#23 錬魔士への緊急依頼 その六
「迷惑をかけた」
セジュの雷魔法を受けて体に寄生していた魔虫を排除した精霊達はすっかり元どおりとなり谷は平穏を取り戻していた。
巨木の精霊フリッジスは僕達にお礼とお詫びを繰り返し、フラリスとの契約よりもかなり多めの報酬を僕に押し付けてきた。
理由はギルドを介していない飛び込みの依頼を受けてくれた事。
フラリスとミルフィが知り合いだったとしても、原因不明の精霊病と言う危険度の高い依頼に対して幾つもの対策を考案し、実用性のあるレベルまで引き上げてフリッジスの元へたどり着いた事。
最後に精霊達を大切にしている貴公の手助けになればとの思いで用意した報酬だから是非受け取って欲しいとの事だった。
感謝を受け止めて報酬も正当でお互いが納得いくものを頂くのがこの世界では正しい行為なのでありがたく頂いておいた。
「それでは依頼完了と言うことで私どもは引き上げさせて貰います」
「ありがとうございました。錬魔士様のおかげで精霊仲間も元どおりの生活に戻る事が出来ました。改めてお礼をさせてください」
フラリスはそう言うと深々と頭を下げた。その後ミルフィに「また遊びに行く」と約束していた。
帰り道はフラリスとイリアスの二人が谷の入り口まで案内してくれたがフリッジスの加護が戻った谷は魔物も出なかった為に皆は女子精霊トークに華が咲いていた。
今回あまり活躍出来なかったミスドは何か考え事をしながら一番後ろからついてきていた。
ララは女子精霊トークについていけなかったらしく僕の横で何やら「責任」とか「ノーカン」とかぶつぶつ言いながら歩いていたかと思うといきなり「帰ったらケーキ作って!」と言い出したりしてた。
まあ、今回は色々大変だったから帰ったら甘いものを作って紅茶で一息いれるのも悪くないなとララの頭を撫でながら帰路についた。
* * *
「ただいまー!やっと落ち着けるな」
谷の入り口でフラリス達と別れて工房へと戻ってきた僕達は各自落ち着ける場所に移動して一息いれた。
「よーし!ララちょっといいか?」
「なによ?今凄く疲れてるんだけど」
「まあ、そう言うな。疲れた頭と体を癒す為に、甘いケーキを作ろうと思うんだがせっかくなんでララにも作り方を教えてやろうと思ってな」
「私でも出来るの?」
「そうだな。普通に料理スキルで作ると手間がかかるのと完成形にばらつきが出やすいんだけど、料理錬金で作ったら失敗しない限りまともなケーキが出来る」
僕はララにそう言いながらケーキの素材をテーブルの上に並べていった。
「いいか?料理錬金のコツは正確な素材分量と魔法石を入れるタイミングだ。分量はこの紙に書いてあるからこっちの秤で確認してくれ」
「魔法石を入れるタイミングはこっちの砂時計の落ちきる時がベストタイミングだ」
「よし。ララやってみろ」
僕は素材の準備を済ませると錬金釜をララに譲った。
「それじゃあ作ってみるわね。上手く出来なかったらあんたが作ってよね」
「はいはい。了解ですよ」
僕はニコニコしながらララが奮闘する姿を暫く眺めていた。
「よーし!出来たぁ!」
・・・その後、皆で楽しくお茶をしたが誰が作ったケーキかは秘密にしておく。
緊急依頼編完結です。
次は閑話を1話入れる予定で書いています。
よろしくお願いします。
 




