第5話
会話文が多い為、少々読みにくくなっていますm(_ _)m
そして昔話はアリアsideから始まります。
私は目覚めた。外は朝だった。
今日見た夢は、本当に、怖かった。
学校の図書室を歩いていたら、いきなり本が襲ってきた。いくら逃げても、本は追いかけてくる。ついに捕まった私は、腕や足を本たちに噛まれた。本には牙があって、私の手足はみるみると紅く染まっていった。
足も腕も、動かない。どうやらその牙には毒があったらしく、視界までぼやけてきた。
怖かった。それが、とても怖かった。
でもそんな時、突然痛みが消えた。私の手足の赤色も、まるで嘘のように消えていった。視界もはっきりした。
でもその代償であるかのように、目の前にはうつ伏せになって倒れた両親の姿があった。
そこで目が覚めた。
本当に、正夢になったらどうしようって思った。
でも起きると、目の前には、夢と同じようにうつ伏せで倒れた両親の姿があった。
「嘘でしょ………?」
思わず呟いてしまった。
ベッドから飛び出して、倒れている両親に駆け寄った。
「嘘でしょ?!ねえ、嘘なんでしょ?!また、そうやって私を驚かそうとしてるんでしょ?!」
何度も呼びかけた。でも、返事はない。
両親の肌は、氷のように冷たかった。
また、正夢になってしまった。
その時を境に、私は夢を恨むと共に寝ることが怖くなった。
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「…………これで終わりや。」
宮本さんがふうっと息を吐くと、白い煙がもくもくと部屋を包んだ。その煙草臭が、妙に鼻を突いた。……まったく、目に染みる匂いだ。
「宮本さん。」
「ん?」
「その娘さんが、アリアなんですか?」
「せや。」
「そう……ですかー……………。」
誰にだって、苦い過去があることだろう。でもこれは、あの年で背負う物としては苦すぎると思う。
それを聞いてしまうと、ついつい目がアリアの方へと行ってしまう。
「気になるんか?アリアが。」
「へっ?あ………まあ……………。」
「ちなみに言うとくけど、今言ったことは全部、10年前に起こったことやで。」
「そうですか……………って、え?!」
「本当や。」
「じっ……10年前ってー……!!アリア…さんは、何歳の時にそうなったんですか?!」
「10や。10歳の時。」
「え?!でっ……でも、アリアさんの外見って小4ぐらいじゃないっすか!!」
もしそれが10年前に起こったことなら、アリアさんは今二十歳のはずだ。
「止まってるんや。」
「?」
「アリアの容姿は、あの時夢の中で怪物に襲われてから変わってない。その時から、成長が止まってしまったんや。」
「はっ………?!な……なんでー……?!」
宮本さんはその時、少し苦笑いした。
「アリアは夢ん中で、本の怪物に襲われた。それは、先生……博士が作った薬品のおかげで退治することができた。
でも、夢の中でアリアは既に傷を負っていた。そして毒も回っていた。普通なら即死や。薬品があったから夢の中で助かっただけで、本当やったら死んでる。
そんでそれが正夢ときた。
正夢ならアリアも死んでるはずなのに死んでない。先生と夫人を包んだベールといい、これはどう考えても、アリアがその怪物と融合したとしか思えん。
今は亡き博士の研究資料によれば、《技術が進歩すれば夢の内容を実体化させることも可能》らしい。
俺は、誰かがそれを利用して、夢の中で怪物が実体化するように仕掛けたんやないかと思う。
まあ何が目的かは知らんけどな。」
煙が口から吐き出された。
「これは俺の考えやから、本当なのかはわからん。でも、それがもし本当なら、できるのはこの世界にたった一人しかおらん。」
宮本さんは、目を閉じた。そして何か心に決めたように、ゆっくりと、その目を開いた。
「俺と同じように博士の片腕やった、研究員の笠井 龍之介。そいつしか、できん。」