#3 道中では普通に盗賊が出る世界
「ちょっと待ちやがれ!」
街を出発してまだ半日もしないうちに少々ガラの悪い男達20人程度に囲まれた。
男達はそれぞれ手に剣や槍を持ち、ニヤニヤと下品な笑いを浮かべながらリーダーらしき男が近づいて来た。
「とりあえず有り金全部と食料を置いていってもらおうか」
「おっと無駄な抵抗はやめたほうがいいぜ、この人数差だ勝ち目はねえよ」
「最もこちらとしては命も置いていって貰ってもいいんだがな」
なんとも捻りのないテンプレ盗賊達。
頭数さえ居れば絶対的優位に立てると考えている筋金入りの脳筋集団である。
しかもどう見ても僕達のメンバーからは商売人や只の旅人には見えないはずである。
そんな僕達を襲ってもリスクばかり高くて儲けなど殆んどないだろうに…。
この人数の盗賊の討伐依頼がまだギルドには無かったので、恐らく他から流れて来た集団が移動中に手当たり次第に襲っているのだろう。
その時、隣に控えていたミスドが半ば呆れながらリーダーらしき男に忠告した。
「全滅したくなければ全力で来たほうがいいぜ。まあ、1人も逃すつもりもないけどな」
「なんだと!?この人数に勝てるつもりか?」
リーダーらしき男が吠えた。
僕は『なにも挑発しなくてもいいのに』と苦笑しながらミスドとセジュに命令した。
「盗賊の殲滅をよろしく頼むよ。
1人も逃がさないようにね」
「「承知!」」
二人は命令を了承すると直ぐに戦闘体制に入った。
「ご主人様とシールはこちらへ下がってくださいですの」
ミルフィが僕の手を引いて後方の岩影に避難した。
「一流剣・斬!」ミスドが剣を水平に振ると一見届いていないはずの斬げきが構えていた半数の手下達を武器ごと真っ二つにする。
「なっ!?なんだと!?」
リーダーらしき男が驚きの声を上げて固まった。
その隙をセジュが見逃すはずも無かった。
「グラビティホールド!」
力ある言葉と共に男は武器を落とし、膝を着いて地面に縛り付けられた。
「がっ!かはっ!」
男が自分の身体の軋む音を聞きながら周りを見るが立っている子分達はおろか生きている者も見当たら無かった。
「たっ助けてくれ!」
男は地面に這いつくばった状態で必死に命ごいをした。
僕は男を一瞥すると言い放った。
「悪いけど、僕の辞書では悪人には人権は無いんだよ。
地獄の底でしっかり悪事を懺悔してくるんだね」
そう言い放つとミスドに目線を送り軽く頷いた。
「「盗賊の殲滅完了」」
ミスドとセジュが命令を終えて戻ってきた。
「二人ともお疲れさん、今回も完璧だったね」
僕は二人を労いながら殲滅された盗賊達の死体に目をやり、セジュにもうひとつ指示を出した。
「悪いけどコイツらをそのまま放置すると魔物が寄って来て、他の旅人に迷惑がかかるから集めて炎魔法で処理をしてくれるかな?」
「了解しました」
セジュはそう言うとファイアーボールで死体を焼きつくしていった。
『悪・即・斬』転移前に何かの書物で読んだ言葉であり、僕は今のこの世界にぴったりの言葉だと思っている。
悪事を働く者、特に力にものを言わせて罪のない者から奪うだけの盗賊どもに情けをかける必要はない。
もし、見逃した盗賊が別の人達に危害を加えたら僕はきっと後悔するだろう。
よって盗賊に遭遇したら殲滅を基本にしている。
なんと言ってもミスドとセジュが居るだけで国の軍隊1個師団でも太刀打ち出来ないくらいの戦力なんだから…。
「さあ、先に進もうか」
そろそろ昼食の頃だが、盗賊を殲滅させた場所での食事はやはりためらわれるので、もう少し先にある水場まで移動する事にした。
かなり久しぶりの更新です。もうひとつ連載していた小説は完結させましたので暫くはこちらだけに集中して行きたいと思います。更新も出来るだけ頑張りたいと思います。よろしくお願いします。