第6話
「笠井……龍之介………?」
「せや。」
カチッと、ライターの火をつける乾いた音が部屋にこだまする。
「笠井は研究員の中では一番できる奴やった。頼まれた事は漏れなく全てこなす、エリート中のエリートや。博士もその腕を買っていた。せやなぁ………笠井は俺が博士の研究チームに入る前からおったわ。そして、俺の一番のライバルやった。」
室内の空気が妙な重圧感を起こす。
「でも笠井は、昔最愛の妹を亡くしてる。これは笠井本人から聞いた事や。でもその亡くした原因が、どうやら博士との実験らしい。
まあ詳しくは知らんが…。」
「そう……なんですか……………。」
「だから俺は、その時の因縁もあって、笠井がやったんやないかと睨んでる。アイツの頭脳なら充分可能な範囲や。
………それに、アリアが襲われた日の前日から笠井のやつは行方不明やからな。遠隔操作かなんかやる為に、姿眩ましたんやろ、きっと。」
「……………。」
俺はその時、部活のことを思い出していた。
「宮本さんー……………。」
「ん?」
「宮本さんは、ライバルがいなくなって悲しいですか。」
つい、そんな質問をしていた。
帰ってくる答えが、少し怖かった。
「そんなん、当たり前やろ。」
でも、宮本さんは即答だった。
「今まで一緒にやってきて、共に戦ってきたライバルがいなくなって、しかも罪を犯してもうたなんて、悲しむに決まっとるやろ。まだ決着もついてへんのに。」
「決着………ねぇー……………。」
決着なんて、つける気もつくことも無かった。俺は。
でもアイツは本気だった。
俺はそれを、裏切っちまったんだ。こんな才能のせいで。
元気か、市野ー……。