第2話
少し長いかもしれません。
普段とあまり変わらない、とある日の夜。
通常通りに家に帰り、通常通りに夕飯を食べ、通常通りに自室にこもり、通常通りにベッドに倒れこむ。
ベッドにダイブは俺の標語だ。
あの「ボフッ」という音がなんともたまらない。
一日の疲れを吸い取ってくれそうだ。
なんていう悠長なことを考えていたら、なんだか眠くなってきた。
全く、布団の魔力は凄い。尊敬する。いろんな意味で。
ということでその日、俺は寝ることにした。
その睡眠中に、俺はとある夢を見た。
夢の中で、目覚めた俺はとある個室にいた。
辺りを見回すが、特におかしなところは無い。何もすることがない俺は、その個室で一人仰向けになる。……まあ目覚めた時点ですでに仰向けだったけど。
すると某アイドルが、俺の顔を覗いてきた。
「?!///////」
勢いよく顔を上げた俺は、そのアイドルとあの………ぶつかって………………ね…………。ちょっとね、事故チュー……?みたいなね、してしまったわけです。
なんで敬語かって?
そりゃ、あの……ねえ。恥ずかしかったからとしか言えないな、ウン。
まあというわけで!そんなこんなで俺と某アイドルが密室で2人きりという、あり得ない事態が生じた。
夢にしちゃあ幸せすぎるわけだ、うん。
別に俺は、アイドル大好き人間ではない。正直、どっちかっていうと興味は無い。あんまり。
でもやっぱ……さ……………?ねえ。めちゃくちゃ可愛い子と密室って……………。やばいじゃないか。
これで無表情でいられる奴には、俺はスライディング土下座をして弟子入りを求む。
……………ところで、この小説の矛先が見えないのは俺だけだろうか。ちょっと心配になってきたぞ。
「翳さん………!/////」
まあいいか!こんなに幸せな時間を過ごせるわけだ!しかも今下の名前で呼んでくれたよね!!まあ夢の中だけれども!!!
「なっ……なん…ですか……………?/////」
俺が赤面しながら、彼女の方を振り向くと。
「私と一緒に冥土に行きませんか……?////」
「あれれ~?さっきまでの美少女はどこかな~?まさかこの人じゃないよね~?アイドルはこんなこと言わないもんね~?アイドルは夢と希望を与えてくれる人だから、こんなことを言うはずないもの。照れながらこんなこと言わないもの。きっと今のは聞き違い。」
落ち着け。落ち着くんだ俺。
アイドルと密室でとか色々考えすぎたんだ。だから幻聴が聞こえたんだ。少しは落ち着こう。これは夢だ。夢だから。夢だからな、これは。
よし。
「翳さん!!//////」
「はい!////」
「ぜひ私と、冥土喫茶に逝ってください!///」
「め………メイド喫茶?!いいよ!全然いいよ!!こんな俺でいいんんですか?!////」
「翳さんとがいいんです!!///」
「よろこんで!!/////」
よし!やっぱりさっきのは幻聴だったんだ!“メイド”と“行く”の漢字がちょっと違う気もしたけどやったぞ!俺は!無事にアイドルとお出かけの約束ができた!!
「じゃあ私に着いてきて下さい!場所知ってるんで!私一回、冥土喫茶の“ブラッドコーヒー”飲んでみたかったんですよ~。」
「ああ、ブラックコーヒー?」
「え?あ、違います。ブラッドコーヒーです。」
「ごめん。やっばり用事思い出した。」
俺が彼女の誘いを断ると、彼女は言った。
「一緒に、逝ってくれるんじゃなかったんですか………?」
コノ人危険ダ。
ブラックコーヒーは知ってるけども、ブラッドコーヒーなんて聞いたことないもの。漢字にするときっと“血珈琲”だもの。
「逝って……くれナインデスカ………………?」
そう言いながら立ち上がる彼女の白い足が、みるみると毛で覆われた。だんだんと毛むくじゃらの怪物へと変貌するアイドルを目撃してしまった。
背筋に悪寒が走った。
2012/12/12
見やすくなるよう改稿しました。