#43 メイシス王女の錬金工房合宿 その八
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結局その日は新しいレシピの登録準備で終わってしまいバタバタした日だったが僕は内心『しめしめ、今回のレシピ登録でメイシス王女にも実績が出来るので講習成果の報告が楽になったぞ。まだ期間はあるからもうひとつくらい発見させてやるかな』とほくそ笑みを浮かべていた。
当たり前である。錬魔士として研究を重ねている僕があの程度の可変で作れる薬を発見出来ていない訳が無かった。ただ、前にも言ったが商品名を考えるのが面倒だったから今まで放置していただけのレシピだったのである。
『このまま暫くはメイシス王女にはこのレシピの研鑽をさせておけば僕にも余裕が出来るから今のうちに次の策の準備をするとしよう』
僕はララを呼ぶと商店から頼まれている数々の商品のレシピのうちララに出来そうな物を選び作成を頼んだ。ララは少し不機嫌になったがいつもの甘いお菓子で手を打ってもらった。
「まったくもー。いつもいつもこんなので誤魔化されたりしないんだからねー」と言いながらも手伝ってくれるララに感謝しながら僕も依頼をこなしていった。
そして2ヶ月が過ぎた頃。メイシス王女は王宮からの連絡で成人披露パーティーの打ち合わせで3日程帰る事になった。
「それでは3日程戻ってまいりますので続きは後程お願いしますわ」
メイシス王女は名残惜しそうに僕の手を握ってから迎えの馬車に乗り込んでいった。
「とりあえず3日は静かにすごせそうだね」
メイシス王女は時間が空くと色々と質問をしてきてなかなかゆっくり出来なかった。それだけ熱心に錬金術に取り組む姿勢は好感が持てたし、実際錬金術の腕も飛躍的に向上していた。
「さて、この間に諸々の準備をしていくから皆手伝いを頼むよ」
僕達はメイシス王女が一時帰宅している間に王女の成人披露パーティーの本人サプライズ料理錬金のレシピの作成と王女への講習準備を始めた。そしてあらかた準備が出来た頃ララが僕に聞いてきた。
「それでタクミはどうするの?」
「ん?何がだ?」
「何ってメイシス王女の事よ。王様も言ってたじゃないの『メイシス王女を嫁に貰って欲しい』って。あれ多分本気だよ」
「はあっ?その件はキッパリと断ったはずだろ?いまさら無いだろ?」
「そのくらいで諦めるならわざわざ工房まで押し掛けて講義を受けたいとか言わないでしょ?あれは絶対に諦めてない顔よ!」
「そうですね、私もそう思いますの。メイシス王女は一貫してタクミマスターの好感度を上げる行動をやっていたように見受けられましたの」
「やっぱりそうよね。ああ見えてかなり計算高い頭の良いお姫様だよね?だってタクミ、メイシスの事『ちょっといいな』とか思ってたでしょ?私には分かるんだから。でどうするの?って聞いたのよ」
「どうするも何も断るしか無いだろ?ララ達は知ってるだろうけど僕は基本的に歳をとらないから結婚しても若いうちは良いけどだんだん相手だけが老けていくんだぞ。そんなのお互い嫌じゃないか?」
「まあ普通は嫌よね。ただし『普通なら』ね。私の見立てだとメイシスはそんな事気にしないタイプと見てるわ。まあ子孫が残せないとかだともしかしたら躊躇するかも知れないけれど・・・その辺りどうなの?」
「さっさあ?どうなんだろ?試した事無いし分からないなって今それ大事?面白がってるだけじゃないか?」
「さーどうだろうねー。ところでタクミにとって私ってどういう存在?ただの弟子ってだけ?」
なんかどんどん雲行きが怪しくなってきたな、ララのやつ最近メイシス王女にばかり構ってたから焼きもちやいてふててるのか?
「ララは大切な『家族』だろ?これから先いつかララの仲間や大切なひとが現れるまで一緒にいてやると言ったはずだよな」
「家族・・・家族かぁ。やっぱり私じゃタクミの『恋人』にはなれないんだね。まあそうじゃないかとは思ってたんだけどねー。あはははは」
ドキッ!
『なっ何だこの気持ちは?いやいや僕は普通の人間じゃないから普通の恋愛なんて出来るはずが無いだろ?・・・本当にそうか?神様はそんな事は一言も言ってなかったよな?いやでもうーん・・・』
「ララ。それはあれでそういう意味なのか?いやしかしだからと言って・・・」
「何焦ってるのよ!ほらね、タクミは女性に対して免疫が無いからこの程度の駆け引きですぐに気持ちがぐらつくでしょ!そんな事じゃメイシスの思うつぼよ」
ガガガーン!!
『何?この敗北感。ララに手玉に取られあたふたした後で指導までされる。どっちが師でどっちが弟子だよ』
僕は精神的にダメージをおったまま残った準備を仕上げていった。ララの「まだまだ私も駄目だなー。肝心な所でヘタレるのを何とかしなきゃなー」との呟きに気がつきもしないで・・・
メイシス王女編まだ続きます。
もう一話か二話くらいかな?
更新がんばります。
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