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Unlucky&Lucky

作者: 神田留魔

 私はいつも幸運だった。

 小さい頃、公園の砂場で欲しかった人形のおもちゃを見つけた。そして家に持ち帰ってよく遊んだ。

 小学校一年生の時にはジャングルジムの頂上からバランスを崩し倒れるように落ちてしまった。けれど、先生が飛び込んで受け止めてくれた。私は無傷で済んだ。その後、先生は誰かに対して謝っていたけれどよく覚えていない。

 小学校六年生の時に、修学旅行があった。行き先は私が今でも住んでいる大阪から遠く離れた長崎県だった。当時、台風が接近しているという予報がでていたが、その予報は外れて鹿児島県を通過していった。

 中学三年生の時には、生徒会選挙に会長として出馬した。もう一人男子がいた。しかし、選挙当日にその男子は、体調不良により学校に来ることができなかった。そして演説もできずに私の勝利に終わった。

 高校一年生のとき、定期テスト前だというのに私は勉強をしていなかった。しかし、定期テストの前日になにやら国会で新たな法案が提出されたらしい。(簡単にいうならば何でもかんでも手に入れた収入には税金を付けるものらしい。確か収入税金法?とかいう名前だったか。)が、正直こんな法案など私には関係ないと思っていた。しかしこの法案に反対する人達がデモを起こした。その結果として私が乗っている電車の線は終日運行停止。私はその一日で頭に詰め込んで、テストでの赤点回避が出来た。結局この法案は強行採決により可決されたらしいが私には関係ない。

 高校二年生になり、私は吹奏楽部に入部した。その部活動の一環で、他校へ合同練習へ行って帰るときに学校の正門の前で宝くじを拾った。当たる訳ないと思いつつ、その宝くじを持って帰ってスマホで調べてみると一等で九千万円当たっていた。自分で言うのもなんだが私の欲はマリアナ海溝ほど深いので全て自分のものにした。もちろん、親には言わずにね。

 しかし、私にも不運というものが訪れている。それは高校三年生になった今、クラスのある男子に好かれていることだ。その男子というのは中学生の時、私に選挙で負けた男子である。しかも、その男子には彼女がいる。その男子は私とその彼女のどっちを取るか。すなわち、彼は現状の恋を保つか、新しき恋を追うかということで迷っているらしい。少女漫画的思考を持つ方々なら

「え、好かれてるんだからいいんじゃないの?羨ましい」

 などと軽快な発言をされるかもしれないが私がそんな思考に陥らない理由は私の心にある。それは私がその男子のことを好きではない。いやもっというなら嫌いということである。嫌いなものから向けられる好意ほど吐き気のするものはない。

 早くこの不幸が終わらないだろうか……


-----------------------


僕はいつも不運だった。

 小さい頃、お母さんが何を間違えたのか、誕生日に女子用の人形のおもちゃを買ってきた。この時点で不運だったが、我慢してそれで遊んでいた。しかし、さらに不運は続く。あろうことか、僕は公園の砂場でその人形のおもちゃをなくしてしまった。次の日、必死に探したけれど二度と見つかることはなかった。

 小学校一年生の時には、ジャングルジムの辺りを走り回っていたら先生が急に飛び込んできた。しかも、その先生というのもラグビーでもしてるんじゃないか、っていうほどの体格のいい先生だった。その先生にぶつかられた当時の僕は腕が変な方向に曲がったらしく、骨折したらしい。先生に謝られても骨折した腕は痛いままだった。

 小学校六年生の時に、修学旅行があった。僕が住んでいる大阪からとてもとても離れている鹿児島県への修学旅行。当時、台風は長崎県に直撃する予報がでていたのに、台風は気分を変えたらしく、鹿児島県に直撃した。そのせいで修学旅行のプログラムはほとんど中止となった。

 中学校三年生では、生徒会選挙に会長として出馬した。もう一人女子が会長に立候補していた。しかし、選挙当日に僕は、体調不良、腹痛に襲われてしまい。学校に行けず、演説ができずでその女子が当選した。恐らく前日に食べた牡蠣が当たったのかもしれない。

