第5話
城の中は少し薄暗くて、少し怖かった。
でも、一人じゃない。
隣にアリアがいる。
こいつは、今まで一人で退治してきたんだ。それに比べたらこんなの、どうってことない。
「かげる。」
「ん?」
アリアが声をかけてきた。
「武器、必要だったら自分で呼び寄せることができるから。」
「え?ま……マジか。」
アリアが頷く。
「使いたい武器を想像して強く願えば、多分出てくる。前、キルがそう言ってたわ。」
「じ……じゃあ、今出してもいいかな。」
「ええ。いつ敵が現れるかわからないしね。」
「了解。」
俺は武器を想像する。
銃、剣、斧、弓………。
色々浮かんだが、やっぱり俺にはこれが性に合っている。
「それ、剣か?」
「ああ。ホントに出てくるんだな。」
俺が手にしているのは日本刀。
模擬刀は持ったことがあるが、本物は初めて持った。結構重いんだな…。
俺はその剣を鞘ごと腰にさした。
「あれ?アリアは武器とか出さねえのか?」
「前までは出してたけど、今は違う。
………………守ってくれるんでしょ?」
「あ、そういうこと…………。」
このお嬢さん、どうやら戦闘は俺に任せる気らしい。
俺、「メアー退治」ド素人なんだけどなー…………。
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城の探索も、結構奥まで来た。
でも、怪物(これからはメアーと呼ぼう)は一向に現れる気配が無い。
城のタイルが、俺たちの足音を響かせるだけだ。
「本当にいるのか?メアー。」
「いる。絶対、いる。」
その時。
「うわああああああ!!」
叫び声が城内に響き渡った。
「かげる!!」
「おう!」
叫び声は俺たちの前方で聞こえた。
俺は前方へと、全速力で走った。
「はぁ…はぁ……はぁ………。」
まだ先は見えない。
さすがに息が切れたが、そんなことは関係ない。今の俺の使命は、メアーを倒すことだ。
「何やってんのよ!行くわよ!」
後から追ってきたアリアも、少し息が上がっている。
「ああ。言われなくてもな。」
俺はアリアの手を強引に引っぱって走った。
「ちょっ…!かげる?!」
「後からのろのろ来られても、迷惑なんだよ!」
「なっ?!うっさいわよ!足が遅くて悪かったわね!」
「はいはい!」
城の薄暗さは相変わらず。
まだ先は見えない。
まだ、メアーは見つからない。