《二章》下 ランキングと間接キス
全力で帰ったのにはもちろん理由はある。
そう、なぜなら今日は超スーパーで行われるタイムセールがあるからだ。それもなんと半額!二個買うと一個無料なあれだ!
タイムセールは一週間にランダムで行われる。タイムセールの日程が決まるのは前回のタイムセールが合った日。
つまり常連客でなければわからない。だったらいいんだけど毎回ネットに誰か書き込むからみんな知っている。
「はぁ…はぁ…よしっ、ついた……!」
脚に休ませる時間すら与えず颯爽と店内に入る。
店内はすでに長蛇の列ができていた。といっても二十人程。
全力で走ったおかげでまだタイムセール対象商品は残っていた。
「おっ、今晩は刺身かな♪。」
ファミリーパックの何種類かの刺身がはいっているのが破格の値段でうっている。ラッキーラッキー。
買い物かごに刺身を入れレジへ並ぶ。あれ、この店員さん叶廻にどことなく似てるな。
「やっぱ叶廻じゃん。こんな所でなにやってんだ?。」
レジ打ちをしていた叶廻はすでに気付いていたらしくバレたと同時に睨んでくる。
そんなに働いてることを知られるのが嫌なのか?
「バイトしてんのよ。お金どうしても必要だから。」
「へぇー、意外だな。バイトなんてしない質だと思ってた。」
商品を機械で読み終わり叶廻は支払い額を提示する。
財布を出し金を払う。
「なぁ──「並んで来たからさっさと帰ってくれない?」
「あぁ、ごめん。」
隣を確認するといつもどうりの行列ができていた。
更に謝りこの場を去った。
家に帰ると買ったはがりの刺身を食べる量だけ皿に移し夕飯の準備をする。
夕飯の準備が終わるとテーブルで手を合わせ「いただきます。」と夕飯を食べる。
食べ終わると皿を洗い風呂へ入りベッドへ着きよこになろうとすると。
ピンポーン、とマンションのベルがなる。
時間を見れば今は11時。誰だ?
扉を開ければ今日スーパーで会ったはずの人が立っている。
「どうした?叶廻。」
ん?いや待てよ、何で俺の家知っているんだ?
「バイトのことなんだけどさ誰にも言わないでいてほしいの。」
少し頭をさげ、そう言った。
「お、おう、でもなんでだ?」
違う、とっさに質問してしまったがそんなこと聞きたいんじゃない。なんで家を知って…。
叶廻は小さい体を揺らし緊張の素振りを見せる。最後に顔を下に向けて言う。
「気にしないで、深い理由はないから。」
そう言い残し叶廻は可愛らしい背中を見せ帰っていった。
なんだったんだ?気になる。あと、家知ってることね。
そして俺は寝た。
学校へ着くとホームルームが始まる前に叶廻に聞くべきこと聞きにを尋ねたが教えないとだけ言われた。
ホームルームが始まりナミエ先生がいつもどうりのスーツ姿で教室に入ってくる。
重要な話としては身体測定の結果が廊下に張り出されること、とのことだ。
HRが終わると早速、身体測定の結果を見に行った。
「よかったな!さすが我が友。」
不動が力一杯背中を叩いてきた。
皆の視線が集うところを見てみれば結果は、
「一位。」
ほぼ満点に近い点数で俺はトップの座にいた。
嬉しさの余りガッツポーズすらしてしまう。でもここからだ、身体測定で一位に慣れたが一番強いというわけではない。
が、今は喜ぼう。今日は焼き肉でもいこうかな。
「おいっ!てめぇ!」
ガタイのいい男が眉間にシワを作り胸ぐらを掴んでくる。はぁ、疲れる。
「んだと、ゴラァ!」
あ、やべ声にでてた。
おいおい皆、アイツ終わったなみたいな目で見ないでよ。
「なぁ、下ろしてくれないか?買ったばかりの制服なんだ。」
「ふざけてんじゃねぇぞ!あぁ?」
あぁ?ってなんだよ(笑)
「ホントに下ろしてくれないのか?」
「殺すぞ。」
あー怖い怖い、何が目的なんだよ、仕方ない。
ガタイのいい男の腕を掴み足で地面を蹴り腕に脚を絡みつけ倒した。
「ぬぅわっっ……くぅっ…ぅ……!」
「ごめんなさい、は?」
俺ゲスかな?仕方ない、コイツが悪いのだから。
「君達!なにをやっている!」
その先生の言葉に冷や汗をかき職員室に連れて行かれた。
「はぁ、なんで俺も怒られたんだよ。」
絶対俺の一方的だったじゃん。
愚痴をこぼしながら教室に戻るとすでに授業は始まっていた。
静かな授業のためか、俺の扉を開ける音でクラスのほとんどがこちらに視線を向けてきた。
恥ずかしい、仕方ないのかな?
