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#26 錬魔士苦渋の決断を迫られる その二

「で、そのお願いって何なんだよ?」


「えー!先に言わなきゃ駄目なの?」


「当たり前だろうが!先に承諾したらどんな無茶な要求をするか分からないだろうが!」


「ちっ気づいてたか・・・」


逆に気づかないと思う根拠が聞きたいんだけどな。僕はため息をついてララにもう一度聞き直した。


「それで?」


ララは急に真剣な表情になって僕の顔を見ると願い事を言った。


「私の外見をもう少し成長させて欲しいの。セジュさんやミルフィさんくらいに!」


『がーーーん!!』


正直驚いた。今の外見がそこまで嫌だったなんて思ってもみなかった。


「なぜだ!そんなに可愛い外見が変えたいほど嫌だったのか!?」


「可愛い?」


驚きのあまり思わず本音がこぼれた僕にララはきょとんとした顔で聞き返した。


「うっ!」


「ふーん。そっかぁ。タクミはこの姿が可愛いんだぁ」


「タクミってロリコン?」


「ちがーう!大体そのネタは前にもやっただろうが!」


全力で否定しておかないととんでもない噂が流れたら錬魔士としての立場がまずいことになるからな。


「で?変えてくれるの?くれないの?」


マジで言ってたのかよ。てっきり僕をいじるネタかと思ったのに。


「なんでそんなに外見にこだわるんだよ?」


僕の食い下がりにため息をひとつついたララは呆れた顔をして説明を始めた。


「いい?今回の依頼内容はタクミが『噂の弟子』をつれて王宮に行って錬金術の講師を行い『弟子と言う触れ込みの私』が錬金術を成功させないといけないんだったよね」


「そんな所に今の外見の私が行っても馬鹿にされるかタクミがそれこそ幼女ロリコンを弟子にしたと言われるのが目に見えて分かるわよ」


「そりゃあタクミがそれでいいなら私は別にどうでもいいんだけどね」


正直完全に失念していた。今ララが指摘した内容は筋が通っている。いつも依頼があるときは精霊の皆と行くことが殆んどだったから特に気にしてなかったが今回は弟子も一緒にと言われてるから連れて行かない訳にはいかない。


ララが竜族だとは言えないから弟子にした経緯は説明しにくいから詳細を濁すようになるだろう。そうすると外見が可愛い幼女を僕の趣味で弟子にしたとの憶測が流れてもおかしくない・・・最悪だ。


「で、どうするの?」


僕は悩んだ。ララを成長させる事は正直出来ない事はない。と言うか出来るんだが前に無理だからと突っぱねた経緯があるだけに、ここでやってしまうとこれからも無理を言えば『本当は出来るんじゃないの?』と勘ぐられてしまう事になりかねないのが気がかりだ。


「・・・・・・・」


仕方ない、ここはあの方法でやり過ごすとするか。僕はひとつの方法を決めるとララに向かって説明をすることにした。


「分かった。ララの意見を尊重しよう。今から特殊なアクセサリーを錬金するからちょっと一人にしてくれ。そうだな一時間くらいミルフィ達と買い物でもして時間を潰してきてくれると助かる」


「ミルフィ頼めるかな?」


「了解ですのマイマスター。ララさん行きましょうか。ちょうど夕食の買い物に行こうと思ってたんですの」


ララは少しだけ怪訝な顔を見せたが大人しくミルフィと買い物に出かけてくれた。


『さて、それじゃあ早速作ってみるか。上手くいくといいんだけどな』


僕はいつものように魔力液と魔石に砂時計を準備して錬金釜に向き合った。


* * *


「ただいまー!タクミ上手く出来たの?」


「ああ。つい先程出来たばかりだ。ほら、これを髪に着けて自分のなりたい姿を出来るだけ明確に思い浮かべてごらん」


僕はそう言うとララに蝶々の形をした髪飾りを手渡した。


「これを髪に着けて思い浮かべればいいのね?それってどんな姿でもいいの?」


「いや、基本的には今の人型ベースからは大幅には変わらないぞ。やらないとは思うが他の種族になったり性別を変えたりは出来ないからな。せいぜい身長を伸ばしたり髪を伸ばしたり体型を変えたりするくらいだからな」


「ふーん。まあ、とりあえずやってみるわ。えーとアクセサリーを髪に着けてっと私のなりたい姿を思い浮かべるのね」


ララは僕の言われる通りにアクセサリーを着けて目をつむり、なりたかった姿を思い浮かべた。


次の瞬間ララは自分の体にいつもより多くの魔力が廻っているのを感じていた。体が火照って関節の軋む音と何かが裂ける音が頭の中に響き体が大きくなる感覚に期待と不安が駆け巡った。


体内の魔力が安定した感覚にララはゆっくりと目を開けて自分の姿を見た。


そこにいたのはララの想像していた理想の体型を持つ人間年齢で10年後のララだった。


身長も160センチくらいまで伸びてポニテに束ねた髪も腰まで届いていた。胸もミルフィと同じくらい成長していて、元の姿からは想像出来ないくらいの別人に仕上がっていた。


ただ体の成長に服が追い付く訳も無く、申し訳程度に隠された服の残骸を見て慌てて叫んだ。


「きゃー!タクミあっち向いてぇー!!」


後ろを向かされた僕の後ろでララはミルフィに服を貸してくれと言って奥の部屋に駆け込む音がしていた。


* * *


服を着替えたララは姿見に写る自分の姿をまじまじと見て叫んだ。


「そうそう!これよ!これ!私がなりたかった姿はこれなのよ!なによやれば出来るじゃないの!」


予想通りのララの言葉に内心ため息をつきながら僕はララに言った。


「仕事は2日後の朝からだから今日と明日はレシピのおさらいと完成精度上げの特訓だからな」


「分かったわよ。せっかくだからオシャレしてちょっと出かけたかったけど仕方ないか」


ララは残念そうな顔をしたが約束なのでしぶしぶ了承した。


僕は『ただ、今の姿は3日しかもたないけどな』との言葉をララには聞こえないように呟いて悪い笑みを浮かべながら特訓の準備にかかった。

ララついに理想の体型を手にいれる(3日間限定)

戻った時が大変そうですが(汗)


次回から王宮編になります。


よろしくお願いします。

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