大家 さん。
客人用の折り畳みテーブルを出すと座布団を二枚用意する。
間をおかずに冷蔵庫から麦茶をグラスに注いでシアとシルヴィアの前に置くと最後に自分の目の前にグラスを置いて腰を降ろした。
「分かるように説明して欲しいのだが?」
何故客人でも無い彼女達にお茶まで提供しなくちゃいけないのか理解し難い。
しかし人間何事も最初が肝心!会話と挨拶で心証は変化するからな。
少しは話せば理解出来ると信じての行動で美人姉妹(?)と繋ぎが欲しかった訳じゃ無いんだからね!
「詳しくと言われましても、本当にご存知無いのですか?」
ご存知も何も知ってて当然みたいな空気は何?
「TVで報道してる、どこぞのお姫様じゃあるまいし…」
ズズ…口を湿らす。
「多分それ私達ですね♪」
メイドは胸前で掌を合わせるようにポンと叩いた。
「あはは冗談はともかく♪」
「冗談では御座いませんよ♪」
「嘘をついて何の得があるのよ!少しはシア達を信じなさいよ!」
テーブルを叩いて立ち上がる。シア。
「じゃあ何でこんな狭い部屋に?」
「狭いのは想定外でしたが、ホームステイ先としては最良でした。」
「ところでホームステイ先はどうやって決めたんだ?」
素朴な疑問だ。姫様ならもっといい場所があろうに…
「厳正なる私特製のくじ引きで決めたんだよ」ふふん♪
「シルヴィアのクジは作成時に誰も触らせて無いから不正はあり得ないぞ。」
「不正はともかく、僕の部屋がクジに入っていたのかって疑問なんですが?」
「それは、シア様の婿候補の一人として選ばれたからですのでご安心下さい。」
「ホームステイの話が雪だるま式にでかくなって対処出来なくなってるよ!」
「今のは、シルヴィアが悪い。」
「申し訳ありません。お嬢様。」
「真、ワタシが肉嫁ではダメか?」
「シア…聞き間違いがあっては駄目だと思うが、今何て言った?」
何か不適切な単語が含まれていた気がする。
「だから、ワタシは真の肉嫁に成りに来た…日本語のアクセント変か?」
小首をかしげる姿が愛らしさが倍増していた。
「アクセントにおかしな場所は無かったが、『肉嫁』の意味は知っているのか?」
「え?ファミリーは肉親つて言うだろう?」
「まぁだいたいそうだな。正確には家族なんだがね。」
「肉親に近い嫁だから『肉嫁』じゃないのか?」
「発音は変じゃ無いから単語の間違いは直したら良いと思うよ。」
「折角日本に居るのだから真…日本語を教えてくれまいか?」
「分かった。僕で良かったら協力するよ。」
まぁ日本に居る間はおかしな単語を修正するだけだし…
「感謝する。ワタシが間違えた言葉を引用しないように傍で教育してくれまいか?」
「仕方ない。引き受けた以上責任は持つよ。」
「お嬢様。流石ですホームステイ先の主に了承を獲る交渉術。」
シアに拍手を浴びせながら喜ぶメイド。シルヴィアの性格が読めない。
「そう誉めるな♪まさしく『二階からぼた餅』じゃな」あははー
ぼた餅に悪意しか感じられない…
「え?ホームステイってここ?」
「真様、その通りでございます。」
「いやいや!それは大家さんが許さないでしょう。」
それに布団は一組しか無いからな。
「と、住民が言っておりますが大家はどうですか?」
シルヴィアはシアに話しかける。
「ホームステイ先に認可するよ!」
イタズラっぽく笑うと、建物権利書、謄本を取り出して見せてきた。
「土地権利は前オーナーだがそれ以外は私的財産だ。」にへへー♪
『悔しい!悔しい!!だが…それで良い!!!』
「シルヴィアさん変なナレーション付けないで下さい!」
「真様ならきっと喜んで貰えると信じてます♪」