颯爽と授業の用意をして(遅れたため)たった五分の授業を受けた。
授業が終わると昼休みの鐘かなり一層腹が減る。
トントンッ、肩を叩かれ振り返れば凛々さ極まる凛々菜がいた。
「弁当作ってきたの。はい、コレ。」
「えっあぁ、ありがとう。でも、弁当自分の分あるんだよね。自分でつくったのが。」
頬をぽりぽりかきながら答えると予想外の予想外なコメントが帰ってきた。
「それなら、弁当交換しない?」
「あぁ、そうだな。」
俺が弁当無かったら凛々菜なに食べる予定だったんだ?
弁当を互いに差し出し頂くことにした。
凛々菜の弁当箱はピンク過ぎて男の俺には次元をも越えてしまうほどだ。
かわって俺の弁当箱はただ黒くそして黒い。弁当箱変えようかな。
凛々菜のピンク弁当を開けると
「なっ……!?」
予想外過ぎる。いや、弁当箱からすでに始まっていたのか。
中も「真っピンク……。」
お米がピンクになっている。食紅でも使ったのだろうか。
お米の上にはハムを切り取り「大好き」と綴られている。
てか、米しかねぇ。おかずなしってまじか。
俺の弁当は出来るだけ野菜多めで構成されてて、肉はあまりない。健康に気を使っているからだ。
「華湊斗のお弁当、綺麗。」
「はは、ありがとな。」
ヤバい、凛々菜の弁当に対して、褒めていいのかわからない。
凛々菜は、褒めた。でもさすがにコレは…。
「私のお弁当、どう?」
神よ、俺はどうすれば…!
仕方ない、とりあえず
「うん、可愛いよ。」
だって、ピンクだから……。可愛いかなって。
ニコッと凛々菜は胸に手を当て恋する乙女感を出す。
可愛いな。
余りの可愛さに天国に行きかけたが、ブンブンと頭を振り正気に戻る。
食べるかってあれ箸がない。
「なぁ、箸ってどこにあるんだ?」
その言葉に凛々菜は何かを思い出したかのようにカバンから箸を取り出す。
「はい、あーん。」
「あーん?」
ズボッ、と口の中にピンクのご飯が入ってくる。
若干、「うっ…。」となりかけたが味は絶品だ。
思わず美味しいといってしまったほどだ。
「良かった。」
「ホントに美味しかったよ。俺の弁当も遠慮しないで食べていいぞ。」
凛々菜は頷き俺の一番自信作の唐揚げに箸を向ける。
口に入れ食べ終わると美味しいと言い残し他の物もどんどん食べていった。
あ、俺の箸、ない…。
結局、あのあと近くの人から割り箸をもらって食べた。
そして今は放課後。何故か俺は教室にで待っててと叶廻に言われ叶廻と二人きりだ。
凛々菜には、校門で待っていてくれと言っておいた。
議題は本当に凛々菜と付き合っているのかどうかと言うことだ。
付き合ってると言っているのだが何故か納得してくれない。
「えぇっと、あのさ何で叶廻がそんなこと気になるんだ?」
「そっ、そんなことはどうでもいいじゃない⁉」
急に話を反らしたせいか叶廻は何故か動揺し赤面している。
と、ここに校門で待っていたはずの凛々菜が教室に戻ってきた。
「華湊斗、遅い。」
「あ、ああごめん。叶廻、悪いけどまた明日だ、それじゃ。」
叶廻は大きなため息をつき、可愛らしく睨んできた。
流石に俺も心が痛む。
だがこれ以上凛々菜を待たせられない。
あ、良いこと思い付いた。
先に凛々菜に下駄箱まで行っててと言って大急ぎで叶廻の所まで戻った。
そんな俺に「な、なによ。」と叶廻は顔を反らした。
「ごめん、だからその代わり明日弁当作って来るよ。それで、どうかな。」
人が変わったかのようにほほえんだがすぐに元に戻った。
「わ、分かったわよ。それで許してあげるわ。こっ今回だけだから!いい?絶対だから!」
「わかった。」
叶廻は恥ずかしくなったのか顔を赤く染めあげ全力疾走して帰っていった。
下駄箱に戻ると凛々菜が座って待っていた。
「ごめん、ずっと待たせて。」
「ううん、別に気にしてない。でも叶廻がちょっと変だった。どうしてだろう?」
流石に理由は言えず適当に誤魔化した。
校門を越えると凛々菜が口を開いた。
「今日は、凄く嬉しかった。」
「弁当のこと?」
確かに弁当は美味しかった。
「うん、弁当美味しいって言ってくれたし何より間接キス出来たから。」
ん?なんのこ、と…だ……。
あ、箸……。
今日はなんとも言えない一日でした。