第7話
一気に闇が晴れた。
さっきまで前方3m程しか見ることができなかったのが嘘のようだ。
「あっかる…………さすが提灯お化けだな。」
ケケケなんていう笑い方が少し愛らしい。
「視界は広がった。さ、行くわよ。早くしないと夜が明けちゃう。」
「そうだな。」
俺たちはまた走り始めた。
さっきとは違う、明るい道を。
「はぁ……はぁ………かげ………る…………………!待って!」
「ん?」
声に気付いて振り向くと、そこには肩を上下させているアリアがいた。
「もう、ダメかも…………………」
「ー…………。」
俺はアリアに近寄ると、しっかりとアリアの片手を握った。
「疲れたんならおぶってやるよ。」
「!?なっ………何を言う!そ、そんなの別にッ………………。」
「何勘違いしてんだよ。俺は、封印役のお前に倒れてもらいたくないだけ。」
バチンッ
アリアにビンタされた。
「そんなことだろうとは思ってたわよ!!」
「ハイハイ……。」
ぶたれた頬をさする。絶対赤くなっているなぁと思った。
「じゃあ引き続き探すわよ!もう時間はそう無いんだから!」
「そうだな。」
「………………………。」
アリアの顔が、蒼白になった。
「……?どうしたよ?」
「………………聞こえない?」
「え?」
「何か………脅すような言葉……………………ねっとりと、まとわりつくような言葉ー…………………………。」
アリアにそう言われた俺は、耳をすました。
言われてみれば、確かに聞こえる。
本当に耳をすまさないと聞こえないような、でも微かに聞こえはする“声”。
「サア、逝クガヨイ。」
そんな声が聞こえた。
気が立ちすぎたせいで聞こえた、ただの気のせいかもしれない。
でもそんなことを考えるよりも先に、その声のする方へと身体が動いていた。
「翳?!」
アリアが呼んでいる。
でもそれに返事をする余裕は、俺には無かった。
甲冑を身にまとった怪物(恐らくメアーだろう)が、少年に大剣を振るうところを見た時。
俺の中の《ケモノ》が、疼いたのが分かった。