 高校一年生のとき、定期テストがあった。僕は三週間前から猛勉強をしていた。なのに、テストの日にはデモが起こり電車は止まってしまった。次の日のテストにはいけなかった。また牡蠣が当たってしまったらしい。最悪の気分だった。

 高校二年生の時、僕はお金をコツコツ貯めて宝くじを一枚買った。が、それが運の尽きだった。その後、僕は部活動で学校へ行った時に落としてしまったらしい。几帳面な僕はその宝くじの番号をメモしていたのでそれを調べてみると、一等だった。

 しかし、僕にもついに幸運というものが訪れた。それはこの不運な落とし物をしたあと、彼女ができた。一生大切にしよう。そう考える僕に不運は狙ったかのように襲ってくる。

 高校三年生になった今、僕はクラスの女子に恋をした。それは中学生のとき、選挙で僕に勝った女子だ。が、僕には彼女がいる。僕には選べない。どちらかを選ぶかなんて僕には出来ない。

 悩みに悩んでいたある日、僕はふと自室で思い出した。これまでの僕の人生を。小さい頃から中学三年生までの決して長いとは言えない極々不運な人生を。不運が積み重なったあと、彼女ができるという最高の幸運が舞い降りた。ならば、僕にとっての最大の不運が訪れれば、その後、最大の幸運が訪れるのではないか、と考えた。

 では、僕にとって最大の不運とは何か?

 答えはすぐにでた。―――僕の体は風を切った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ジリリと目覚まし時計がなる。これが私の朝を知らせる合図だ。私はカチッとスイッチをおし音を止める。私はゆっくりと上体を起こし、目をこする。まだ寝ていたいというケルマデック海溝ほどの欲を抑え、洗面所へ向かい、歯を磨いたり、顔を洗ったり朝の用意をする。

 朝御飯を食べているときに、ふとニュースの音声が耳に入る。

「昨夜未明、マンションの四階に済む十八歳の男子高校生が、自室の窓から飛び降りました。幸いにも男子高校生は足の骨折ですんだとのことです。四階の高さからということを考えると、まさに『幸運』と言えるでしょう。男子高校生は人間関係に……」

 私は、あることに気がついた。それは、テレビに夢中になっているうちに、家を出る時間を少し過ぎてしまっていたことだ。急いでテレビを消して、パンを口に詰め込み玄関のドアを開けた。そして自転車に乗り、全力でペダルを蹴った。

 そこでまた私は幸運を発揮する。それは門の前に立っている先生は私を見逃してくれた。自転車ですごいスピードを出している私の鬼のような形相を見ていたらしい。

 私は少し遅れたことを気にしつつ、教室の後ろのドアからこっそりと入った。当たり前だが、そこには全員がそろっていた。

 ただし、あの嫌いな男子を除いては。

 その時、先生は私が入ってくるのを待っていたかのように口を開いた。

「残念なお知らせです……」

 先生が発していた言葉の意味するところは、まず私の嫌いな男子は昨日、自室から飛び降り足の骨を折った。

 そして、彼は卒業式まで入院するということだ。

 私はクラスメートであるという体裁上、悲しげな表情を浮かべていたが、内心はこう思っていた。

(私には幸運なことしか起きないのね……)

 そんな考えをかき消すようにドアが開く音がした。そこにいたのは二人の警察官。二人のうちの片方が私の名前をフルネームで呼ぶ。不思議そうに見つめるクラスメート達。そして警察官は私を絶望の淵に叩きのめすように言葉の弾丸を放った。

 「えぇ、二年前に可決された収入税金法で、あなたが得た宝くじのお金についての脱税容疑がかかっています。この収入税金法がなければ税金はかからなかったんですがね。署まできてもらいましょうか。」

 私はやっとわかった。運だけじゃどうにもならないことがある。私は静かに涙を流しながら、そっと呟いた。

 「幸運と不運は紙一重だ」と

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