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第1話 「僕の名前は」

インターネットの普及に伴い、世界中にいる人とのコミュニケーションが容易になった。

アバターと言う仮想世界における自らの分身として動かす。

そこには現実と違うもう一人の自分が存在する。


容姿は自由にカスタマイズが可能で、やり取りはチャット一つ。

現実で声を出す必要が無い為性別の特定も難しく、それをいい事に自身と異なる性別のアバターを作成する者も多い。


例えば、MMORPG(俗に言うオンラインゲーム)の”中の人”の男女比率は一説では8;2とも9:1とも言われている。

無論野郎の方が多い。


女キャラクターで中身もそれとなくロールプレイするだけで羽虫のように男共が寄ってきて色々と便宜を図ってくれる。

この時点でネトゲ内における「女キャラ>>超えられない壁>>男キャラ」と言う構図の完成だ。


もし男キャラで始めようものならば声すらかけられない。 現実世界の一部で囁かれる「男尊女卑」の文化は仮想世界においては存在しない。



しかしそれだけではネトゲ内の圧倒的女キャラ比率の説明にはならない。 


昨今のネトゲは所謂”萌え要素”と言うのを売りにしており、可愛い女キャラクターを作って専用の着せ替え用衣装などを

有料コンテンツとして販売するビジネスモデルが流行っているからだ。


自分の仮想世界キャラを可愛く着飾って心拍数が高くなる男性諸君が圧倒的多数だと思うといささか不安な気持ちになるが、兎にも角にも

「可愛い女の子(二次元三次元問わず)には財布の紐が緩くなる」のは悲しい哉、男の性としか言いようがないであろう。


「これは運営の罠だ」と声を挙げている諸君にアドバイスをするならば。。



キャラは男に限る。



以上。



---------------------



人間と言う生物は5つの行動を起こした場合、1つでも失敗があればそれが大きく記憶され、残りの4つの記憶が霞んでしまう。



例えば試験で5科目中4科目で80点を取り、残りの1科目で50点を取ったとしよう。


ほとんどの人は「4科目で80点取れた」と言う思考より先に、「1科目で50点取ってしまった」と言う感情が先立ってしまう事と思う。


実に悲観的。。否、欲深い生き物と言うべきだろうか?



この程度の事ならやり直しは十分に可能だ。「次の機会」が与えられる。



では、もしこれがやり直しのできないくらい大きな事だったらどうだろう?


犯罪行為ではないものの明確な処罰が確立されていない場合、「基準」はどう定められるのか?



そしてその基準を決める人物が、”自分と同じ場所にいた同じ立場の人間達”だったとしたら。

その場の状況証拠だけで判断を下し、周りの雰囲気に流され言いたい事も言えず、

結果一人の人間の「将来」という歯車が欠け落ちたとしても、現実世界と言う大きな時計は回り続ける。



「この世界は悪意と偏見に満ちている」


僕が高校生活最後にこの身をもって覚えた教訓だ。




---



「ジリリリ」



「ん〜〜」


僕は目覚ましのアラームを止めゆっくりと覚醒していく。


時間は午前11時50分。常人の感覚なら遅い目覚めだろうが、僕にとっては早い方だ。


普段寝るのは朝7時過ぎ。昨日も今プレーしているネトゲの「地獄の朝まで耐久PT」を組んで解散したのが9時過ぎだった。


本来ならば、夕方頃まで惰眠を貪っているはずなのだが今日に限っては特別な事情がある。


数分かけてベッドから起き上がり、昨日届いたMamazonの箱を空ける。


「これが次世代オンラインゲーム対応のウェアラブル端末か・・」


それは一見普通の眼鏡である。 


一世を風靡したVRバーチャル・リアリティのオンラインゲームに終止符を打つが如く登場したのがこの次世代型ウェアラブル端末。

通称ルビック(RVIC:Real-Virtual Integration Chip)


