お嬢様とメイド
シアとシルヴィアの出会って間もない頃の話です。
本編では無いですが、2828してご覧ください。
ワタシの二つ上の教育係それがシルヴィアの正式な役職だ。
だけど彼女の働きは教育係の枠など無かった様な振る舞いは自尊心を傷付けるには十分だった。
「何なのよアイツ!」
ワタシは年齢の近い友達が出来ると最初は考えて彼女を教育係に迎えたのに、蓋を開けたら銀狼みたいな牙で噛みついて来た。
バフン!投げつけた枕が壁に…届かず床に落ちた。
別に壁に当てたかった訳じゃ無いんだから!
誰か見てる訳じゃないけど恥ずかしさが心を潰しそうになるから、言い訳をひたすら考えててしまう。
「シンシアシス。枕を投げて遊ぶほど寂しいのですか?このボッチ!」
ワタシは《ボッチ》の意味を知らないけど馬鹿にされたのは何となく分かる。
「何よ!メイドの分際で主人を侮辱する気?」
「シンシアシス。馬鹿にされたくないなら、コレをマスターして下さい。」
葉書サイズの紙を渡してきた、ソコには幾つかの模様見たいなのが書いてあった。
「これ何?」
「日本語の平仮名です。コレをシンシアシスがマスターするまで私は、食事は取りません。」
この発言が本当なら、シルヴィアは狂ってんじゃないかと思った。
その日の夜に日本語のテストをやったが、結果は散々だった。
きっと彼女も人間だし空腹に負けて食事若しくはクッキーでも食べると思っていた。
翌日朝に食事を終えたワタシは近くのメイドに何となく聞いてみた。
「シルヴィアは昨日は食事はとっていたの?」
「はいお嬢様。昨日は朝食以外口にしていないと賄いメイドが言ってました。」
「そうか、有難う。」
ワタシはシルヴィアが勉強を教えに来る前にメイドにお茶とお菓子を用意させた。
「シルヴィア、昨日から食事を取って無いそうね?授業前にお茶でもどう?」
親切心で言ってみた。空腹に負けて感謝すると思っていた。
「平仮名のテストを今からやります。全問正解ならお茶にしましょう。」
耳を疑った…しかしシルヴィアを信じるには十分だった。
「テストは2時間後で良い?」
シルヴィアに確認を取る。
「構いませんが宜しいのですか?」
ワタシの本気なら絶対に大丈夫!
テストギリギリまで書き取りをやった。
そしてテストは惨敗した。
「だいぶ良くなりましたが《あ・お》《わ・ね》がまだ苦手みたいですね。」
「シルヴィア…ごめんなさい。」
大口叩いて結果はボロクソ…ワタシ…格好悪い。
「お嬢様。メイドふぜいに頭を下げるものでは無いです。次のテストは明日にでもしますか?」
明日?
ワタシの気持ちは決まっていた、ふざけるな!
「2…いや、1時間後にテスト。」
「しかしお嬢様、もうじきお昼になりますが…」
「要らん!」
「しかし」
「何度も言わすな!ただテストに合格したら一つ言うことを聞いてもらうぞ!」
「ええ、合格出来たらですがね♪」
約1時間ひたすら苦手を克服するために時間を使った。
たった一つ約束させる為に努力をした。
「さあ始めます。」
シルヴィアの合図とともにワタシは白い紙に平仮名を書いていった。
結果は合格。
「やりましたねお嬢様。」
シルヴィアは手を叩いて喜んだ。
「それで約束なんだけど…」
「なんでしょう?お嬢様。」
「勉強の有る日は友人として食事を一緒にしたい。」
「分かりましたが、友人をお嬢様や呼び捨てはどうもムズムズしますね。」
シルヴィアが照れると少女みたいな顔になるんだ…カワイイ♪
「ならワタシは《シア》でいい。シルヴィアは《シルヴィ》で良いか?」
「ええ。構いませんお嬢…シア。」
「シルヴィ、慣れないなら別のにするか?」
呼びづらいのかな?
「シア。シア。シア。シア。シア。シア。シア。シア。シア~」
吃驚した。でも嬉しかった。
「じゃあ、早速お昼二人前持ってこいや~」
それから日本に来るまでシルヴィがワタシをシンシアシスと呼ぶ事は無かった。
愛称で呼ばれている間はボッチじゃ無い…そう信じていた。
不安な日本での暮らしもシルヴィが居たら何でも出来ると思った。
そっか…ワタシ本気だったんだ。