ーーーそれで話と言うのは何でしょうか?」
「はい。先ずは報告、と言うよりも謝罪ですが・・・。実はこの度王宮に戻ったときにお父様から聞いたのですが、今までお断りしていた各方面からの婚約話のうち、ある伯爵家からきていた話が再燃してこの度私が成人を迎えるにあたって是非にとの話を持ち掛けてきたそうなのです」
「なるほど。で、それが何故『謝罪』になるのですか?」
「話には続きがあるのですわ。王族といえども私は第3王女ですのでずっと王宮に残る事はありません。然るべき嫁ぎ先へ嫁いで行くのが通例であります。ですが、その話の相手は伯爵家の次男であり、その、あまり博識ではない・・と言いますか、ハッキリ言いまして好みではない相手なのです。しかも、もし婚姻を結んだならば錬金術士としての道は閉ざされてしまうのです」
「それならばお断りすれば宜しいのではありませんか?いくら伯爵家でも王族に無理を通せるとは思いませんが?」
「それが、我が王家はその伯爵家に以前ひとつ借りを作ってしまっていたのです。それを盾に婚約を迫っているみたいなのです。そこで困ったお父様はある条件を付けてその場を濁してしまったみたいなのです。その条件とは・・・」
『僕は話の流れから嫌な予感がものすごくしていたが逃げる訳にもいかずにメイシス王女の話を聞くしか無かった』
「娘にはもう心に決めた相手が居るのでその者と一緒にさせてやりたい。今相手を説得していて成人披露パーティーにて相手を紹介するから待って欲しい。もし、それまでに相手の了承が得られなければそちらに嫁に出そう。と言う話になったみたいなのです」
「で、その相手と言うのは?」
「タクミ錬魔士様。あなたですわ」
『やっぱりそうきたか』
僕はガックリとうなだれて大きなため息をひとつ吐き出してからメイシス王女に言った。
「メイシス様。先日も言った通り僕は事情があって結婚を考えて無いのです。今回の件はメイシス様にとって非常に受け入れがたい案件だと思いますがこちらとしましてもすぐに了承できる事では無いのです」
「それはララさんの事ですか?それとも私には話せない重大な隠し事がおありなのですか?」
「そうですね。そのどちらでもあると言うべきなのかも知れませんね。メイシス様、これから話す事は誰にも言わないと約束して頂けますか?たとえ国王であってもです」
「・・・それだけ重要な事なんですね。分かりました、お約束致します。それを聞かないと私の中で絶対に納得がいかないでしょうから」
メイシスの眼には覚悟の光が見えていたので僕は話せる範囲を選択しながら説明をしていった。
「メイシス様。あなたは『僕が歳をとらない』と言われたらどう思いますか?」
「えっ?それって外見がずっと変わらないって事ですか?」
「ええ、そうです。ですからもし僕がメイシス様と婚姻を結んだとしても年が過ぎるたびに『僕はこのままなのにメイシス様だけ歳を取る』と言うことがおきてしまうのです。それだけでもかなりの悲劇なのに精霊達は勿論、ララも特殊な事情から成長が緩やかですので『メイシス様だけ』が通常の時間にそって歳をとられるのですよ」
「そ、そんな事を言われても信じられませんわ。それにララさんもだと言われても・・・」
「まあ、そうですよね。普通の考えではとんでもなくめちゃくちゃな事を言ってると自覚してますよ。でもそれを話さずにメイシス様と婚姻を結べば必ずいつかは悲しい運命が待ってるのが分かるから辛いのです」
メイシス王女は少しの間、下を向いて考えごとをしていた。今言われた突拍子もない事を自分の中で整理しているのだろう。国王様やメイシス王女には悪いけれど諦めてもらうしかないよな。
「メイシス様・・・」
僕が声をかけた瞬間メイシスは僕を見てハッキリと告げた。
メイシス王女との会話シーンが長くなりすぎたので次話に続きます。
さてこのふたりはどうなるのでしょうか?
更新までお待ちください。
 