直接肌につけるタイプのアクセサリであれば、体内を巡る脳からの電気信号を感知し、全てのコマンドや動作を思考一つで行えると言う。

どうやらBMIブレイン・マシン・インターフェースプログラムがベースとなっているらしい。


詳しい事はよく分からないが、要はこれ一つでゲーム内キャラの操作全てが脳で考えるだけで反映されるらしい。


煩わしいマウスやキーボードの操作と、モニター越しにゲーム画面を見る必要がなくなる。


ワイアレスネットワーク対応、内臓のマイクロディスクに直接プログラムをダウンロードして起動させる仕組みだ。




一通りの初期設定を済ませた。時計を見ると11時58分。

普段なら日夜を問わず、時間の概念すら忘れてネトゲに没頭している僕が、今日に限って時間を気にするのには理由がある。


それは今日12時より、RVICを開発した会社のゲーム部門が満を持して自社端末対応のオンラインゲームを配信するからだ。


「現実世界と仮想空間の融合」を謳い文句に新しいゲーミング体験が出来るとの事で配信に伴い各メディアに注目されていた。



・・・



・・





12時00分。



「Second Life In Virtual Online - エスリブ オンラインの世界にようこそ-」



早速アクセスするとタイトルの載ったトップ画面に移動した。


セカンドライフ in バーチャル


「第二の人生を仮想世界で」。。か


きっと多くの人達が「あの時、あの場所からやり直せたのなら」という思いがあるだろう。


人生に失敗はつきものだが、その先に成功が必ずあると言うのは成功者の欺瞞だ。


あの時、あの場所からやり直せたとしても”今度成功する”とは限らない。


現実世界の選択肢は仮想世界のように選択肢が設定されていてその中から選べばいいものではない。

様々な状況を鑑みた上で一番正しいと思われる選択をセーブ&ロード無しで選ぶ決断力と考察力が必要になる。


しかしながら、仮にセーブ&ロードで選択をやり直せたとしてもゲーム世界ではルートが確定しており何度同じ選択肢を選ぼうが同じ結末を辿る。

そのようにゲームがプログラムされているからだ。 そこに外的要素が介入する余地はない。


だが現実世界においては、同じ選択肢を選んだとしても結末が同じとは限らない。

選択肢を選んでから結末に辿りつくまでの過程がある。このプロセスは関わる者全てのその時の状況により結末は影響される。


結局の処、選択肢を選んだ以上どういう結果がでるかは運次第と言う事だろう。

物事に絶対はない。必ずしも不確定要素があり、それが全て自分に良い方向に働くかはその人の運だ。


だから僕はきっと「運がない人間」なんだと思う。



---



限りなく現実世界に近い仮想空間。 それにはまず自分の分身にあたるアバターが重要になってくる。



キャラクター作成画面に進む。


そこにキャラクター作成枠は一つしかなく、このキャラクターは削除する事が出来ない。また、プログラムを再インストールした場合

にも作成したキャラクターは消えずに残るとの注意書きがあった。


「つまり、気軽にキャラ編集はできないということか・・」


基本的なキャラクター作成画面の項目は以下の通りだ。


Character ID:

Sex:

DOB:

Height:

Weight:

Ethnic:


