第3話
「…………て…」
ん……………。
「き……………て………」
ん~………………。
「……て…………………よ……………………」
なんだよ、もう朝かよ……。
母さん今日は日曜だぜ?
バチンッ。
「おおーっとビンタ炸裂!朝っぱらからこれは痛いぞ!!」
アリアのビンタが、俺の頬をじんじんと痛ませる。まあ別に日曜の朝でもなんでもないからどーでもいいんだが。
「黙れカス。」
「え?」
「え?」
ちょ………待て。
今まで英語しかしゃべれなかったアリアが、日本語話してるぞ。
なんでだ?やっぱりこれも、夢の中だからとかそういうのか?
どうやらその理由はアリアにもわからないらしく、アリアの顔が珍しく驚いた表情をしている。
「なぁ。これも夢が関係してんのかな。」
「そんなの、私に聞かれても知らないわよっ!!」
お。初めて日本語で会話成立。
「でも、そう考えた方が理に適ってるだろ。」
「そっ……そうだけど……………。」
俺が答えを出したことを、なんか認めたくないらしい。俺はどんだけ馬鹿にされていたんだ。
………そういや初めて会った時も日本語で「おとなしく氏になさい!」とか言ってたか。アレも夢の中だったな。これも今回の事も、きっと夢が関係してる。俺の推測としては、
《夢の中では言語が日本語になる》
だと思う。そう考えた方が妥当だろう。
……なんて事をアリアに言うと、もう金輪際口を利いてくれなさそうなので、あえて言わないでおく。
「でもそれならそれで、都合がいいわ。メアー退治もスムーズにできそう。」
「え?何?〈メアー〉?」
「ええ。例の怪物のことよ。単に私がそう呼んでるだけだけどね。」
「ふうん。」
「さあ、探すわよ、メアーを!」
そう言ってアリアが指差した方には森らしきものがあった。
「……え?アレ?何?怖がってるの?やぁねぇ、最近の若者は。」
「別に怖がってないけど……。てかどこの奥様だソレ。」
「うわー無いわー。
年上にタメ&ツッコミとかマジ無いわー。
うーわー怖いわー。」
言語が通じるって怖いですね。
え?何故かって?
だってそりゃあ、相手の本性がわかってしまうからに決まってるだろう。
その一番の例がアリアだ。
「まあとりあえず着いてくるんだな、若者よ。
…………あ、間違えた。ニートか。」
「誰がニートだ。俺はちゃんと通学してっぞ。」
「まあどーでもいいわ。
今から怖がるんじゃないぞ?どうしてもって言うんなら、カリスマメアーハンターであるこの私の後ろにしがみついてもいいけどな。」
「足震えながら言ってる人に言われたかねーよ。」
なんて会話をしていると。
ズドォォォォォォン
遠くの、森の向こう側の方で、そんな音が聞こえた。