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#28 王宮での錬金準備のお買い物 その二

食料品店の店主は僕の姿を見つけるとにこやかに話かけてきた。


「これは錬魔士さま。いつも利用して頂きありがとうございます。今日はミルフィさんともう一人は初めましてかな綺麗なお嬢さんをお連れですね。まさかお嫁さんじゃあないですよね?」


「お嫁さん!?」


「いえ、そのような関係ではありませんので只の弟子にすぎないです」


ララの驚いた顔を横目に非常に冷静に返答する僕に対して店主は少し気まずそうな顔をしながら


「これはとんだ勘違いを、いや失礼しました。何か必要な物や取り寄せが必要な物がありましたら声をかけてくださいませ。それではごゆっくりどうぞ」


と言ったかと思うとそそくさと奥に引っ込んでしまった。


『うーむ。この食料品店は品揃えやサービスがいいから良く使ってるのだか店主が少々早とちりな所から前も危うく間違った噂を流されるところだったんだよな。気をつけなければ』


横でなにやら『綺麗なお嬢さん』と『お嫁さん』がリピートしているララがくねくねしてるがとりあえずスルーして買い物をする事にした。


「今回王宮で作る錬金料理って家で良く作る『チョコレートケーキ』と『プリン・アラ・モード』だったよね」


先ほどの余韻からようやく現実の世界に戻ってきたララがふと疑問を言ってきた。


「私も教えて貰って作ってみたけど素材もレシピもしっかりしてるし、別段難しくないわよね。どうしてその程度でわざわざタクミが王宮に呼び出されて王宮就きの錬金術士にレクチャーしないといけなくなったの?」


食料品店で素材の見立てをしていた僕は素材を確認しながらララに説明した。


「前も説明したかも知れないけど、困った事に『料理錬金』はレシピどおりに作っても同じ味にはならないんだよ。別に隠し味を入れてる訳でもないし、普通の調理みたいに火の加減が違うとか時間が違うとかみたいな事はないはずだし不思議なんだよな。僕は強いて言えば本物の味の深みを知っているかどうかのような気がするんだよ。だけど世間一般の認識は単純に錬金術士としての実力の差が味に出ると言われているんだ。僕としては知識の差の考えが正しいんじゃないかと思ってるんだけど詳しくはまだ解明されていないんだ」


そう言いながら必要な素材を買い物かごに次々放り込む僕に何を買っているのか興味津々のララは「これ何に使うの?」といろいろと話かけてきた。


「今回の依頼では一応2つの料理錬金を頼まれているんだけどギルドから2つ以外に幾つか目新しい料理も披露して欲しいとの要望もあったんだ。まあ、それはギルドのお偉いさんからの王族へのサプライズなんだけどね。今回の依頼と合わせて王宮からギルドへそれなりの金額の依頼が舞い込んだらしくそのお礼も兼ねてギルドが僕に頼み込んで来たって事なんだ」


「それってタクミに何か得な事あるの?」


「ララ、仕事ってのは損得ばかりで受けてちゃ信用も仕事も集まらないものなんだぞ。だけど今回の依頼はギルドのお偉いさんに貸しをつくる事の出来る美味しい依頼なんだぞ『お菓子』なだけに」


「上手いこと言ったつもりでしょうがララさんは理解できてない様子ですの」


横でミルフィが微笑みながら突っ込みを入れてきた。


僕は苦笑いをしながら幾つかの素材を購入するとふたりと一緒に工房へ戻った。


「で、結局サプライズの料理って何なの?ひとつでもいいから今から作ってくれない?」


工房に戻ったララは興味が押さえきれない様子で僕にお願いをしてきた。


「うーん。サプライズ用の料理だからなぁ・・・。まあいいか、ひとつだけだぞ」


『さて、どれを作ってやろうかな。そうだ!アレを作ってやるか。きっと驚くだろうな』


僕はララが慌てる姿を想像してニヤニヤしながら料理錬金の準備に取りかかった。


「ほら出来たぞ。今回は試作品だから量はあまり作らなかったけどララが美味しいと言えば本番では沢山作るぞ。責任重大だから心して試食するように(笑)」


僕は出来上がったお菓子を小皿に盛り付けてララの前に差し出した。


「何なのこれ?お菓子?小さくて丸い飴玉?綺麗な色してるけど食べられるの?」


皿に盛り付けられていた物は直径1~2㎜のカラフルな色をした球体の山だった。


こちらの世界には無いのだが日本では仁丹と呼ばれた薬に似ているのだが味はと言うと・・・。


「まあ、食べてみろよ。心配しなくてもちゃんとしたお菓子だからな」


「待って、ねえタクミ先に食べてみてくれない?ちょっと勇気が足りないから・・・」


初めてみるお菓子にララは口に入れる勇気が出ないらしい。仕方ないので僕は一撮み口に放り込んで味を確かめてみた。舌の上で転がしている間は少し甘酸っぱい味がするが噛んだとたん口の中でパチパチと弾けた。そう、あのお菓子をイメージして作ってみたんだけど上手くいったようだ。


「何か音がするけど大丈夫なのよね?」


相変わらず心配そうに僕の顔とお菓子を交互に見ていたララだったがやっと決心がついたらしく指でつまんで口に入れた。


「んー?甘い?すっぱい?感じね」


ララはお菓子を口に含んで飴のように舐めてみた感想を言った。


「あー。そのお菓子は固くないから噛んで食べるお菓子だから噛み砕いてみな」


舐めていてもそのうち外壁がなくなれば刺激のある内装に至るけどやはり噛んで食べるのが正式な食べ方だからとララに薦めた。


「カリッ!パチパチッ!。痛っ!?何これー!?」


口の中で弾ける感触にララは驚いて叫んだ。


「どうだい?弾けるお菓子『ドドドンパッチン』は?なかなか刺激的だろう?」


僕は自慢気にララに感想を聞いてみたが、ララの方は怒った顔で答えた。


「無理!絶対無理!こんなの王様に出したらあんたの頭が弾けるわよ!」


「えー そうかな?結構自信があったんだけどな・・・」


僕はそう言いながら共に試食したミルフィ達の方を見ると。


「タクミマスター。これは無いです」

「マスター様。やめておいたほうが無難だと思われます」

「確かに今まで食ったことのない物だがコイツを王様やお姫様に食わすのはやめたほうがいいと思いやすぜマスター」


と散々な評価を貰ったので非常に残念だったがやめておく事にした。


結局いきなり出すのは怖いからと皆に諭されて、その後も幾つかの試作品を試して貰ってOKが出たものだけ作ることになり準備を終えた。


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