ここまでは自分で設定が可能。


細かい容姿のパーツは次の画面でカスタマイズが可能なようだ。




「ブゥゥゥ。。ブゥゥ。。」


設定をどうするか思案しているとき、携帯のバイブレーション音が聴こえた。


画面を見ると「灰谷 神」という名前が。


やれやれ、早速かかってきたか。



通話ボタンを押してスピーカー通話に切り替え通話をする。



「おはよう、無事に起きれたようだね」


「おはー、結局あの後寝付けなくてずっと起きてたわ」


「流石、廃神様」


「いや〜それほどでもって、お前 今俺のあだ名の漢字違ったよな。絶対!」


「ははっ。。。ご明察」



----


彼の名前は灰谷 神 ≪はいだに じん≫。 あだ名は「灰神=廃神」


高校時代の同級生であり、いわゆる廃プレーヤー。

僕が引きこもりネトゲユーザーになる原因を作った奴。。とも言えなくもない。


元々スポーツ特待生でうちの高校に入学し、”黙ってればイケ顔”と言う事もあり学校の女子からは人気があったのだが、

オープンなオタクであった事から、交際にまでこぎつけた事はなし。


本人曰く「向こうから寄ってくるチョロインに興味はない」 との事。


体育会系と言う事もあり、なかなかタフな奴で高校の時も週末通しでネトゲプレーして月曜早朝から部活に出てた事もしばしば。


大学に入ってからはサークルにも入らず、時間さえあればネトゲに勤しむ末期患者だ。



----


「今、エスリブのキャラ設定画面にいるんだけどさ〜」


「ああ、僕も今設定どうするか考えてた」


「何で英語表記な訳? 意味わかんねーし」


「世界同時配信だから標準が英語なんじゃないかな」


「ふーん、つかさ、この設定項目ヤバくね?」


「ん? 普通だと思うけど?」


「sexって何だよ。俺まだ経験ないんだけど」


「は?」


「いや、ふつーこんなのキャラ設定に必要ないだろ? プロフィールに sex:0 とか書かれたら恥ずかしいんだけど」


「ここは誤魔化して”週ニ”とか書いておくべきか・・」


「・・ちょっと待て、神。何か勘違いしてない?」


「え?」


「それは性別項目だよ。 最近はGenderと書かれてる方が多いけど。。」


「・・・。」


「・・・。」


「くっそおお、そうならそうと最初から書けよ!」


「神はスポーツ万能だけど、語学の方はからっきしだね」


「いや、俺は語学に限らず勉強全般アウトだった」


「それでよく大学に入れたね」


「おう、ネトゲ1か月封印して頑張ったからな」


「たった一か月の受験勉強で受かるところがすごいんだけど」


「まあ、神だしな(笑)」


「(苦笑)」


「とりあえずキャラはいつもので・・と」


「灰神?」


「それでもいーんだけど、折角だし捻りが欲しいとこだな」


「英語にしてみるとか?」


「HAIJIN? ってか」


「いや。。それは微妙だと思う」


「だよなぁ〜」


「Ash_Godとかは?」


「アッシュゴッド?」


「うん、呼び方もアッシュとか結構格好いいとおもう」


「そうか、んじゃ〜それにすっか」



「んで、お前の方はどうするんだよ?」


「ん〜・・どうしようかな」


「お前毎回キャラ名違うし、いつも間違えそうになるんだけど」


「リアルに関連付けたくないからどうしてもバラバラになっちゃうんだよね」


「ふーん、そんなもんなんかねえ。別にちょっと使ったくらいじゃ身バレしねーだろ」


「まあ、そうなんだけどね・・うーん」


「まあ長い付き合いになるだろうからじっくり考えればいいぜ、んーDOBは俺でも分かるぞ生年月日か。12/24/1995。。と」


「おい、入力が正しくありませんと出るんだが」


「神、月を先に書くのは日本だけだよ。ほとんどの国は日・月・年の順番に入力するから24/12/1995だよ」


「ったく、ヘルプくらいつけろってんだ。 えー身長、体重。。イー。なんだこれ?」


「エスニック。人種の事だよ。ホワイト、アジアン、アフリカンブラック、ラテン・・とか。公開したくない人用に国籍でも選べるみたいだね」


「じゃあ日本人にしとくか。 これで完了っと。 よーしキャラのビジュアル選ぶか」



「僕もキャラ作成終わったよ」


「まじかっ!いつの間に」


「神が一人コントをやってる内にね」


「ふっ。で、お前キャラ名何にしたんだ?」


「やっぱりこれが僕らしくていいと思うんだよね。 僕の名前は。。。」










 


















初めまして。 Makuと申します。


此度はこちらのページに立ち寄って頂き有難うございます。 


私には元々文才はなく、只でさえ海外在住歴の方が長い為日本語すらも怪しいレベルです。

拙い文章で「ちょっと、作者が何言ってるかわからない」的な内容が多々あると思いますが、暖かい目で見守って頂ければと思います。(ちなみに生まれも育ちも日本人です)


海外にいる環境から日本のラノベ文化に触れたことがなく、深夜アニメをベースに「こう言う話を自分で書いてみたいな」と思いこちらのサイトで連載と言う形を取って執筆するに至りました。


一応れっきとした社会人の為、執筆は毎日夜1時間位でペースは遅いと思いますが、勤務中もプロットを考えたり登場キャラの構想を練ったりと楽しみながらやっております。


初めの数話は主に世界観の説明が続く予定です。 本編に入るにはまだかかると思いますのでご了承ください。


それではまた。




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