#9 国宝製造機な錬金魔法士 その一
工房到着!
「ただいまーって皆一緒に帰ってきたのだけど何故か言ってしまいますね」
「やっぱり工房が一番落ち着きますの。直ぐに紅茶をいれますの」
「着いたんでしょ?早く袋から出しなさいよ!」
工房に着いた僕達はそれぞれ自分が一番リラックスできる場所へ向かった。
ララは袋からもぞもぞと這い出てきてぶつぶつ言いながらソファーの上に陣取った。
それを見てあることを思い付いた僕はララに向かってある提案をしてみた。
「ララ、いつ頃まで工房に居るか分からないけどその姿だと録に街にも出られないだろうから良いものを作ってやろうか?」
「何よ?」
「お前がどう思おうとこの街で生活している殆んどは人間だ。
そりゃあ僕には精霊の皆が居るけどかなり特殊な事であるし、それでも見た目は人間とかわりない姿にしてるから街に出ても特に問題は起きないんだ。
つまり街で暮らす間は人の姿でいた方が色々と都合がいいんだよ」
「でも、私は人間の姿にはなれないわよ」
ララはそう言うとふいっとソッポを向いた。
まあ、当然そうなるよな。でも、僕の錬金魔法を甘く見ないで欲しい。
「『出来る』と言ったら?」
僕の言葉にララは驚いた顔で振り向いた。
「ララの居た世界では人間は魔族に操れて又は脅されて竜族を攻撃していたんだろ?
でもこの世界の人間は竜族を見たことも無いし、攻撃するといったことも無い。
大丈夫だ。強いて言えば珍しい生き物としてペットにされるか見せ物にされる可能性があるくらいだ」
「全然大丈夫じゃない気がするのだけど」
「まあ、いいじゃないか。で、どうする?」
「あまり乗り気じゃないけど捕まるのも自由が無いのも嫌だから仕方ないわね」
「よし。それじゃあ今から良いものを作ってあげよう」
僕はそう言うと工房の素材置場から幾つかの素材を取り出し始めた。
「えーと、これとこれとあとあれも必要か・・・。
よし、こんなものかな」
僕は素材の中から白い宝石をララの前に置いて、ララに言った。
「これからララを擬人化するアイテムを作成するんだけどその素材のうち、宝石が核になるんだ。
それで、今からララにどんな姿になりたいかをその宝石へインストールして欲しいんだ」
「い、いんすとおる?って何よ?」
「ああ、悪い。簡単に言えばどんな姿になりたいかを思い描いて欲しいって事なんだ。
やり方は宝石の前で人間の姿になった自分を考えてイメージが固まったら宝石の上に手を置いてインストールと言えばいいんだ。
大変だけど出来るだけ詳しくイメージしたほうが再現性も上がるから頑張ってみてね」
僕はそう言うと他の素材を錬金釜に入れて調合を始めた。
「また、マスターも無茶振りをするわね。
ララちゃん、あなたはこの世界の人間をあまり見ていないから具体的にどのくらいが標準か分からないと思うけど、あまり目立ちたくないなら大人びた女性は止めた方がいいと思うわ。あまり魅力的過ぎると何処に行っても男達から注目されるからね。
反対にあまり小さな子供も誘拐とかの犯罪に巻き込まれる可能性が高くなるからどうかと思うわ」
「年齢的にはシールより少し上くらいの15~16歳かな。成人してると制約がかかりにくくなるから何かと都合がいいんじゃないかな。
後は見た目を活発系にするかおしとやか系にするかくらいだと思うわ。
私がアドバイス出来るのはそのくらいね」
僕とララのやり取りを聞いていたセジュがララにアドバイスをしていた。
それを素直に聞いていたララはゴニャゴニャと自分のイメージを呟きながら宝石の上に両手を乗せた。
白かった宝石がだんだん赤く染まって行き、ルビーのごとく深紅に染まった時淡く光出した。
「おっ、上手くインストールされたみたいだな」
僕はそう言うと深紅に染まった宝石を受け取りそっと内容を解析してみた。
* * *
【ステータス】
#名前:ララ
#年齢:15
#性別:女
#身長:150㎝
#体重:40kg
#職業:未指定
#頭髪:シルバーロング
#瞳色:朱色
#胸囲:ミルフィくらい
#属性:炎属性
ふむ、思ったよりもまともな内容に少し驚いたがおそらくセジュのアドバイスが良かったのだろう。
胸囲をミルフィくらいとする辺り見栄も一人前にあるようだ。
だがアンバランス過ぎるし、なんとなく僕のイメージが違うから却下するけどな(笑)
僕はその宝石を受け取ると作成途中の錬金釜へ投入した。
釜は青白く放っていた光を桜色に変えて輝き始めた。
僕は最後の仕上げにイメージの固定とセキュリティ対策を盛り込んでアイテムを完成させた。
「はい、ララ専用の擬人化アイテム【人見ちゃん】」
そう言ってララの前に出されたのは竜の爪を模したペンダントだった。
「ネーミングセンスないわね・・・」
「うるさいな・・・まあいいや、使い方はララの首に掛けるだけでOKなんだ」
「大体3分くらいで変化すると思うぞ」
「ちなみにコイツには防犯効果を着けているからララ以外が使っても何にも起きないようにしているから大丈夫だ。
まあ、とりあえずテストも兼ねて使ってみ?」
「分かったわ」
ララはそう言うとちょこんと僕の前に座った。




