5、気付いてしまった
私とマナの会話は続いた。
マナの方から言い出した
「私もこの前とうとう彼と…。この前東京行って泊まったんだ」
彼女は今、旦那様の転勤で地方都市にいる。
だけど東京に彼氏がいるらしい。
彼女の地元は東京だし、どんな理由をつけてでも帰郷はできる。
旦那を地方において東京に彼氏がいるほうが刺激はあるし楽しいと私も思う。
マナと彼氏の交際期間は私達と同じくらい半年経つか経たないか位みたい。
なんだかんだ言ってみんな影では恋してるのだ。ちょっと可笑しいというよりも嬉しい。
私はマナに返す
「超えてはいけない境か…。良いと思うよ。色々な経験はしてください。
……ただね、楽ではない。綺麗な思い出ばかりではなくて寧ろ汚れるわけですよ。
それと戦わなくちゃいけないの。…でも、まぁ、相手次第だけど」
マナがこう返した
「そうだね。楽しいのは最初だけだって言っていたのが解る気がするわ。単純じゃないよね。気持ち」
以前、私はマナに
「男と女なんて楽しいのは最初だけ あとは相手が変わってもやることは一緒なんだからいかに苦しくない相手を探すのが正解だよー」
なんて話をしたことがある。その時のことを言っているのかと思った。
マナは続けて言った
「なんだかさ、結婚って意外に重たかったよね。簡単には離婚できないようになっている。社会的にも法的にも…。結婚ってすごいシステムだわ。……それに、彼が離婚するほど飛び込める相手かどうかだし。」
私もその気持ちは今年の夏に味わった。
私は旦那と離婚してもいいと思っていた。
私の不貞行為が公の場に現れて、訴訟になる前に先手を打って離婚届も書かせた。
それ位本気だった。
結局、その離婚届はまだ私の手元にある。
もし、今の旦那と離婚したとしても、その後すぐに彼と再婚ということはないなとも実はその時思った。彼との生活に安心感は見いだせていない
そんな思いを今年の夏に経験した。
マナはその時の私と同じ気持ちなのだろうか。
40を前にすると恋をするのも必死だ。昔はもっと簡単に恋を楽しめた。
今度は私からマナにメッセージを送る
「彼、家が嫌で飛び出した人だけど、結局奥様と離婚できないし、…それはそれでいいとも思うのよ。多分まだ家族に未練があるなって思う。本当に居たい場所は私じゃない。自分の家族の元なんだって、そんな気がした。」
マナが早々にメッセージを返してきた
「それに男の人って面倒なことには行動、なかなか移さないよね」
私はこう返す
「多分、私も彼もただ寂しいだけだったのね。寂しさから逃れたいのよ。私はね、前に進みたかった。でも彼はそうじゃなかったみたい。」
マナはこう言った
「私たちが旦那に不満ありつつ結局思い切りがつかないのも
彼らが家庭から逃げつつも結婚を継続しようとしているのも
同じようなことなのかな」
「そうなのかもしれない。
お互いに都合よく不満を解消したいだけなのよ」
「実は男のほうが冷静なんだよね」
マナがそう返したメッセージに私は激しく否定した
「違う!……ずるいだけ。残念だけどそう思う」
それが実は私の彼に対する本心だと気付いてしまった。




