迷走
部屋を出て当てもなく走った…
気付くと緑と白と青のボーダーが看板。
その近くに小さな複合型の店があった。
「こ・ん・び・に・え・ん・す?」
知らない英文ですね。
文字が読み書きが出来ても意味が分からなければしょうがない。
現在位置や目的地の名称も分からない…
それだけで気持ちが沈んだ。
店の前のベンチに腰掛けると溜め息が出た。
誰かに聞こうにも日本人は国外から来たってだけで話を聞いてくれない…ってか避けて行く。
「ワタシの日本語…真が言う通り…変だか…ら?」
日本人に拒否られていると、ワタシに勉強を教えてくれたシルヴィアをバカにされたみたいで悔しかった。
「おっ嬢さ~ん。ど~したの?」
軽薄そうな声の方にワタシは顔を向けた。
赤髪とさか…噂のヤンキーか?
「おっ可愛いじゃ~ん♪名前教えてよ~観光?案内するからさ~♪」
何なのコイツ!馴れ馴れしい!!
一言言ってやろうと思ったけど…喉に何か詰まった様に声が出ない。
「あれ~日本語苦手かな~?」
ヤンキーがワタシの右手首を掴んできた。
(嫌だ…恐い。助けて…助けて!真。真。真。真。真。真。…まこと…!!)
「すみませんが僕の彼女なんで、手を離してくれませんか?」
ワタシが一番聞きたかった声がした。
それと同時にワタシの手首が軽くなった。
「何だよ!男居るなら最初に言えよ!」
ヤンキーはそのまま去って行った。
「シア。大丈夫?」
真はワタシの前に手を差し出していた。
ワタシはその手を掴むと自分の方に引っ張った。
真がたたらを踏んだままワタシに抱きつかれたから、ワタシはそのままベンチに着席。真は中途半端な格好でワタシに覆い被さった。
ビックリした彼の追い討ちをかけるように、抱き締めた。
真が慌てて離れようともがくがワタシはそれを許さなかった。
ヤンキーなんかに恐れているワタシ。
真に触れて安心しているワタシ。
どちらも今は彼に知られたく無かった。
でも…無駄だったみたいです。
だって彼の手がワタシの背中を撫でた時には目の前のシャツは涙で濡れていたし、筆舌に尽くしがたい事を口走っていたのですから。
でも、ヤンキーに触られた時は嫌悪しか無かったのに、真には今も抱きついているのに物足りない気持ちだった。
「真…ありかと。」
言いたいはこんなのじゃ無いのに口からは違うことを喋ってるみたいで気持ち悪かった。
この気持ちなんだろう?
「帰ろうよ!シア。」
彼の申し出は嬉しかったけど今離れるのはもっと嫌だった。
だから彼をら困らせることにした。
「ワタシにキスしたら帰ってもいいよ!」
案の定彼は困った顔をしてたが直ぐにワタシの頬にキスをしてきた。
もう一度、『一緒に帰ろう。』と言ってきた。
ワタシは返事の代わりに彼の足を踏み突き飛ばすと、
「意気地無し!」
そう言って家路に向かった。
真は慌てて追いかけてきた。
この時気づいてしまった。
ワタシの彼への気持ち。
最高のオモチャだ!(確信)
本日8/12。
誕生日をむかえました。
それだけです。