新参上!
「どういうことだ?」
彼女は僕達の目の前で仁王立ちして怒っている。
ただ長年付き合いのある僕にしか分からないくらいの怒りマークを浮かべていた。
新は、感情豊かな女の子なのだが家族と僕以外には表情が伝わらない。
だからといって能面って訳じゃない。
今回は分かりやすい位に眉毛を少し吊り上げてヒクヒクしてる…激昂してらっしゃいますね新さん。
ブチギレ一歩手前に空気も読まずシルヴィアが僕に耳打ちしてきた。
「彼女は誰ですか?」
シアもシルヴィアも今は服は着ている。
「そこ、私語は慎め。真。釈明するなら聞いてやる。話せ。」
「新、勘違いをしてるよ…」
「ほう。裸の女性を二人もはべらせている状況を、私がどう勘違いしてるのか、ご講説願いたいのだが?」
「シアとシルヴィアはホームステイで家に来た留学生です。」
「その留学生が全裸だったのは何故か?」
「ワタシは真の嫁になりに来た!」
もう我慢出来ないと立ち上がるシア。
「真。本当か?」
新は少し目を大きくしてビックリしていた。
「事実で御座います。新様。」
シルヴィアは淡々と言い出した。
新は僕の胸に飛び込み目に涙を溜めてポカポカ叩いてくる。
叩かれて痛く無いが…一番ヤバイ状況だった。
何がヤバイって完全ぶち切れモードに突入してしまった。
「真ちゃんの浮気者。浮気者。浮気者
。浮気者。浮気者。…」
ポカポカ!ポカポカ!ポカポカ!ポカポカ!…うぁぁぁぁぁぁあん!!
「新様はどうされたのですか?」
流石のシルヴィアも不安になったようだ。
僕は新の頭を撫でながら告げる。
「新はブチギレると幼児退行するんだよ…」
腕の中でスンスン言ってる新の小さい身体がより小さく思えた。
「それは難儀な…」
シルヴィアはそう言いかけるが口後盛る。
「新は…新は不器用だけど真っ直ぐなんですよ。何をやるにも。」
「真様は新様のことを好いておられるのですか?」
そう言ってるシルヴィアが驚いた様に口に手を当てていた。
「僕は恋愛事態したこと無いのでわかりませんが…彼女とは長く一緒に居たから家族みたいなんです。」
それに命の恩人を嫌いになれない!
「そうですか…さぞガッカリでしょうね。新様がですがね。」
シルヴィアは僕の顔を見ると溜め息を吐いた。
「それはどういう意味ですか?」
僕には彼女の言ったガッカリの意味が分からなかった。
「本当に分かってらっしゃらない様ですね…全く女心を勉強してきて下さい。」
新様も報われませんね…ハァ!と、溜め息が混っていた。
「シア。真は渡さない。」
新は泣き止むとシアを視ずに言った。
普段他人と事を構えない彼女にしては珍しい反応。
「新も真の妻になればよいのでは?」
さも当然の様に言うシア。
しかし、その言葉に反応したのは新でも真でもない、シルヴィアだった。
「シンシアシス」
身体を硬直させて信じられないって顔をしたシアが立っていた。
顔色は白さが増し、悲しむ姿に色気が出ていた。
「っ!」
シアは逃げるように部屋から出ていった。
乱暴に閉められたドアの音が壁を震わせた。
「真様。シアをお願いします。私は新様にお話が有りますので。」
「この女の言う通り。真邪魔。ラスボス倒す。」
「言葉に負けて武力行使ですか?」
煽るシルヴィア。
「まだ負けてない。驚いただけ。」
新も負けてなかった。
仕方ない…二人とも怪我だけはするなよ!そう言い残して僕は部屋から出ていった。
お付き合い有難うございます。